代官山のヘアサロン「Pearl」・CHIEさん “ママ美容師”奮闘記 #1

代官山駅から3分程度の閑静な場所にある「Pearl」。渋谷や恵比寿に近い場所ですが都会の喧騒はなく、瀟洒な建物と緑が溢れる、ゆったりとした時間が流れるエリアです。
「Pearl」は、小松利幸氏率いる「anti」で長年活躍したMATSUさんとCHIEさんがふたりで経営するサロン。そしてMATSUさんとCHIEさんはご夫婦という間柄。実はオープン早々、ご夫婦ならではの大きな壁が立ちはだかることに……。

承知の通り、美容業界は同業者と結婚する人が多い職業です。そこで、公私ともにパートナーであるということはどんなことなのか、また上手な距離感の作り方など、夫婦運営のコツをCHIEさんにお伺いします。

出店してわずか3か月後に妊娠が発覚…

――オープンはいつですか?
「2014年の6月です。新卒でantiに入社し、尊敬する小松利幸氏の下で美容のイロハを教えていただきました。主人とはこちらのサロンで出会い、結婚。その後、独立する運びとなりまして」

――では、お二人でスタートしたということですね?
「はい。すでにMATSUも私もスタイリストとして数年経っていましたから、先ずはふたりの売り上げで運営する予定でいました。オープン当初はアシスタントをふたり採用し、4名でスタートしたわけです」

――最初は大変でしたか?
「大変でした(笑)。実は私、オープンからわずか3カ月で妊娠していることが判明して… とても喜ばしいことですが、いろいろ計画を立ててサロンを始めたわけで、この先、妊娠、出産で休まないといけないかも… なんて考えるとドキドキしてしまって(笑)。年齢も38歳で高齢でしたし、“お客様にはなんて伝えよう…”なんて考えると不安でたまらなかったですね」

――働く女性特有の壁ですね。
「そうですね。私は美容師という仕事が大好きで、お客さまのヘアスタイルのパートナーとして、それぞれの方と長く寄り添いたいと思うタイプ。お客様にとって融通が利く存在でいたいのに、ママになると時間に束縛されてしまいます。それを嫌うお客様も当然いると思うんですね。だから、私生活だけみれば子供を宿ったことは本当にうれしいことだけれど、仕事面では不自由も出てしまうことが不安でしたね」

――ご主人の反応は?
「妊娠はもちろん喜んでくれました。でも、二人の売り上げを考えて家賃や人件費を算出したわけですから、最初は焦ったかもしれませんね。ある時期、げっそりしていましたから(笑) でも、彼はドンと構えられる人。“やるしかない”って気持ちに切り替えてがむしゃらに働いてくれました」

――CHIEさんはいつから産休に入られましたか?
「臨月まで働きました。そして、お客様にはできるだけ早く復帰したいと思っていることを告げました。引き継ぎはMATSUがする他ないので、すべて託しまして…」

実はCHIEさん、anti時代からトップクラスの売り上げを誇る美容師で、芸能人など多くの有名人も担当される方。ご主人は相当なプレッシャーがあっても不思議ではありません。

「主人は私が妊娠してから産休に入るまでの間をとても大事にしていました。私とMATSUではお客様のタイプも違います。そのため、私のお客さまの施術を、注意深く研究していましたよ。頼りになります」

アシスタント時代からantiで共に過ごしてきたからこそ、代理の担当でもお客様が不安にならずに済んだのかもしれません。夫婦として、同志として、上手に乗り越えた印象が伺えます。

レッスン写真
スタッフのレッスンはご主人MATSUさんとCHIEさんで。4人のアシスタントに熱心に指導します。

復帰後はシッターさんもサロンに出勤

出産し、復帰したのは2015年の11月。認可保育園の入学までの間、CHIEさんはベビーシッターを確保する選択しました。

「1月から3月末まで、シッターさんを確保しなければなりません。何人か面接して、
長く付き合える人を探すようにしました。日によって保育者がコロコロ変わるのは赤ちゃんにとっても良くないと思ったものですから。あと、病気でも看てくれることも条件のひとつにしました。予約商売ですから、病気の度に毎回休むわけにはいきません。
このふたつをクリアし、かつ、相性の良い方を探すのは結構大変でしたが、いい方との巡り合わせがあり安心して仕事を続けられました」

――シッターさんは自宅に来て下さったのですか?
「いいえ。サロンの2階です。子連れのお客様や個室を希望される方が使用できる個室を備えていましたから、保育園に入園するまではここを保育場として使用しました。ベビーマットを敷き、ミルク用の水やおもちゃなどを用意して保育できる環境を整え… という感じです」

――それはとてもよかったですね。でも、毎日シッターさんにお願いしていたら、相当な金額になりませんか?
「はい。毎月20万以上です。もう、本当にお金がかかりますよね(笑)。でも、この時期はこれで頑張る他ないですし、4月に保育園に入園するために科店こと加点することが必要ですよね。私の場合は4月から認可保育園に入ることができたので良かったのですが、そうでない場合、働くママはお給料が全て保育料金になってしまうこともあります。これは精神的にも経済的にも相当な負担なのではないでしょうか」

出産後は涙が止まらず、不安定になったことも

CHIEさんのお子さんは男児。俗に男の赤ちゃんのほうが身体は弱いと言われますが、CHIEさんもまた、頻繁に感染症や病気に悩まされたそうです。

「実は息子が2か月のとき、尿路感染症になってしまいまして。このときは1週間入院をしました。退院して数週間でまた、再入院。きっとこの子は身体が弱い子なんだろうなぁ… なんて落ち込んでしまって。でも、仕事も復帰しないといけない。いろいろ考えて不安が襲い、訳もわからず涙が溢れる日もありました。主人に当たることもしばしば。でも、彼は心がとても広い人。私がいろいろ吐き出しても、どんと受け止めてくれるんですね。復帰してからも、1週間続けて仕事ができればラッキーという感じで。ほとんど毎週、小児科に行っていましたから。初めての子育てとサロン運営で、今思えば相当張りつめていたのかもしれませんね」

CHIEさん
お休みの日は必ず小児科通い。「子供も休みの日に限って体調が悪くなるというルーーティーンができあがっている気がします。不思議ですよね」とCHIEさん。

現在、お子さんは2歳。「まだまだアクシデント続きです」とCHIEさんは言いますが大きな山をひとつ乗り越えた印象があります。それも、御主人の支えがあってこそ。2回目のインタビューでも、夫婦で行うサロン経営と子育てについて、さらにお話しを伺います。

取材・文/小澤佐知子
撮影/田中大三

Salon data

店内
店内

Pearl(パール)

パールの輝きがどんなときも心地よいように、1粒のパールが普通の時を特別なものへと変化させるように…。そんな思いを込めたヘアサロン。
大人の中に残る“その人らしい可愛らしさ”を引き出すテクニックに優れ、特にパーマに定評がある。また、ウエディングのヘアメイクや当日までのヘアケアも含めた、結婚式トータルビューティプロデュースも手掛ける。
www.pearl-salon.com

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