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トレンドを創る人 Vol.6 ZACC 大野喜郎さんの“人間力”とは #1

今ではすっかり昔語りとなってしまった“カリスマ美容師ブーム”。それは高橋和義さんが率いるヘアサロンZACC(ザック)による1枚の写真が、女性誌の1ページを飾ったことから始まります。以来20余年にわたり、ZACCが今でも青山のトップサロンでいられる背景には、高橋さんの右腕としてサロン&スタッフを支えてきた一人、プロデューサーである大野喜郎(おおの・よしろう)さんの存在がありました。
世代的にはカリスマJr.世代。そして今、美容界で話題のユニット、東京ブレンドのショーの構成も手掛けている大野さん。美容師としても人としても“飾らない”その人柄の原点を探りました。

うまくなるのに、近道なんてない

――大野さんご自身は、どんなアシスタント時代を送ってきたんですか?
「当時は、とくに雑誌とかに出たいと思ってなかったんですよね。ZACCに入ったのもまだ荻窪(おぎくぼ=中央線沿線)にあったときでしたから。できるだけ小さいお店に入りたくて入社しました(笑)アシスタント時代は遅刻もせずに毎日ちゃんと出勤していました。もともと朝型で、早起きは得意でしたから。練習量は普通です。アシスタント時代も遊んでなんかいないですね。チャラい美容師がキライでしたから(笑)

自分自身、頑固な部分がかなりあったと思います。とにかくつくったヘアスタイルを直されるのが嫌でした。もちろん技術のカリキュラムは素直にやっていましたけど、当時は理由も聞かされずに先輩たちにクシャクシャにされる時代で(苦笑)それが心底、嫌だったので、よし、これからは直されない仕事をしようと。先輩たちにペコペコしているだけじゃなくて、最終的にコイツのものは触れない、というくらいにならないとダメだなと。自分の意志は持ちたいとつねに思っていました」

高橋和義さん

朴訥(ぼくとつ)と話す、というのがまさに大野さんのイメージ。この飾らない性格で、多くの美容師たちから“愛される”存在に。彼を慕う後輩美容師は後を絶たない。

見ている人に届く、ヘアスタイルであること

――長年拝見していて、大野さんのつくるスタイルが変わった、という瞬間がありました。
「当時は、自分より上の世代の人たちがつくる、創り込んでないのに自然で肩の力が抜けているヘアスタイルを意識してやっていました。(撮影のヘアづくりを)直接教えてくれる人なんていませんでしたから、もうそこは自分で研究するしかないわけです。

同時に僕が高橋と同じことやってもダメだとも思っていました。当時も今もZACCのヘアづくりのルールみたいなものがあって、例えば愛され要素があるとか、ナマっぽい今どきの質感を表現したり、サロン帰りのみずみずしいスタイルは大切にしたいと。今は愛されというワード自体が古い感じですが、愛されたいという気持ちは時代を経てもどこかにはある。モテたいとかも同じですよね。愛され系も媚びないスタイルも、両方できると強いだろうと思います。

でも、忘れてはならないのは、つくったヘアを誰に届けるかということです。他の美容師にうまいと思わせたくてつくっているんじゃない。一般のお客様にこそ届けたいわけで、それには自分たちが雑誌社から何を求められているのか考えることが大切だと思うんですよね。もらったテーマを自分なりに分析して、ZACCの名前とか関係なく、まず時代に合っていること、さらに誌面になじむヘアスタイルであるためには、まわりを見て、考えてつくることが必要だと思っています」

プロデューサーとして、サポート役に徹する

――ZACCのプロデューサーとは、どんな仕事なんでしょう。
「一言で言うと、高橋に代わって下の世代の技術やヘアスタイル全般を見ることですが、どちらかというと俯瞰でサロン全体を見ているサポート役という部分が大きいです。僕自身はもともと人前で話したりコミュニケーションがうまく取れない性格でしたし、ハデな美容師を目指していたわけではなかったですから。口数が少ない分、髪の毛で表現するしかないわけです。

それまで何となくモヤモヤしていたところで、だんだんとヘアスタイルで認められてきて、職人的な視点でなら自分も何かサロンのためにできることがあるだろうと思っていました。うまくならないと悩んでいる子や、つくることに興味がない後輩に気づかせてあげたい。自分の仕事に対しての責任が明確になった分、プロデューサーになってからのほうが、後輩たちに自発的に自信を持って伝えられることが多くなったと感じていますね。

僕自身、もともとチャライのが嫌いで(笑)見た目もまったく美容師らしくないと自覚しているんですが、後輩のお客様で若い子とかに“あのおじさん誰ですか?” と言われているのが聞こえてきて、よしよし、それでいいと(笑)そんな立ち位置がちょうどいいんです」

高橋和義さん

美容師と料理人は似ている、と大野さん。レシピ通りにいかないのが、ヘアスタイルづくりの難しいところで、お客様に認められる味を出すのには、日々の研究と積み重ねしかないと語る。

取材・文/山岸敦子
撮影/石田健一

Salon DATA

店内

ZACC(ザック)

日本を代表するトップサロン。代表の高橋和義さんを筆頭に、総勢80余名のスタッフで青山の一等地、AOビルに集約。
大野喜郎さんは、プロデューサーとしてサロンのヘアスタイルづくりを担い、後進の道筋を照らしている。東京ブレンドのメンバーサロンとしての活動にも注目が集まる。
http://www.zacc.co.jp

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