居心地の良い空間と高い知識と技術が魅力『meguri』
2015年にオープンしたヘアサロン「meguri」。有名ヘアサロンで修業を積んだオーナースタイリスト増野秀幸さんの緩やかな雰囲気が、店全体にも漂う居心地の良い空間です。ヘアケアにおける知識や技術も高く、お客様自身では気が付けなかった新たなスタイルを提案してくれる店です。今回、増野さんへのインタビューで、その魅力の裏側を探ってみたいと思います。
一度業界を離れたことで得たもの
――美容師になられたきっかけは何ですか。
「中学ぐらいから、髪の毛をいじったりするのが好きで、友人に頼まれてカットしたりパーマをかけたりしていました。当時、スケボーをやっていて、その仲間たちは激しいパーマなどをやりたがるので、その方法を自分で調べたりしているのが楽しくて。それで、これを職業にしたいな、と思うようになったのです」
――美容学校を卒業されてからは、どうされていたのですか?
「学校を出てからは、関西で10店舗程度を展開している有名店に就職しました。まあ、職業柄しょうがないのですが、もう仕事以外の時間がないし、このまま死ぬまでずっとこんな感じなのかな、と思ってしまって、3年ぐらいで辞めちゃいました…」
――美容師という職業自体に、意欲がなくなってしまったのでしょうか。
「いえ、決してそういう訳でもないのです。一度、美容の世界から離れてみた方がよいと思った、という感覚です。働くこと自体は楽しかったし、今一緒に働いてくれているスタイリストもその店の同期ですし」
――一度美容の世界を離れたあと、何をされていたのですか?
「まあいろんな事をしていましたね。DJをしていたこともあって、レコードを買うためにいろんな仕事をしました。引越しのスタッフをやったり、車の販売業とか雑貨のEコマースの仕事とか…。これらの経験のおかげで、かなり仕事の要領はよくなったと思います。しかも、僕自身は大した人間ではないのに、僕の周囲には本当によい人たちがいてくれることに気が付くことができました」
――そして再び美容業界に戻られたのですよね。
「やっぱり美容師に戻ろうと、突然思い立って。求人誌を見て探していたらグランドオープンの店があったので、あまり深く調べもしないで電話して(笑)。そのまま面接して採用してもらいました。その店は2店舗あって僕以外全員女性で、従業員は20人弱ぐらい。そういうことも働いてから知りました(笑)。しばらく別世界にいたせいで、最初は他のスタッフともあまり話が合わなかったのですが、結局のところ7年ぐらい働きましたね」
楽しく自由に働ける店を
――独立されるに至った経緯は?
「まあ、働き出した頃から、最後は自分の店を持ちたいという思いがあったのですが、なかなかきっかけがなかった。そんな時、自分の奥さんが『独立したいと思っているならやったらいいやん』と言ってくれていました。ちょうどそんな時に、店長から理不尽なことを言われることもあり、でも僕もハッキリ言うタイプなので衝突することが多かったのです。結局、店長からは『そんなに嫌なら自分の店をやればいいやん』と言われたので、『なら辞める』という流れになって。2~3か月後に辞めることになったので、すぐに店探しなどの準備を始めました。だから辞めて1週間後には店をオープンしていましたね」
――しかし独立するには、それなりに大変なこともあったのではないですか?
「そうですね。その2~3か月は、仕事が終わってから方々に打ち合わせに行って、という毎日でした。見つけた店舗も、元々は会社だったのかな? スケルトンの状態でしたから、お金もかかりました。お金を借りるための算段も大変でしたね」
――どういう店にしたい、というコンセプトはどんなものでしたか?
「特別なことではないのですが、スタッフに対しては自由に楽しく働ける店に。お客様にとっては『幸せやな』って感じてもらえる店にしたいと思っていました。お客様からのご要望を聞くと、欠点を隠したいとおっしゃる方が多い。ここが嫌やから隠してくださいとか、目立たないようにしてくださいと。でも、僕たちプロからすれば、ちょっとしたアイデアを受け入れてくれさえすれば、隠さずにもっと出せるようになるのにって思うこともあるのです。バランスひとつで美しく見せることができるのにな、と。新しい自分を発見出来て、自信を持てるような提案をしていきたい。そんな店にしたいと思ってオープンしました」
――店内はどのようなコンセプトで考えて造られたのでしょう?
「本当は、お店のスペースは正方形がよかったんですよ。『ドラゴンボール』の精神と時の部屋じゃないですけど(笑)。昔、真っ白の四角い空間で暮らしていたことがあって、そこがすごく落ち着いたんです。箱の中にいる感じでイメージが沸いたというか。結局それは難しいということになりましたが、イメージとしてはそんな感じです。あとは壁紙とかは使いたくなくって、木とか鉄とか、ガラスとかシンプルな素材むき出しにしています。まあ、設備を含めて1200万ぐらいかかりましたね」
地下のフロアで個展も
――地下にも空間がありますよね。どのように使われているのですか?
「以前は倉庫として使われていたようですが、ある程度の広さもあるので、アーティストさんの個展をやったりしています。主に絵とイラストですね。使えるならなんでも使いたいんですよね。空間としてもったいないし」
オープンから間もなく3年。オーナースタイリストの増野さんの雰囲気そのままの、いい意味でのユルさが漂うヘアサロン「meguri」。居心地もよく、誰でも気軽に立ち寄れそうなオープンなスタンスが魅力です。後編では、人気を裏打ちする高度な施術や、スタッフの育成法などについても増野さんに語っていただきます。
欠点を隠すのではなくその人らしさに変える『meguri』>>