技術よりも感性。常に新しいことを提案する美容室『SAIKA』
『SAIKA』は渋谷の中心部のすぐ近く、松濤の閑静な住宅街のなかに佇む美容室です。店内は、モダンインテリアのシンプルなデザインになっており、いたるところにCDや写真集、本が並び、ロックな雰囲気が漂います。そんな『SAIKA』のディレクターが齋藤嘉弘さん。幼少期より芸術、文学、音楽など幅広く知識をもっており、芸術や文化的な事に造詣が深いお客さまが足を運びます。今回は、そんな文化人を魅了する美容室『SAIKA』をご紹介。後編では独立後の活動や、現在の若手美容師について思うことなどについて伺いました。
一般人をモデルに起用。ヘアメイク、写真、文章全てを手がけた連載ページ
――『SAIKA』をオープンした頃、印象に残っていることはありますか?
「1993年に『SAIKA』をオープンした頃の美容業界は、技術教則本的な業界誌がほとんどでした。しかし、私はこれからの時代の美容師はもっと感受性を磨くべきだと考えていたんです。そこで、すべての美容業界誌に、これからの美容師の方向性について書いた手紙を送り、そのうちの3社で連載ページを持つことができました」
――どのようなページを作ったのでしょうか?
「ヘアスタイルの技術をみせたかったのではなく、私の世界観をページまるごと見せたかったので、ヘアメイク、撮影、テキスト、ページの構成デザインまで、すべて手がけました。モデルさんも当時はプロを使う事があたりまえだった時代に一般の学生やモデルさんを起用したんです。要するに、今で言うインスタグラムに自分で撮影して載せるような事ですね。モデルで起用した一般の方はその後、プロのモデルさんにスカウトされた方も多くいました」
今の20代、30代の美容師は感性がするどい
――ちなみに流行りに対しては、どのように考えていますか?
「いつの時代もカルチャーはありますから、なんの否定もありません。しかし、10年後、20年後に自分の当時の写真を見た時でも色褪せていないものが美しいと考えているので、流行よりもその人の魅力が現れている可愛いヘアスタイルやカッコイイスタイルを作ることが大切だと思います」
――それでは今の若手の美容師について、どのように思いますか?
「現在の若手の美容師は自分たちの時代の美容師よりもはるかにお洒落とはなにかを熟知しています。というのは、私たちの時代はPCやスマホがありませんでしたが、今の若い美容師さんは情報がなんでもはいる時代です。カッコいいとかおしゃれなことを、敏感に察知する力が備わっているので、必要な技術をとことん追求して学んで欲しいと思ってます。ちなみに私は、時代にあった必要な技術だけを身につければいいと思うんです。カーラーで巻く技術や、必要のないブローテクニックなど、今では必要とされない技術はいくらでもありますから。また今の時代の美容師は、昔よりチャンスが多いんです。国家資格を取得しても美容師にならない人がほとんどなので、美容師として続けられた方はきっと10年後、20年後に素敵な人生を歩んでいると思っています」
技術は後から磨けばいい
――最後に、美容師にとって一番大切なことはなんでしょうか?
「好奇心です。音楽も絵画も料理にしても、あらゆる事にジャンルがあります。ヘアスタイルをつくるうえで、お客さまのそれぞれのジャンルを知らなければ本当の意味で満足ができるスタイルは作れません。『エレガントってなに?』『フェミニンってなんのこと?』など、好奇心をもって色々な事に興味を持つことが大切ではないかと考えます。あらゆることを掘り下げて身につけることはとても楽しいことですから、生涯現役で美容師を続けるためには、探究心と好奇心を持ち続けることが大切ですね」
「常連のお客さまを同じヘアスタイルにカットすることはない」と言う齋藤さん。その方の生活スタイルや、好きな音楽、好きな服装は少しずつ変化しているので、その時の雰囲気にあったスタイルを提案しているからだそうです。新しいヘアスタイルに挑戦したい方、感性を刺激されたい方は、ぜひ「SAIKA」に足を運んでみてください。
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