【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】 コロナ禍で見えた「休みたいときに休めるサロン」へシフトする道筋/PearL MATSUさん&CHIEさん #2
コロナ禍で、これまでと同じ働き方が難しくなってきた美容業界。そんなwithコロナ時代を生き抜くために、他サロンはどんな取り組みを行っているのか、そのプラス効果は?
前編に引き続き、ご夫婦でサロン経営をされているPearLのMATSUさんとCHIEさんにインタビュー。前編では、昨年のサロンの経営状況と、働き方の変化についてお聞きしました。昨年4月の休業での落ち込みから、7月以降は積極的に予約状況を調整し、売り上げを前年比8割にしたというPearL。それを叶えるため、全スタッフの技術スピードアップを計ったと言います。
後編では、お二人の1日のタイムスケジュール、コロナ禍で新たに導入したこと、今後PearLが目指していく働き方について、教えていただきます。
お話を伺ったのは…
PearL 代表 MATSUさん
アートディレクター CHIEさん
共に美容室antiで15年以上の経験を積み、2014年6月にスタイリスト3名+アシスタント2名でサロンオープン。プライベートでは夫婦。5歳のお子さんがいるため、CHIEさんは時短勤務中。昨年2名のスタイリストがデビュー
MATSUさんのInstagram:@pearl_matsu
CHIEさんのInstagram:@pearl.chie
MATSUさん、CHIEさんの1日の流れ/16時まではCHIEさんメインで稼働率を調整
―おふたりのサロンワークの調整は、どんな風にしていますか。
CHIEさん:私は子供の保育園のお迎えがあるので、17時半にはアップするように予約を組んでいます。11時のオープンから17時まで、大体2名を並行する感じですね。1時間1名、おひとり2時間以内に…ということで、頑張って早く施術が終えられるようにしています。
MATSUさん:もちろん予約が入った順にはなるんですが、CHIEさんがいられる時間帯は、できるだけ僕のご予約は抑えめにしています。その分、CHIEさんが退勤する少し前、16時くらいからは、ご予約も30分間隔に戻して、本気のペースでやっています。
とは言え、密にならないようにというのと、昨年4月にデビューした2人の席を空けるためにも、6席すべてが僕たちのお客様で埋まらないように、考えながら調整していますね。
―お2人の他に、昨年スタイリストデビューされた若手が2名いらっしゃいますよね。営業自粛のタイミングでのデビューだったそうですが、何か対策はされましたか?
MATSUさん:昨年の4・5月は、積極的に営業もできませんでしたからね。でも時間があったので、ブログの打ち出し方やインスタグラムでの提案の仕方、お客様のリターンを狙う方法など、営業のプランニングを一緒に考えました。
その時期にまいた種が実って、12月くらいから各自のリターンも増えてきました。いい調子で、右肩上がりになってきています。
―コロナ禍で、新たに導入されたことはありますか?
MATSUさん:レッスンに動画を取り入れました。僕たちのテクニックを、いつでもどこでも見られる状態にしておくのは、今のツールとしてはいいかなと。導入したことで、レッスンカリキュラムは断然早くなりましたね。今まで半年かかっていたカリキュラムも、今年の新卒の子は1カ月ほどでクリアできています。
もともと教育面をブラッシュアップしたいなと考えていたものの、なかなか取り掛かれていなかったんです。コロナ禍で時間ができたおかげで、やっと取り掛かれて。今でも継続して、どんどん更新しています。
動画は最終的に、お客様に共有できるレベルまで、ブラッシュアップできたらなと。ブローやスタイリングは、「これ見てね」と言えますし、お客様にも喜んでいただけるんじゃないかなと思っています。
CHIEさん:既存の技術も見直しました。薬剤の知識やテクニックを、みんなで今一度勉強し直すことにしたんです。パーマとストレートパーマは、新しい薬剤を導入しました。
髪のダメージを減らす、スタイルの持ちを良くする、という根本的な部分はもちろん、コロナ禍で「変化が欲しい」という方がすごく増えたので、そこにも対応していけるようになりましたね。
デザイン提案自体もすごく変わりました。マスクが当たり前になり、メイクも変わったので、顔周りの似合わせの考え方が大きく変わりましたね。そこに対応しつつ、今までより良いものを提供できるように、技術面もブラッシュアップしているところです。
集客の変化/感染対策を徹底しつつ、つながりが途切れないように働きかけ
―コロナ禍でできた時間を有効活用されたんですね。お客様に安心して来ていただくための対策は、どんなことをしましたか?
