シェアサロンで女性に活躍の場を『Maruche』
独立当初からスタッフを雇わずに1人で自身のサロンを切り盛りしてきたMarucheオーナーの石丸さんですが、現在は知人のヘアスタイリストにセット面をレンタルする面貸しというシステムを導入しています。単にスペースがあるから貸すのではなく、シェアというスタイルを選んだ背景にはいったいどのような思いがあるのでしょう。また、スタッフを雇い入れない理由などを含めてお話を伺いましょう。
顧客のことを考えての“1人体制”
――独立当初も現在もスタッフを雇わずにお1人で経営されていますが、あえて1人にこだわるのには何か理由がおありなのでしょうか？
「当サロンのお客様は、元々が友人関係や,お店以外の場で出会ってお客様として来店される方がほとんどなので、本当に友人の家に髪を切るくらいの感覚で来てもらえるようなお店にするのが一番リラックスできるのではないかなと思いました。また、私自身が経営に関しては無頓着なので、スタッフを何名も抱えてという状態が不向きなのではないかという気持ちもあり、マイペースでゆったりとできる今のスタイルになっている気がします。1人ゆえの大変さもあるかもしれませんが、その分お客様にくつろいでもらえるのなら現在の状態がこの店にとってのベストなのではないでしょうか。」
シェアサロンで同業の女性を応援
――面貸しというシェアスタイルを導入されていますが、その意図とは？
「現在は美容業界全体が女性が長く働ける環境整備という面にフォーカスしつつありますが、私が美容師になった23年前は結婚や妊娠、育児と美容師業を両立させるのは非常に難しかった時代。実際過去にはプライベートか仕事かの選択を迫られ、結果として仕事を諦めざるを得なくなったという状況を目にしてきたこともありました。そういった経験を踏まえ、それぞれが自分のペースやライフスタイルにあった働き方ができるにはどうすれば良いかを考えた結果がシェアサロンです。今面貸しをしているヘアスタイリストさんは妊娠中ですし、同じ女性美容師として、女性のライフステージに合わせた働き方ができる場所を作りたいと考えています。シェアという方法なら各スタイリストそれぞれが経営者なので経営に伴う面倒なことは各人が行いますし、自由に働ける。こういう融通が利く面がシェアサロンの利点ではないでしょうか。」
サロンワークをベースに多方面で活躍
――現在も音楽イベントを中心にミュージシャンのヘアなどを手がけられていますが、そのきっかけなどをお教えください。
「これもまた人との繋がりなのですが、専門学校時代の友人がイベントを主催する側の仕事をしていたこともあり、その関係でお客様としてバンドマンが来店するようになりました。その後イベントなどでヘアメイクとしてお手伝いすることが増え、今はサロンワークがベースながら、要望があればヘアメイクとしても活動しています。ただ、サロンとイベントでは求められるヘアデザインが全く異なるので、それぞれのイメージや要望を的確にデザインに投影できるようトレンドの勉強などは欠かしません。逆に、音楽関係にはおしゃれな人が多いので、そこから刺激を受けることもたくさん。今後は少しずつヘアメイクの仕事を増やしていければと思っていますが、店自体もゆくゆくは路面店にし、より立ち寄りやすい空間にしたいなという夢はあります。とはいえ、私自身は今をとことん楽しみたい方なので、まずは目の前にあることに集中して今できることをしっかりとやっていきたいですね。」
今を楽しむというフレーズが印象的な石丸さんですが、現状に目一杯集中するからこそ、自分らしく楽しんで仕事に取り組めるのだなと感じました。自分流にサロンを運営しながらも女性美容師の将来を考えてシェアスタイルを取り入れるなど、力まずしなやかに次世代の美容師をサポートする姿勢が口コミで多くのゲストを呼び込む秘訣なのではないでしょうか。
Profile
石丸久美子さん
スタイリスト
三重県出身。ご実家が美容室という環境であったにも関わらず当初は美容師を目指すつもりはなかったそう。高校卒業時にすぐに就職するのが嫌で大阪の美容専門学校に進み、周囲の先輩などに恵まれ美容師という仕事の面白さを実感。飲食業や海外一人旅など様々な体験をしつつ、2013年6月に独立し自身のサロンをオープン。
ミュージシャンにも愛される“ゆるり”空間『Maruche』>>
