Akamiho interview #2:“V系氷河期”に『Tritt fur Tritt』が誕生
池袋に店舗を構える、元祖ヴィジュアル系ヘアサロン『Tritt fur Tritt』。エレベーターが開くと、鮮やかなメイクをほどこしたバンドのポスターが、真っ先に目に飛び込んできます。美しいロックのサウンドがかすかにもれる扉を開け、一歩足を踏み入れると、そこに広がるのは、まさにヴィジュアル系の世界観。
そんなサロンを作りあげたのは、自身も熱狂的なヴィジュアル系のファンだと語るAkamihoさん。いったいどのようにして、現在のスタイルにたどりついたのでしょうか?中編では、美容室で働くなかで感じたことや、サロンオープンまでのいきさつについて伺いました。
ヴィジュアル系の世界観を完璧に作れるアーティストになろう
――サロンで働くなかで、心境の変化はありましたか?
「はじめは、早くヴィジュアル系のヘアメイクとして働きたいと思っていたので、それほど長くサロンにいるつもりはありませんでした。カラーができるくらいで十分かなと。しかし、働くうちに、カットの技術も完璧に身につけたくなったんです。そこで、カットもヘアーもセットもすべてできて、ヴィジュアル系の世界観を完璧に作れるアーティストになろうと心に決めました」
――美容室を辞めた後は、どのような活動をしていましたか?
「フリーになってからの仕事は、ヘアメイクが中心でしたね。青山でウィッグとメイクのディレクターをするなど、幅広く活動していました。ただ、フリーとして働くなかで、ヘアメイクは“どこどこのバンドを手がけたヘアメイク”や、“誰々を担当したヘアメイク”などと紹介されることが多く、個人として評価されづらいことに気づいたんです。それがすごく悔しくてそこで組織を作り、“Tritt fur Trittの作品”としてブランド化し、打ち出せば強いのではないかと思いました。その頃から、サロン立ちあげの気持ちが強くなりましたね」
わずか10坪、スタッフ2名からのスタート
――『Tritt fur Tritt』は、どのように立ち上げたのでしょうか?
「元ヴィジュアル系のバンドマンだったパートナーとともに、2004年に立ち上げました。場所は池袋ですが、今とは違うところです。大きさも現在のサロンほど広くなく、わずか10坪。スタッフは、私を含めふたりだけでのスタートでした」
――開店場所に、池袋を選んだ理由を教えてください。
「池袋は、アウトローな雰囲気が漂う街だからです。主流にうまく乗れない、マニアックな人たちを受け入れてくれる懐の深さがあります。新宿や渋谷にくらべ、洗練され過ぎておらず、時代に流されながらも街の印象が変わらないところも好きです。ライブハウスや楽器店が多いところもうれしいですね」
4日間連続でお客さまゼロだった、オープン直後。
――サロンをオープンした直後について教えてください。
「オープンしてから半年間は、軌道にのらず苦労しました。4日間連続で、お客さまがゼロということもありましたね。なんとかしなければと、広告を街中で配りましたが、なかなか思うようにいきませんでした。集客に苦労した理由のひとつとして、私たちがサロンを立ち上げた時期が“V系氷河期”だった点があげられます。脚光を浴びるバンドがいなかったんです。一般的には、あまりヴィジュアル系が受け入れられていませんでしたね」
――なるほど。お客さまが増えたきっかけはなんでしたか?
「一般誌に広告を出したことが大きかったですね。広告を出した翌月から売り上げが2倍になりました。世間では、ヴィジュアル系の人気は下火でしたが、隠れたヴィジュアル系ファンに、サロンの存在を知ってもらうことができたんです。来店されたお客さまはさまざまで、もちろんバンドマンもいましたが、高校の先生やお医者さんなどもいらっしゃいました。ヴィジュアル系の髪型にしたいわけではなく、とにかく好きな音楽について熱く語り合いたい方が来てくれたんです。お客さまからは、“美容室でヴィジュアル系の話ができてうれしい”といった声や、“バンドマンを間近で見ることができてワクワクする”といった感想をいただきましたね」
――現在の場所にお店を移転した理由を教えてください。
「より多くのお客さまに、サービスを楽しんでもらいたいと思ったんです。1号店は本当に小さかったので、従業員もあまり雇うことができず、対応できるお客さまの数も限られる。そこで、もっと大きいお店をつくりたい思い、6年前に今の場所に移転しました」
一般誌に広告を出し、サロンの存在を広めることに成功したAkamihoさん。そんな彼女は、人脈の作り方について、「今は、SNSの時代と言われていますが、人間関係の基本は会うことですね」と語ります。情熱を持って働いているAkamihoさんらしい、真摯な姿勢が見てとれます。後編では、ヴィジュアル系をコンセプトに置くサロンならではの、お客さまとの関わりや、今後の目標について語っていただきました。
Profile
Akamihoさん
Tritt fur Tritt マネージャー
カリスマV系スタイリスト&アーティスト。ヘアーメイクアーティスト学院卒業後、日本美容専門学校へ。免許取得後、サロン勤務を経て、フリーの美容師に。ヘアーメイクアーティストとしてライブや雑誌など、幅広い分野で活躍。2004年に『Hair & Make Studio Tritt fur Tritt』をオープン。
Salon Data
Tritt fur Tritt(トリット フューア トリット)
住所:東京都豊島区池袋1-32-1第2アムスビル4F
TEL:03-5960-9363
http://www.tritt.co.jp/salon-tritt.htm
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