10年間ほぼ休み0(ゼロ)だったから、今の自分があるんだと思います。
この世に手業を生業にしているサービス業はどれぐらいあるのでしょうか?手一つで人を喜ばせたり、疲れを取ったり、美しくしたり、癒やしたり・・・。これってすごいことですよね。
このコラムは、手業を生業にしている美容からヘルスケアの業界の方々にフォーカスをしたプロフェッショナルインタビューです。その人の手が語る物語をお楽しみいただければ幸いです。
モアリジョブ編集部
私の手にしか、できないシゴト。 内田 圭亮さん
――美容師になったきっかけは?
内田 家に頼れない事情があって、早く家から独立したいなと思っていました。美容師は、年齢関係なく評価される仕事だと思って、17歳から高校と通信で美容師の勉強とヘアメイクアース(以下、アース)の掛け持ちで・・・。とにかく早く独立したかったですね。高校時代は、美容師になるためだけの生活を送っていました。
――仕事を始めたころの気持ちを聞かせてください。
内田 17歳からバイトでアースに入って、20歳でデビューしました。19歳ぐらいまでは、ノリというか美容師ってかっこいいなって思いしかなかったですね。19歳で社内の色々な検定試験を受けて受かって、あともう一つ受かるとデビュー出来るのが見えた時に、美容師を本気でやってみようかなって、スイッチが入りました。
――スイッチが入ってからは?
内田 その時から休みをなくしました。ことわざでもある通りで、3年間まずは休みなしでやってみようと。スケジュールは全て僕の師である直系オーナーの大川の休みに合わせて、彼の行くところ全てについて回って、勉強させてもらいました。
――3年間、休みなしですか?
内田 はい、3年間休みませんでした。20歳でデビューしたころは、成り上がることしか考えていなかったですね(笑)。売上をあげることに必死で。性格なのか、極限に追い込まれることが好きだったので、休まなくても疲れなかったし、大丈夫でした。
――周りの反応はどうでしたか?
内田 周りからは「あいつやばい」って思われていたけど(笑)。若くて、体力だけはあったので、休みがなくても仕事終わりに友達と普通に遊びに行っていました。売上をあげることしか考えていなかったので、仕事がメインの生活でも全然辛くありませんでした。
――美容師になってからの失敗談があれば教えてください。
内田 サロンワークの話じゃないんですけど、数年前のアースの大切な撮影会で失敗をしてしまったことでしょうか。アースのヘア商材を使ってあるスタイルを創る撮影会だったんですけど、全然上手く出来なくて・・・。何度やっても上手く出来ない。仕舞いには、モデルさんのヘアも直すに直せなくなってしまって・・・。最後にはモデルさんを怒らせてしまったんですね。スタイルも上手くいかず、自分のせいで写真も撮れずの撮影会でした。
――どのぐらい前のお話ですか?
内田 2年ぐらい前の話です。撮影会は、クリエイティブチームに所属している人がアースでは行うのですが、僕はこの撮影の後、けじめのためにクリエイティブチームを抜けました。アースで一番重要な撮影会での失敗だったので「一回修行をさせてくれ」と言って、撮影に参加していたメンバー全員に謝って抜けさせてもらいました。それから2年ぐらいは、クリエイティブチームの仕事はやりませんでした。
――24歳でのオーナー就任、とても早い昇進ですよね。
内田 オーナーになる教育を23歳で受けていたのですが、オーナーという仕事自体に疑問を持っていたため、教育を受けることを一度放棄してしまったんですね。オーナーになったら自分の好きなクリエイティブや現場の仕事が出来なくなると思って・・・。
――でも気持ちが変わった。
内田 オーナー教育を放棄してからの1年間、サロンの外に出て色々なオーナーの方々と関わって、概念が変わりました。オーナーになってもプレイヤーとして活躍できることを教えてもらいました。そこからは、気持ちを切りかえて、高い目標を持って自分の数字、お店の数字、人材育成を頑張り結果に繋げました。それがきっかけで、24歳でオーナーになる事が出来ました。
――オーナーになってからはどうでしたか?
