可能性を広げるヘアカラー あの“西海塾”の、CALON・西海洋史さん #2

銀座のヘアサロン「CALON」(カロン)代表の西海洋史さん。“西海塾”とも呼ばれるセミナー講習会では、そのワザを学ぼうと多くの美容師が参加希望のため、サロンの定休日には全国を駆け巡る日々だとか。第二回目のインタビューでは、西海流・ヘアカラーリングの奥義についてお伺いします。
「CALON」では白髪染めは扱わず、どんな世代の方にもファッションカラーでお好みの髪色を作るといいます。銀座という場所柄、落ち着いた上品なマダムも多く通うサロンですが、その方たちも西海さんのカラーリングに魅了され、決まってヘアカラーをリクエストされるそう。なぜ彼のカラーリングが愛されるのか、その神髄とは?

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濁り色で白髪を染めても年齢以上に老けてしまう

――白髪染めは、繰り返すとダメージが気になるという方がほとんどですね。でも、白髪も放置できない。このもどかしい気持ち、どうにかならないかなと思います。
「ご存じの通り白髪染めはアルカリカラーですから、繰り返すとダメージが目立つのは当然です。手触りが悪くなって、ご自身ではどうすればいいのか分からずに来店される新規の方、多くいらっしゃいますね」

――CALONでは白髪染めを取り扱っていませんよね。
「はい。きれいになりたくて白髪を染めるのに、白髪染めによってダメージを加速させてしまう。それは女性の意に反することですから。だから、僕はアミノ酸配合のカラー剤を使用したり、カラーの際に発生する活性酸素を除去するために水素ヘアトリートメントや炭酸泉なども平行して使用しています」

――年齢を重ねた女性ほど、この手法は喜ばれますね。
「はい。しかも白髪染めは色が濁るし、カラーバリエーションもほとんどありません。なんとなく“白髪染め=黒”というイメージですよね。そもそも白髪染めとは、誰が塗ってもきれいに染まるようにできています。黒の染料の割合が多い。真っ黒だから、それを目立たせないためにアルカリに傾けているわけです。ダメージが出て当然ですね。また、濁った発色は女性を必要以上に老けて見せます。だからこそ、ファッションカラーで白髪を染めるテクニックが求められているのです。このテクニックを修得できれば、大人の女性だってツヤ感のある髪色を楽しめます。
例えば、30歳ぐらいまでは白髪がほとんどないので好きな髪色が楽しめましたよね。そのときの髪に戻るイメージを持たれるといよいかと思います」

店長の菊池さん
店長の菊池さん。30代の彼女のヘアカラーはいつお会いしても透明感があって輝いている印象。髪色やヘアケアにこだわると、ファッションやメイクの幅が広がることを実証してくれます。

リタッチばかりでは髪は決して美しくならない

――ところでCALONのお客様はリタッチをされないようですね?
「そもそも、リタッチばかりおすすめすることが違うと思う。カウンセリングで“根元が伸びたよね~。リタッチしましょうか?”って、自分から提案したりするでしょ?でも、1カ月や2か月前に塗ったカラーは、退色していますから赤みが出ているはず。リタッチだけしても髪全体は美しく見えないし艶も失われています。これでは、以前にカラーをした意味がないじゃないですか。ここをちゃんと治していかないと。特に大人の女性は、デザイン以前にヘアケアを優先してサロンに来店されますから、白髪のカバーも含め、髪質の印象を上げてさしあげることがとても需要です」

――西海さんのセミナーでは、このようなお話しもされるわけですね?
「カウンセリングの仕方から、ファッションカラーによる白髪染めなど、もろもろをお伝えしています。受講された美容師さんからは“以前よりオールカラーのお客様が増えました”とか、“カラーリング剤による白髪染めが好評です”というような言葉をいただいています」

セミナー
セミナーの様子。ヘアカラーの可能性を広げ、リタッチばかりにならない正規の金額がいただける技術を、あらゆる角度からレクチャーする。

――西海さんのお話しを聞いていて、私もカラーの重要性を再認識できました。
「例として、ユニクロの服って着ますよね。僕も買うんです。でも、全身ユニクロを着て生活しているわけではない。オシャレな方というのは、いい靴やシャツ、高級バックを上手く組み合わせてバランスをとれる。ヘアカラーもそうで、そこにきちんと手間をかけてあげれば、他の部分を少々ゆるくしてもきちんと見える。髪色って、その人の印象を大きく分けるパーツだからここは手を抜かないほうがいいと僕は思うわけです」

――なるほど。よくわかりました。改めて勉強になりました。それにしても西海さんは、サロンにも立たれて外部活動も積極的でにこなす方。一方でずっと走り続けていて疲れませんか?
「サロンを出店することって簡単なんですよ。誰でもできるんじゃないかな。でも、継続していくことは本当にハード。人を育て、金銭面も工面し集客も常に考えていないといけない。本当に大変なことです。現状に満足したら、美容室なんてすぐに衰退しますよ。だから、根底には“人のためになにかをできる”という覚悟がないと、とても無理な商売ですね。走り続けることは経営者なら当然というわけです。

さらに僕も年齢を重ねて、最近ではスタッフの健康にも気を配るようになりました。玄米を炊いて、出汁からとった味噌汁となにか一品手作りする。これをね、スタッフ全員で当番制にして作っているんです」

――それは凄いことですね。
「手作りの食事で健康的になるという意味もあるのですが、料理は人のために作るわけで、この“人のために動くこと”が大事かと。料理からコミュニケーションが生まれるんです。この他、僕が読んでいる本やいいと思った本をサロンに置いてスタッフに読ませています。忙しいですから全て読めとは言わないのですが、できる限り読ませてみんなの前で感想を発表させるんです。僕は彼らよりずっと大人ですから、若い世代を多角的に教育することも、今は使命だと思うようにしていますね」

書籍
スタッフに読ませたい書籍「西海セレクション」のコーナー。本棚にはたくさんの書籍が溢れています。「若いスタッフに様々な知識と教養を身に付けさせ、きちんとした大人を育てたいと考えています」と西海さん。

ヘアカラー界を長年に渡って牽引し続ける西海さん。「一度でいいから技術を見てみたい」という美容師は、全国にたくさんいるそうです。これからも活動の幅を広げていくことでしょう。

取材・文/小澤佐知子
撮影/田中大三

Salon Data

店内

Beauty and Care CALON(ビューティ アンド ケア カロン)

銀座の歌舞伎座前に店舗を構える大人女性に人気を誇るサロン。
白髪染めは使わず、ファッションカラーでツヤ感のあるヘアカラーを提案してくれるため、大人世代でも上品かつ、華やかな髪色が楽しめると評判です。
また、カラーやパーマ後に発生する活性酸素を、水素ヘアトリートメントで除去するなど、ダメージレスな輝く髪へと導いてくれます。
http://www.calon-ginza.com/

カラーリストとして伝える あの“西海塾”の、CALON・西海洋史さん #1>>

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