茂木賢太 interview #2:インターネットをフル活用する経営スタイル
“オタクのオタクによるオタクの為の美容室”を目指し、2016年に秋葉原でオープンした『OFF-KAi!!』。店内には、2000冊の漫画が並び、3000曲のアニメソングが次々にかかり、スクリーンには可愛いらしいキャラクターの映像が流れます。
そんな個性的なサロンのオーナーは、自身もオタクだと語る美容師の茂木賢太さん。ハサミを手に働くオタク、茂木さんは、いったいどのように、オタクにウケる美容室『OFF-KAi!!』を作りあげたのでしょうか?中編では、『OFF-KAi!!』を立ち上げるまでの経緯について語っていただきました。
コスプレ用ウィッグの通販サイトを運営
――独立を考え始めたのはいつ頃ですか?
「24歳の頃です。自由ヶ丘でのサロンワークに余裕が出始めると、美容室で何もしない時間が生まれ、自然と将来について考えるようになりました。また、美容室で働いていても、なかなか役職が回ってこなかったことも理由のひとつですね。理由は、僕たちの世代のすぐ上にテレビドラマの影響で美容師を目指す人が増えた“カリスマ世代”がいるからです。早くステップアップしたいけれど、できない。今のお店のイメージはまだありませんでしたが、独立の思いは強くなっていきました」
――自由ヶ丘のサロンを辞めた後は、どのような活動をしていましたか?
「お客さまから指名が入ったときにだけサロンに行きカットをする、フリーの美容師になりました。また同時期に、ウィッグをカットし、コスプレ用としてインターネットで販売するサービスも始めたんです。商品を掲載するホームページは簡単なものを自主制作し、商品も2,500円くらいの低価格で販売していましたが、はじめはなかなか注文が入りませんでした。そこでホームページのデザインに力を入れ、価格も5,000円に上げたところ注文が入るようになったんです。インターネットでは値段を上げたほうが、お客さまが信用してくれると勉強になりましたね」
居酒屋トークが、サロン立ち上げのきっかけに
――“オタクの為の美容室”というアイデアを思いついたのはいつでしょうか?
「フリーの美容師時代に、オタクの友だちと居酒屋で飲んでいたときです。アニメソングが流れていて、お客さまとアニメの話で盛り上がれる、そんな“オタクの為の美容室”が秋葉原にあったらおもしろいと、酔っ払いながら話し合いました。その後、もしかしたら本当にそんな美容室を作れるんじゃないかと思い始めたんです」
――『OFF-KAi!!』をオープンするまでの経緯を教えてください。
「まず、2012年の3月から秋葉原にある美容室で働き始めました。サロンの礎を築くためにも、秋葉原で働く必要があると思ったんです。どこの美容室で働こうかと調べていたときに、コスプレ居酒屋が出店した美容室を見つけました。話を聞きに行ってみると、ちょうどスタイリストを1名募集していたタイミングだったので、働くことが決まったんです。そこで約4年間、『OFF-KAi!!』を立ち上げるための準備をしながら働きました」
インターネットを駆使したPR戦略
――サロンを立ち上げるにあたって、一番考えたことはなんですか?
「お店のオープンを、いかに多くの人に広めるかということです。ちょうどその頃、海外でクラウドファンディングが浸透し始めて “人生で初めてポテトサラダを作る”という企画に、500万円もの大金が集まっていました。日本でもニュースになり、インターネットで広まっていたんです。それを観たとき、かなり宣伝効果が期待できると思いました。そこで、2016年に入ってすぐに、 クラウドファンディングに“オタクのオタクによるオタクの為の美容室”を秋葉原で作りたいので出資してくださいと、申請を出したんです。すると、インターネットでニュースに取りあげてもらえたので、本格的にクラウドファンディングで資金集めを開始しました。これが、またニュースになり、続いてTwitterも始め、じわじわと知名度を広げていったんです。クラウドファンディングでは、目標30万円にたいして50万円を集めることに成功しました」
インターネットを駆使したPR方法について「僕がオタクなので、これまでに自分が利用してきたところに、顧客がいるだろうと思いました」と語ってくれた茂木さん。見事に戦略が的中し、目標額以上の資金を集めることに成功しました。後編では、実際にお店をオープンしてからの日々や、これからの目標を伺いました。
Profile
茂木賢太さん
OFF-KAi!!オーナー兼スタイリスト
『東京マックス美容専門学校』を卒業後、自由ヶ丘のサロンで勤務。その後、フリーランスの美容師を経て、2012年より秋葉原のサロンで働く。2016年の10月、『オタクのオタクによるオタクの為の美容室 OFF-KAi!!』をオープン。
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