学生時代の夢は『移動式美容室』訪問美容業界を変えたいとの願い
“美容室を施設や個人のお宅へ持っていく”ことをコンセプトに、可動式のシャンプー台を用意。音楽やアロマなども取り入れてリピート率97.5%の訪問美容サロン『trip salon un.』。代表取締役でCEOである湯浅一也さんに、人気の秘密や訪問美容に対する思いを伺いました。
洗練された空間、優雅なひととき
――訪問美容では、どのようなサービスを行われていますか。
ヘアのみならず心身ともに美しくなっていただくということはもちろんですが、コンセプトである、“ご自宅や施設をヘアサロンに”というイメージに乗っ取り、おしゃれなアイテムや看板をご用意して洗練された空間づくりを行います。クラシックやジャズなどのBGMもご用意しており、さらには季節にあったアロマを用いて、優雅なひとときをお過ごしいただいております
――移動式シャンプー台も用意されているとのことですが。
移動式シャンプー台を用いたことで、今まで自宅や施設では、あきらめていた施術が可能になりました。上向きや前屈みなど、どのような姿勢でもシャンプーができるので、女性にも好評です。介護スタッフさんにも、ご苦労をかけることもありません
――どのような方が利用されていますか。
病気やケガをお持ちの方、妊娠中や高齢者で、外出が難しい方です。また、介護をしていたり、乳幼児の育児中で、家を離れると家族の安全が保てなくなるお客様も多いです。具体的には7割が高齢者の方、2割が怪我や疾病により外出困難な方、1割が妊娠中や乳幼児の育児を行っている方になります。最近では去年の規制緩和により、妊娠中や乳幼児の育児中の方が多くなってきました
0を1にする大変さを痛感
――どのようなサービスが好評でしょうか。
ヘアサロンで受けられる、すべてのサービスを提供しています。独自のサービスとしては、カットやカラーを受けていただいた後、メイクをさせていただきます。そのうえで専属のカメラマンが撮影をするサービス『笑顔で一枚』が好評です。さらにはun.レクという美容レクリエーションがあり、広げていきたいですね
――起業されてどのくらいでしょうか。また、当初ご苦労はありましたか。
2012年8月に起業して5年4か月になります。創業当時は、0を1にする大変さを痛感しました。美容業界にいたので介護業界に関する知識や人脈もありません。一般的な社会人が1年目で学ぶビジネスマナーを分かっておらず、名刺の渡し方から営業活動に至るまで厳しい現実が待っていました。ビジネスについての講習会に参加したり、本を読んだりして学びました。非常に苦労をしましたが、当時を振り返るとそれが現在、しっかり生きていると感じます
――学びを重ねられて今があると、おっしゃいましたが、そこまで湯浅さんを駆り立てたものは何でしょうか。
専門学校の頃、北海道に住んでいました。自宅の周りはお年寄りが多く、身体が不自由で外出が困難な方もおられました。豪雪地帯です。ふと、みなさんは“どうのようにして美容院へ行くのだろう?”という疑問が生まれたんです。そこで訪問美容についてリサーチして、美容学校時代、“将来どんな美容室を作りたいか”の授業で、『移動式美容室』という構想が生まれました
――昔からの目標であり、やりたかったことなんですね。
はい。その後、上京して原宿の美容室にいた頃、“介護施設にいる母がおしゃれではなくなった。今まで美しさに対して敏感でステキだったのに変な頭にされて、湯浅さん切ってよ”というような相談を何人ものお客様から受けました。改めて美容師目線でリサーチをしたところ、訪問美容は遅れており、業界の問題が浮き彫りになりました。“訪問美容業界を変えたい!変えられる”と。施設などにいるお客様が笑顔で美しく変わるイメージがあり、自信が湧いて動き出しました
Profile
湯浅 一也(ゆあさ かずや)
株式会社un.代表取締役 CEO
札幌の美容専門学校を卒業後、2008年studio V 原宿店に入社。サロン勤務を経て、転職先の美容室で櫻庭太と出会い、2012年8月に25歳で株式会社 un.を設立。訪問美容サロン『trip salon un.』の運営のほか、講演会やメディア出演なども行なっている。近年では「ワールドビジネスサテライト(テレビ東京・JOTX-DTV)」をはじめ、経済番組でも活動は注目されている。
訪問美容サロン『trip salon un.』http://c-b-un.com/