CHIEさん:衛生面の対策は、私が主導で行いました。最初は、できることは全部やっていましたね。いろんなサロンのいいなと思うことを真似しながら、何度も自分たちでシュミレーションして…。いかにお客様に負担をかけずにできるかを考えながら、改善していきました。
現在も行っているのは、ご来店時の手洗いと消毒。アルコールが手に入らなかった時もあったので、トイレに誘導して手洗いをお願いするようになりました。また、お客様の荷物はビニール袋に入れて、他の方の荷物と重ならないようにお預かりします。そして、クロスは使用後きちんと除菌、座席も移動ごとに除菌。あとは、換気しながらの営業、飲み物の提供停止など…。営業後は、床を消毒液で全部拭いています。
MATSUさん:うちは座席数6席で、スタッフも密になるほど多いわけではありません。パーテーションをつけたり、完全に席を空け続けるのも、営業を考えると現実的ではない。その分、お客様の不安が減らせるように、フェイスシールドやアイシールドの着用も続けています。
CHIEさん:本当にありがたいことに、PearLのことを考えてくださるお客様がたくさんいるんです。いろいろ手に入らなかった時期に、マスクやアルコールを持ってきてくださる方もいましたし、羽織ものや飲み物をお持ちいただくようにお伝えしても快く対応いただけるんですよね。
だからこちらも、安心して来ていただけるように精いっぱいのことをして、こんな対策をしていますよということもSNSやメールなどで伝えるようにしてきました。
―それはお客様も安心できそうですね。他にお客様とのつながりをキープするためにしたことはありますか?
MATSUさん:予約枠を制限している分、どうしてもお断りしなければいけないこともあったので、そういう時は必ず名前を残すことを全スタッフに徹底しました。
全員が見られるようにして、次にご連絡いただいた時には、「前回は申し訳ありませんでした」という一言を伝えられるように。予約が取れなくても気持ちがいい、という電話対応は、徹底していましたね。
CHIEさん:お店に来られない方も、店販商品を送って欲しいと言ってくださったりしたので、郵送させていただくこともありました。また、いつも年末に特定商品の割引をしていたんですが、昨年末は「おうち時間を楽しく過ごせるように」ということで、ご来店いただいた方には、好きな商品どれでも15%オフという企画をしました。
すぐにご来店いただくのが難しいかもしれないので、期間も1月末までと長めに設定して、お電話でお取り置きもOKにして。すごく好評で、お店に活気も出たので、たまにそういう流れがあったほうがいいなと感じました。
今後の展望/コロナ禍で増やした休日から、新しいサロンの在り方に気づく
―今後、どんな働き方が求められると思いますか?
MATSUさん:PearLとしては、休みたい時に休める美容院がいいなと思ってるんです。うちは女性が多いので、「女性が安心して働けるように」というのが大前提にあるんですが。
例えば、サロンは開いているけど、CHIEさんは週3日勤務にする。年齢を重ねて体がきついから出勤を減らすとかではなくて、ちゃんと顧客がいる状態で、それができるといいですよね。
CHIEさん:コロナ禍になって、店休日以外の個人的な休みというのができました。すると、お休みが一緒の子と買い物に行こうとか、ランチに行こうという時間ができたんですね。そういう時間が増えて、すごくいいなって思うんです。
私は、時短勤務でお店にいる時間が少ない分、スタッフとコミュニケーションをとれる時間がなくて…。でも、女性同士だからこそコミュニケーションをとりたいし、私を知ってもらえるきっかけにもなる。営業中だけの殺伐とした感じとは、また違うじゃないですか。
女の子が多いサロンで、彼女たちの底力を上げていかないといけない立場として、そういう時間をうまく使いたいし必要だなと思うんです。休みが取れなくても、シフト制にするとかで、そういう時間が作れたらいいなと。
MATSUさん:そのためには、ある程度のボーダーをクリアできるように、技術者として各スタッフにも頑張ってもらわなきゃいけません。それが叶えられるように、お店としては、頑張れる仕組みやプランニングをしていきたいなと思っています。そうしたら、スタッフみんなが、よりイキイキ楽しんで働けるんじゃないかなと思います。
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スタッフの人数、サロンの広さ、席の稼働数…、営業とコロナ対策の間で悩んだ1年だったというPearLのお2人。自分たちのスタイルを見つけながら模索していくうちに、今後サロンが目指していく方向も見えてきたと言います。「みんなが嬉しいことをしたいんです」というMATSUさんの言葉と、「お客様の愛を感じました」というCHIEさんの言葉が印象的でした。
▽前編はこちら▽
【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】 技術スピードアップで、時短でも売り上げをキープ!/PearL MATSUさん&CHIEさん #1>>
取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