邪道と呼ばれても、すべては患者様の結果のために。仲間とともに「鍼灸があたりまえの社会」を目指す【治療・リラクゼーション・歯科業界のお仕事 長谷川亮さん】#2

治療、リラクゼーション、歯科業界など、人々の痛みや不調に寄り添う仕事の魅力を紹介する本企画。今回お話を伺うのは、愛知県・名古屋市で「長谷川亮・鍼灸院」を運営する鍼灸師の長谷川亮さんです。

前編では鍼灸師の仕事内容や、長谷川さんが鍼灸師を目指すようになったきっかけなどを伺いました。

後編では、「アンチエイジング美容鍼」を確立した長谷川さんが、これまでに直面してきた苦労や葛藤について掘り下げていきます。

美容鍼に電気を流すという、それまでに例のなかった技術に挑戦した長谷川さん。業界内から「邪道」と批判されることもありましたが、それでも長谷川さんは常に患者様の結果と安全性に向き合い続けてきました。

やがて技術公開をきっかけに同志が集い、鍼灸があたりまえの社会を実現するため、活動の幅をさらに広げています。

お話を伺ったのは…

長谷川亮さん

長谷川亮・鍼灸院 院長/鍼灸師

1977年愛知県豊田市生まれ。11歳のときに鍼に出合い、母親の勧めをきっかけに鍼灸師を志す。資格取得後は鍼灸院で経験を積み、2011年3月にアンチエイジング医学を専門とする鍼灸師として、「長谷川亮・鍼灸院」を開業。一般診療に加え、美容・痩身分野にも取り組み、自身が考案した顔全体に電気を流す美容鍼「アンチエイジング美容鍼」を軸に、延べ10万人以上の臨床経験を積み重ねてきた。

雑誌やテレビ番組への出演も多く、「鍼灸王子」の愛称で注目を集める。治療待ち患者数が2,000人を超える実績を持ち、アンチエイジング美容鍼の第一人者として知られている。

インスタグラム

批判にさらされながらも、患者様と結果に向き合い続けて

独自の技術を確立した長谷川さん。2011年の開業後も歩みを止めることなく、技術の研鑽を重ねてきた

――「アンチエイジング美容鍼」を確立するうえでは、批判も受けたそうですね。

顔に電気を流す手法は、当時の鍼灸業界のガイドラインから外れており、「邪道」だと厳しい声を向けられたんです。

でも私にとっては、患者様が実際に効果を感じているかどうかがすべてでした。業界でどう言われようと関係ない。目の前の患者様がリフトアップやくすみの改善といった明確な変化を実感し、喜んでくれた事実が、進み続ける理由だったと思います。

――強い意志をお持ちだったのですね。

そうかもしれません。一方で誰もが納得できるような科学的な裏付けが必要だとも感じていました。鍼灸は目に見えない理論が多く、どうしても怪しいと思われがちです。でも、長年携わってきた鍼灸師の多くは、その価値を実感しています。それを科学的に証明したかった。

そこで大学や企業に自ら足を運び、共同研究を重ねました。その結果、2019年には美容鍼に電気を流すことでコラーゲン合成が向上する(細胞活性350%)というデータを示し、学術発表を行うことができたんです。ようやく、批判を正面から跳ね返せる材料がそろったと感じています。

技術を独占しない選択。セミナー開催が生んだ新たな広がり

長谷川さんはセミナー講師としても活動し、後進の育成に力を注いでいる

――セミナーを開催するようになったきっかけは?

2012年に「鍼灸王子」としてテレビで取り上げられ、全国から患者様が来院されるようになったことです。なかには海外から通ってくださる方もいて、本当にありがたい反面、「このままでは限界がある」と感じました。

美容鍼は継続が大切な施術です。現実的に考えれば、近所に鍼灸院がなければ通い続けることは難しい。自分ひとりで抱え込むのではなく、技術を広げる必要があると強く思うようになりました。

――その思いが、セミナー開催の後押しになったのですね。

はい。2014年1月1日から、セミナーという形で技術を公開することを決めました。たとえ「邪道」と言われても、患者様が効果を実感できる技術であれば、共有する価値がある。結果として業界全体の底上げにつながると考えたからです。

――業界全体のことを考えられたと。

はい。もうひとつ大きかったのが鍼灸師の可能性をもっと知ってほしいという思いでした。とくに鍼灸師は開業権のある資格ですし、大きな設備がなくても、技術ひとつで多様な働き方ができる点から、働く時間を制限されやすい女性やシングルマザーの方などにお薦めです。

高い技術力を身につければ、しっかりと収入を得られる職業であることを示したかった。だからセミナーも一度きりで終わらせず、「何度でも復習に来てください」と伝えています。無料で復習講習を行い、確実に身に着くまで伴走する姿勢は、今も変わりません。

――セミナーを開催するようになって、何か変化はありましたか?

