きつい状況にならないと、本当の力は発揮できない 私の履歴書 Vol.4【Hair&Make EARTH 川上裕樹】#1
全国に約230店舗以上のサロンを構える『HAIR&MAKE EARTH』。人気と実力を兼ね備えた有名店には、高い技術を持った美容師が集います。そんな『EARTH』において、若干24歳で上野店の店長にのぼりつめたのが川上裕樹さん。現在は、上野店をはじめ四ツ谷店など3店舗のオーナーとして活躍中です。今回は、川上さんが美容師に興味を持ったきっかけからスタイリストデビューまでの道のりに迫ります。
川上裕樹 PROFILE
幼少期〜専門学校時代
“できる自分”を想像し続けて
–まずは、川上さんが美容業界に興味を持った経緯を教えてください。
14歳の頃に、おしゃれに興味を持ったことがきっかけです。当時通っていた理容室に、イメージ写真を見せたところ「理容店ではできない」と言われ、そこで美容室に興味を持ちました。ちなみに、その頃からとにかく洋服が好きでひとりで飛行機に乗って原宿に来ていたんです。高校生になるとツイストパーマをかけて、学校で注意を受けたときは「地毛です」とウソをついて(笑)。服装は『ジャン=ポール・ゴルチエ』や『DOLCE&GABBANA』などを身に付けていたので、地元の鹿児島では浮いていたと思います。物足りなさを感じることが増えて、東京への憧れが日に日に強くなっていきました。
–本格的に美容師を志したのはいつ頃でしょうか?
高校を卒業する頃で両親からは反対されました。ともに教師で、大学に行くように散々言われたんです。それでも、誰にも文句を言われずに、おしゃれをして働けるかっこいい仕事を考えたときに、美容師しか思いつきませんでした。そこで、美容学校への進学を決めたんです。
–美容学校時代について教えてください。
うまくいかないことも度々ありましたが、落ち込むことはありませんでした。というのは、当時から「できる自分を想像すること」を心がけていたからです。言い換えると「できるふり」をしていました。今振り返ってみても、この心構えは美容師にとってとても大切だと思います。難しそうにカットをしていたら、お客さまは不快に感じるので、プロとしてある程度は演技をしていなければなりません。また「できない」と思いながら仕事をしていると、うまくいかなかった時に「やっぱりダメだった」と落ち込みますが、「できる」と思いながら仕事をしていると、うまくいかなくても「何が悪かったのか?」と自然と前向きな気持ちになります。自分を少し大きく見せてできる美容師を演じることは、成長に繋がるんです。
アシスタント時代〜スタイリスデビューに至るまで
ちょっとした心遣いが僕の接客の原点です
-なぜ『EARTH』への入社を決めたのでしょうか?
一番将来性を感じたからです。僕が面接を受けた時に『EARTH』は15店舗ほどでしたが、ある求人情報誌を読んだ時に、飛びぬけてスピード感を感じたというか伸び盛りな雰囲気を受けました。その頃に、高円寺店や五反田店などが続々とオープンしていたんです。僕は、東京で働くからには自分のスタイルを作って売れたいとしか考えていませんでしたから、すでに確立されている有名店にはそれほど興味がありませんでした。
-美容師として働き始めた当初に感じたことを教えてください。
めちゃくちゃ大変でした(笑)。お店の活気が凄まじかったですから。入社した当時の上野店は、1ヵ月で3,000万円くらい売り上げていて、スタッフは62名もいたんです。お客さまを合わせて、常にお店のなかだけで100名を超える人がいましたから人酔いしましたね。地方から出てきたばかりで、そんなに大人数のなかで過ごしたことがなかったので。
-アシスタント時代に辛かった出来事はありましたか?
「目の前の仕事をいかに改善するか」だけを考えていたので、サロンワークで辛いと思ったことはほとんどありません。当たり前のことですが、アシスタントは,シャンプーやブローなど、同時にさまざまな仕事を複数人のお客さまに対して行う必要があります。1年目の時はアシスタントリーダーを任されていて、同期に仕事を振り分けながら、自分ができる最大限の仕事を目指していました。ちなみに、60名ほどのお客さまがいた時に、気が付いたら30名を担当していたことがあって、その時はさすがに大変でした(笑)。当時の経験は、スタイリストになってからとても活きて、一気に入客があっても冷静に対応するノウハウはその頃に身に付いたと思います。
-アシスタント時代のサロンワークについて具体的に教えてください。
常にタイマーを持って仕事をしていますから、まずは冷静に、それぞれの仕事を何分でできるかを考えます。パーマの中和だったら1分、トリートメントの流しは3分、マッサージは5分、シャンプーは10分など、それを分析して秒刻みで仕事を組み立てていくんです。たとえば、30名中パーマの対応が8名だとします。まず、パーマの中和はすべて僕がやろうと。だいたい1分でできるから、10分あればすべてのお客さまに対応できる。それが終わったら、すべてのお客さまのターバンを変えて、他のアシスタントの様子をチェックしながら次の仕事を考えます。スムーズにサロンワークを行うためには、ある程度流れ作業が必要になりますが、お客さまには流れ作業だと思われてはいけません。とくに待っている時間が長いと、雑に扱われていると感じられてしまいますから、少しでもいいので声をかけることが大切です。目の前のお客さまにパーマ液をかけながら、直前に施術をした隣のお客さまに「沁みてないですか?」「垂れてないですか?」とお声がけすると、お客さまも「大丈夫です」と返してくれます。今振り返ってみると、そんなちょっとした心遣いが僕の接客の原点ですね。その後、入社から2年2ヵ月後にスタイリストデビューしました。
「きつい状況にならないと、本当の力は発揮できない」と語った川上さん。自分を追い込み成長してきた姿が印象的でした。次回は、スタイリスデビューから現在に至るまでの経緯について伺います。
取材・文/松本俊朔(エフェクト)
撮影/佐藤潮
Salon Data
HAIR&MAKE EARTH 上野店(ヘアーアンドメイク アース ウエノテン)
住所:東京都台東区上野2-12-18 池之端ヒロハイツ1F
TEL:03-3834-3512
営業時間:平日、土/10:00~20:00 日祝/9:30~18:00
定休日:不定休
https://hairmake-earth.com/salon/salon-116/
インスタグラム
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