ミュージシャンにも愛される“ゆるり”空間『Maruche』
燦々と陽が降り注ぐビルの3階にある「Maruche」は、オーナー兼スタイリストである石丸さんが2103年にオープンさせたヘアサロン。店内は女性オーナーらしいこだわりに溢れ、家族で来店できるようキッズチェアなどが配されています。また、ゆったりとした店内は仲良しのスタイリストに面貸しもするシェアサロンという一面もあり、石丸さんの顧客には関西のミュージシャンも多いそう。今回は音楽イベントでのヘアメイクも担う石丸さんに、独立のタイミングや仕事観について伺いました。
他にない“ゆるさ”が愛される理由
――2013年のオープンからこれまで、特に広告を出すなどの営業促進活動をしなかったそうですがどのように集客されたのですか?
「美容師として独立し、ここをオープンさせる以前は西宮にあるヘアサロンで12年勤めていました。その時のお客様がいらして下さったのと、あとは友人の繋がりや口コミが中心です。開店時はSNSでの告知と以前の顧客様へのハガキくらいで特に広告は出さなかったのですが、人との繋がりで今に至っているなと感じます。実は私、独立して自分の店を持ったのも割とその時の勢いというか、周囲の友人に自分で仕事を始める人が多かった影響を受け、お店を出したんです。開店前はかなり苦労しましたが、その際もたくさんの友人に協力してもらいました。スタート時は、特に先の目標を具体的には設定せず今を楽しむことを意識してやっていました。これは一般的なサロンオーナーからすると異端かもしれませんが、こういうゆるい雰囲気が好きで通ってくださるお客様も多く、友人に髪を切ってもらう感覚で来られるのが当サロンの“らしさ”なのかな。このサロン、オープンしてから今までで飛び込みでご来店されたお客様の数は5人なんです(笑)。ほとんどの方が口コミや紹介なので、それだけ人の繋がりのパワーというものを実感しますね。」
接客スキルを磨いた2足のわらじ
――人との繫がりというのがサロンのキーワードのひとつですが、現在までの人間関係を築いたベースというのは?
「美容専門学校時代の友人関係がベースですが、ここをオープンする以前は飲食業界にも興味があり、美容師をしながら飲食店でバイトもしていました。今で言う兼業ワーカーの走りでしょうか(笑)。その時に身につけたもので接客スキルがあるのですが、多くのお客様と接する機会の多い飲食と美容師はサービス業という括りでは同じ。だからその時の経験や人間関係も今に活きています。ただ、美容師とは異なる仕事をしてみて、やはり自分は誰かのためにああしたい、こうしたいと考えながら何かを作ることが好きなんだと改めて実感し、それができる美容師は天職なんだと気付きました。お客様の希望を聞き、それを取り入れつつより似合ってさらにその人のライフスタイルにも沿うデザインを提案すること。お互いのイメージが共有できるベストなバランスを探りながらヘアデザインをするのが私のモットーなので、そのために必要なコミュニケーションスキルは飲食の仕事で得たものが大きいです。」
カット技術の向上に役立った経験
――ゲストの要望とプロの目から見て似合うスタイルを見極めるテクニックやカットそのものの技術を上げるために取り組んだことはありますか?
「独立以前に長く勤めた西宮のサロンで働く前は、美容師の派遣などにも登録して様々なお店で経験を積みました。中でも約1ヶ月間働いた低料金サロンでは、最高1日に54人のお客様をカットしたことも。そこで学んだのがいかに完成度を落とさずに手早くカットする技術で、そこにはカットスピードを上げることを目的に入りました。他のヘアサロンもですが、それぞれのお店の良いところと悪いところを実際に体験できたことは、自身のサロンを持つ際にとても役立っています。また、当店のお客様の多くは“こんなヘアスタイルにしたい”というイメージが強く持っている方が大半。そのイメージに近づけながらも手入れがしやすかったり、かっこよく決まる状態が長く続くよう、必ず1ヶ月先の髪の状態をイメージしながら切るように心がけていますね。現在は定休日を利用してメーカーの勉強会に参加するなど、随時アップデートされる新商材を扱えるよう取り組んでいます。」
過去には美容師一本ではなく飲食業界も並行して体験するなど、興味を持てば他業種でもまずやってみるという好奇心とチャレンジ精神に満ちた石丸さん。そこで得た経験や人間関係なども全て美容師という自身の礎となる仕事に活かされているのは、貪欲に自分がやりたい事に突き進む行動力があってこそ。一見自由に好きなことをやっているように見せつつも、その実自分の軸となる美容師業に還元しているのがさすがです。続く後編では、ヘアサロンの面貸しや今後美容師という仕事を通して挑戦したいことなどを中心に伺います。
Profile
石丸久美子さん
スタイリスト
三重県出身。ご実家が美容室という環境であったにも関わらず当初は美容師を目指すつもりはなかったそう。高校卒業時にすぐに就職するのが嫌で大阪の美容専門学校に進み、周囲の先輩などに恵まれ美容師という仕事の面白さを実感。飲食業や海外一人旅など様々な体験をしつつ、2013年6月に独立し自身のサロンをオープン。