技術を外に出したことで、「鍼灸があたりまえの社会をつくる」という自分と同じ志を持った仲間が増えていき、団体の垣根を越えた強力なネットワークが構築されたことです。この仲間たちが各地で成功することが、業界を盛り上げる大きな力になっています。

現在では受講者が1,000名を超え、同じ志を持つ仲間が集うコミュニティ「アンチエイジング美容鍼研究会」も形成されました。

また結果的に自分自身の活動の幅も広がりましたね。大学や企業との共同研究、メディア出演、行政関連の仕事へとつながったのも、発信を続けてきたからこそだと感じています。

感謝と謙虚を胸に、悲願達成を目指して

どんなに名前が広がっていこうとも、1回1回の施術を常に大切にしてきたという長谷川さん

――鍼灸師としてもっとも大切にしてきたことは?

「感謝」と「謙虚」です。感謝という言葉には、単なる「ありがとう」の意味だけでなく、「感じたら謝る」、「きちんと反省する」という意味も込めています。私は鍼灸師として、失敗やトラブルも多く経験しましたが、それらがすべて今の学びにつながっていると捉えるようにしてきました。

謙虚さとは技術や知識を惜しみなく還元する姿勢だと思っています。出し惜しみせずに伝えることで、いい循環が生まれ、次の世代の育成につながっていくと信じています。

――鍼灸師の仕事のやりがいを感じたエピソードを教えてください。

もっとも印象に残っているのが、ギラン・バレー症候群を患った70代の会社役員の男性のケースです。その方は近くの病院での治療を終えたあとも、背中の重だるさなどの後遺症に悩まれていました。

そこで担当医の神経内科の先生が、「こういう方法もある」と私の鍼灸院のサイトを見せてくださったことが来院のきっかけになったんです。実はその先生自身も、私の別の患者様の娘さんであって深いつながりがあり、信頼関係の上で紹介してくださったと聞いています。

――施術はうまくいったのですか?

はい。ギラン・バレー症候群の臨床は、私にとっても初めての経験でした。自律神経や血流へのアプローチを試みながら施術を重ねたんです。2回目の来院時、その男性は院内で正座をして待ち、「本当によくなった。ありがとうございます」と深く頭を下げてくださいました。

医療機関から特殊な症例の患者様が紹介され、その症状を改善できたこの経験は、まさに鍼灸師冥利に尽きる出来事でしたね。鍼灸が医療の一部だと認められることも我々の悲願のひとつですから。

その実現のため現在は皮膚科や外科、内科など、医療機関との連携を大切にしています。

――メディア露出も増えるなかで、誤解や批判を受けることもあったそうですね。長谷川さんにとって、鍼灸師として大切にしている軸とは何でしょうか。

はい。2011年に独立してから、「鍼灸王子」としてのメディア露出や、派手なイメージが先行し、「金儲けのためにやっているのでは」といった誹謗中傷を受けたこともありました。

毎晩シャンパンで乾杯しているような印象を持たれることもありますが、実際はビールしか飲みません(笑)。イメージがひとり歩きしてしまった部分もあります。

確かに、金銭的には以前より豊かになりました。ただ、それはほとんど休みなく働いてきた結果であり、家族を守るための責任でもあると考えています。

表面的には派手な鍼灸師に見えるかもしれませんが、内面は至ってシンプルです。私はただの鍼灸師。患者様が感動する鍼を打ち、今日よりも明日、少しでも技術を磨いていく。その積み重ねしかありません。

1人ひとりと真剣に向き合い、「ありがとう」と言ってもらえる。その感動の連鎖こそが、この仕事の本質だと思っています。

――最後に、今後の目標を教えてください。

私の最終的な目標は、個人として成功することではありません。鍼灸を受けることが、特別なことではなく「あたりまえの選択肢」になる社会をつくることです。

いつの日か、鍼灸の社会的貢献が国に認められ、この職業から園遊会に招かれるような存在を生み出したい。各地に志を同じくする仲間がいる今なら、決して遠い夢ではないと感じています。


かつては批判を浴びながらも、常に患者様と結果に向き合い、鍼灸の可能性を広げるため歩み続けてきた長谷川さん。

派手な肩書きやイメージの裏側で、ただひたすらに技術を磨き、1人ひとりの患者様と誠実に向き合ってきたことが感じられた取材となりました。

鍼灸があたりまえの社会へ。その未来を見据えた挑戦は、これからも続いていきます。


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長谷川亮・鍼灸院
住所:愛知県名古屋市昭和区石仏町2-5-2
TEL:052-893-9439

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