「私、巻き髪作ります」の意味 注目のアーティストotope・浦さやかさん #1
個性がさく裂する独創的なデザインを発信し、美容界では唯一無二の存在である浦さやかさん。10年間「FLOWERS」(フラワーズ)のスタイリストとして活躍し、2015年に別ブランド「otope」(オトぺ)の代表に就任しました。FLOWERS時代からキャラが際立つ彼女でしたが、otopeオープン後は“浦ワールド”全開で自分らしさを楽しんでいるように見える浦さん。彼女が考える様々なコトについて、2回に渡りお伺いします。
赤文字雑誌だってやっていました
浦さやかさんと筆者が出会ったのは12年前。当時はFLOWERSのオーナーの一番弟子のような印象で、しかもボケ担当というイメージ。いい意味でみんなからつっこまれる、愛されキャラでした。
見た目も現在同様、個性的。ユニセックスな雰囲気で髪の色がいつだって“黒ではない”人。
ヒョロッと歩く姿はやや頼りなく“この子、大丈夫かな”とつい気にかけちゃう、可愛い子犬みたいな存在に見えていました。
「社長は今でも怖いですよ(笑)。おいっ!って呼ばれるだけでひるんで頭を抑えちゃう(笑) 別に怒られるわけじゃないんですけどね」
現在もそう話す浦さんですが、昔から他のサロンでは存在しない独特な個性が際立っていて“当たれば大物”って感じの不思議なオーラを纏っていたのも事実。
そして数年後には、美容界において替えのきかない存在に成長していきました。
浦さんは全国で行われるヘアショーでも、人の視線と心をギュギュッと掴む強さがあります。ショー、セミナー、コンテストの審査員など、サロンワークを超えて様々なイベントで引っ張りだこの彼女は、間違いなく時代に求められる美容師と言えるでしょう。
――私の中で浦さんと言えば「カラフルなカラー」「2ブロック」「短いバング」というイメージです。
「大好きですね。お客様からのオーダーも多いです。でも、こう見えて普通のOLのお客様も来店されますよ。特にFLOWERS時代は、個性的なお客様だけでなく巻き髪も作っていましたから。私、コンサバっぽいものも全然嫌いじゃないです。今でも楽しんで作らせていただいています!」
――幅広いんですね。
「FLOWERSのオープニングメンバーですから、当時はサロンに撮影依頼なんかほとんどなくて。だから、フツ―の服を着て、髪も過激じゃない状態にしてから出版社へ売り込みに行ったことだってあります。RayやViViの撮影なんかも長く担当させていただきましたし」
巻き髪撮影があったから今の自分がある
ViViなど、俗に言う赤文字雑誌の撮影もバンバンこなしていたという浦さん。その作品を見た読者がドッと押し寄せ、結果、巻き髪もしっかりこなす美容師に成長する。
「いただいたお仕事を丁寧に行う。自分の得意じゃないものだって同じです。しかも、巻き髪などコンサバティブなヘアの撮影は、基本の部分ですから。あの頃、編集さんやお客様に鍛えていただいたこと、本当に感謝しています。あの時代があったから、今の自分があるんです」
――自分にはチャンスの場がない、なんて悩んでいる人にアドバイスはありますか?
「うーん。自分たちも最初は無かったですよ。でも、そのことを逆手にとればいいだけかなぁって。待っているのではなく、私は営業に行くことでチャンスをひとつずつ掴んでいった。そうゆう経験って、今思えばものすごく大事ですね」
仲間のことが好きだから会社を辞めずに新サロンをオープン
最近は企業内独立の形を選択する美容師も増えています。浦さんもFLOWERSを離れることなく、新ブランドを立ち上げました。
「そもそも独立とか考えていませんでしたね。ただ、1店舗を経てから10年FLOWERSでやってみて、より、自分の個性を掘り下げたサロンをやってみたい気持ちになりました。もちろん、FLOWERSでも個性は発揮できていたのですが、根がマニアックですから、もっと自分色を出して、どこまでやれるか挑戦したかったというのはありますね」
――FLOWERSの近くに出店したんですね。
「はい。今でもFLOWERSのディレクターを兼任していますから、ときどき出向くんです。以前ほどオーナーにべったりではないけれど。
本来、私は経営でなくデザインを作るプレーヤーでいたい方。それに私、スタッフのこと好きですから。
でも、この2年で分かったことはサロン運営って大変なんだってこと。いろいろ悩んで学んだこともたくさんあります。だから、オーナーって凄いなって(笑)。もうお父さんみたいな存在。頑固おやじって感じですけど(笑)」
全ての事柄には陰と陽、裏と表があるように、あるひとつの物事をどの角度で捉えるかによって解釈は全く変わってしまう。浦さんは間違いなく素直にものを捉えてチャンスに変えられる人。どんな状況でも、そこから確実に「美容力」「人間力」をつけていくパワーが、今の彼女を形成したのかもしれません。
次回は、“浦さんが描く、オリジナリティ溢れるデザインの源”についてお伺いします。
取材・文/小澤佐知子
撮影/田中大三
Salon Data
otope(オトぺ)
2015年「FLOWERS」の別ブランドとして誕生。
表参道にあるアパートの一室で、個性溢れるスタイルを提案。キャンディみたいなヘアカラー、キュートなショートバングなど漫画やイラストの世界を具現化したようなデザインが手に入ると話題ですが、巻き髪などOL系デザインもしっかりこなせる、幅の広さが魅力です。スタッフのファッションも個性的で、訪れる度に新しい刺激がもらえそうなヘアサロンです。
www.flowers-617.com
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