トレンドを創る人Final カメラマン・永谷知也さんが見つめる“美容の未来” #2
2017年6月からリポートしてきた『トレンドを創る人』もいよいよファイナル。ラストランナーとして、フォトグラファーの永谷知也さんをインタビューしました。
『TOKYO BLEND』(東京ブレンド)の発起人の一人で、長年にわたり、ありとあらゆる雑誌で美容師と一緒にヘアスタイル撮影をしてきた永谷さん。ファインダーの内と外から美容界と美容師を見つめてきたその想いとは? ファイナルにふさわしい、アツイ言葉の数々をお届けします。
時代が大きく変わるとき、何ができるか?
――『東京ブレンド』を立ち上げるきっかけは何だったんですか?
「(U-REALMの)高木裕介さんと、あれだけ盛り上がったカリスマ美容師ブーム以降、美容業界に元気がないよね、と話していたんです。ちょうど10年くらい前、いわゆるカリスマたちがヘアページから退いていった時期で、もちろん2番手3番手はいるけど、そこまで強烈なインパクトは出せない。
ヘアカタ誌が徐々に売れなくなって、ヘアスタイルを探すのもネット検索が主流になり、各サロンもホームページ制作に力を入れていた時期でした。ヘアカタの撮影が減るということは、それだけ若い子にチャンスがなくなってきたということで、
その結果、若い子たちが髪を巻けない? レイヤーカットができない? という現象が起きてきたんです。つくるのはどちらかというと青文字系の媚びないテイストで、ワンレンパッツン、切りっぱなしという、よく言えばシンプルだけど、何のひねりもないスタイルが横行し出しました。
それまでのヘアカタがファッションに寄り過ぎていたため、全体の雰囲気だけになってしまって、どんなデザインのヘアか、伝わりにくくなっていたんだと思います。そのうちSNS時代へと突入して、美容師さんが写真を撮って上げるという流れに変わっていきました」
第一線のプロによる、プロのための講習会
「何かしなければと、高木さんと週に何回も会って、カットやスタイリングをもう一度基本から教える講習を月1回でもいいからやりたいよね、と話していました。さらにはイベントをして、それによって美容業界全体が盛り上がったら楽しいよねと。まさに今の『東京ブレンド』の礎(いしずえ)みたいなことを考えついたんです。
僕はカメラマンですが、カットやカラーの仕上がりを撮ることで見えてくるカタチや色というものを知っています。(カラー剤の)広告も撮っていた経験から、どうしたら写真によりきれいに色が出せるか、美容師さんに教えることができると気がついたんです。
仲間が必要だと3人目のメンバーからは全員、一気に僕が選びました。まずスタイルづくりが上手で、もちろんカットも人よりうまくて、 誰が見ても可愛いと思えるリアルトレンドが発信できる美容師。
モードに寄るのではなくて、一般の人が見て可愛いと思えて、一歩先の何かを見せられるような集客を意識したスタイル。業界ウケよりは一般ウケ、クリエイティブじゃなくて、サロンスタイル。『東京ブレンド』のコンセプトが石を積み上げるようにできてきた瞬間でした」
若いクリエイターの未来のために
――『東京ブレンド』の講習では、撮影セミナーが人気ですよね。
「ヘアが可愛いと写真も可愛くなる。でも可愛く撮るためには髪がきちんと切られていて、的確に巻けていないとこうはならないんだよ、という気づきを与えられるいい機会だと思って活動をしています。
SNS時代は目まぐるしく世の中が回っているので、作品も自分たちで撮ってアップし続けないと追いつかない。当然、うまい下手が浮き彫りになるけれど、雰囲気でヘアをつくってたとえ写真がうまく見えても実際に切れないんじゃまったく意味がないわけです。
そのために僕らがやっている撮影講習会があるわけで、自分が憧れる美容師のセミナーに行く価値は絶対あると思いますよね。でも、ただ見ているだけではダメで、トップクラスの美容師たちがどうやってやるのか、そこをつかまないと、やみくもに練習してもSNSに何十回載せてもダメだと思います。
フォロワー数が多いからとそこで満足するのではなくて、もっとたくさんのいいね! を得るためにヘアづくりを研究して、自分のモチベーションアップにこそSNSを使えばいいわけです。アップされたヘアスタイルが可愛ければ、僕たちの目にも留まるだろうし、万一それが有名なヘアカタにピックされれば、チャンスがめぐって来るかもしれない。
きっかけがなければ、人ってなかなか変われないものですよね。だからこそ『東京ブレンド』が少しでも、そのきっかけになれればいいなと思っています」
取材・文/山岸敦子
撮影/永谷知也(作品画像提供)
Personal Data
永谷知也(ながたに・ともや)
日本の雑誌・広告界で長年にわたり、数多くのフォトグラファーを輩出してきたwill creativeに所属。15年にわたって主にファッション誌のビューティ特集に携わり、2012年には美容師とともに『TOKYO BREND』を立ち上げるほど、美容師と身近なカメラマンの筆頭に。
SNSも評判で、インスタグラムのフォロワー数は、1万6000人を超える。(※取材当時)
https://www.instagram.com/t.nagatani/
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