内田 2年間はとても順調でした。川崎にあるクロスガーデンのお店も、アース数百店舗中、全国1位の利益をあげていたので余裕でした。ただし、3期、4期目に入ると経営が苦しくなり・・・。赤字にするのは自分のプライドが許さなかったので、自分の給料を全てお店に入れて赤字を補填していました。その時の手取りは9,000円で、日々のやりくりは貯金を切り崩していました。スタッフにはもちろん内緒にして、苦しい時期を乗り越えました。
――アースに入社されてから思い出に残っているお客様は?
内田 今も来店してくれるお客様なのですが、デビュー前の自分を指名してカットさせてくれたんですよ。あの当時、担当した全てのお客様に名刺の裏のメモ欄に似顔絵を縮小して貼って一言書いて渡していたんですね。そのお客様には、カットが上手でも何でもなかったのに「次回も宜しくお願いいたします。」って書いて渡したんですよ。そうしたら「君面白いね。」って。僕の変な自信を面白がってくれて・・・。それから店舗が変わっても、いつも指名していただいて。今では奥様も僕のお客様なんです。ご家族でお店に通っていただいて、本当に感謝しています。
――今まで美容師を辞めたいと思った事は?
内田 今まで何かを辞めたことがないんですよね。「やる!」って決めてから物事をはじめるタイプなので・・・。だから美容師を辞めようと思った事はありません。
――嫌な思いや辛いことなどなかったのですか?
内田 もちろんありました。色々な壁があって、悔しい思いも沢山しました。でも、その思いがあったからこそ辞めたくない、続けてこの土俵(美容師)で見返したいという思いしかありませんでした。怒られれば怒られるほど、辞めたくないと思ってしまうんですね。頑張ってしまうんですね。ドMでありドSだからかな(笑)。
――毎日走り続けている感じですが、モチベーションの維持が大変では?
内田 若い頃はがむしゃらで、モチベーションを考えることもなかったですね。経営者になってからは、スタッフの人生をも背負っているので、お店を上手くまわすために、スタッフのモチベーションは重要だと思っています。今は、スタッフのモチベーションを上げるために、自分が進み続けてスタッフを巻き込めるように心がけています。
――内田さんにとっての恩師は?
内田 自分がアルバイトで入ったお店のオーナーで、現在も自分の直系オーナーの大川が僕の師でしょうか・・・。大川がいたから、今の僕がいると心から思っています。オーナーになった今でも、大川の背中を追いかけて、経営者としての差を感じる毎日を過ごしています。目指す方向やタイプは違いますが、経営者としては本当に尊敬しています。
――プライベートほぼ0の内田さんですが、今はお休みは取られていますか?
内田 29歳になるまでの10年間は、ほぼプライベート0でした。休みは年末年始の1日ぐらいでしたね。プライベート0で過ごした10年目の区切りと結婚を機に、今は毎週木曜日をオフにしています。オフには美容学校の講師をやったり、妻と時間を合わせて出かけたりと、充実した休日を過ごしています。今まではアクセル全開で休みと言うブレーキを踏めなかったのですが、今は妻がブレーキ役になってくれているので、身体と頭のバランスを整える日をちゃんと作れるようになりました。
――10年間もプライベートほぼ0ってすごいですよね。
内田 スタッフの子によく聞かれるのが「何で休み無く出来るんですか?」と。僕は、今の休みを後にとっているだけなんですね。もう少し年齢を重ねていったら、今よりももっと休みを取ろうと思っていますし・・・。最終的には、美容師が好きで美容師をやっているので、クリエイティブの作品をもっとやりたいなと思います。もちろん、お客様も週に1・2回ぐらいはと考えています。
――最後に、業界や美容師を目指している方に一言。
内田 僕は高校生の時から通信制で美容の勉強をしてきました。高校生でも普通に美容師を目指せることを知ってもらいたいと思います。
美容師は大変、給料が低い、長時間労働などまだまだ働き方改革に準じるには遠いかもしれませんが、近い将来美容師を増やしていく上で、この問題は改善していかないといけないと思っています。まずは、自分のサロン、会社で率先して、魅力ある業界になれるよう頑張りたいと思います。
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