「三方良し」が信条。みんなが喜ぶことが自分の幸せにつながる【Aura omotesando 梅村尚輝さん】#2

美容師の梅村尚輝さんが率いる「Aura omotesando」は、表参道駅にほど近い閑静な住宅街にあり、「自分に似合うヘア」を求める女性が数多く訪れる人気サロン。新時代の働き方や効率の良い教育方法を取り入れ、若い力が躍動する環境作りをしているのも特徴です。

後編では、梅村さんが大切にしている「三方良し」のお話や、夢だった独立出店を果たした今の心境、今後の展望などを語っていただきました。

お話を伺ったのは…

Aura omotesando

代表・美容師 梅村尚輝さん

美容学校卒業後、2015年にアンアミ表参道店に入社。2019年7月にスタイリストデビューし、同店で副店長、店長を経験。フリーランス期間を経て、2025年4月に「Aura omotesando」をオープン。特に顔まわりのカットにこだわりがあり、「“おまかせ”でも必ず似合うヘアスタイルにしてくれる」と、お客様からの信頼も厚い。

Instagram:@umecchi7

お客様、スタッフ、取引先の「三方良し」を大切に

働くスタッフにとってもお客様にとっても「一番幸せになれる場所」でありたい。そんな思いが込められたサロン。

――サロンの場所の決め手となったのは何でしたか。

まずは駅から近いこと、駅からサロンへの道があまり騒がしくないこと、そして建物の雰囲気を重視して物件を探しました。ここはたまたま新築物件だったのですが、ほかの人が内見に来る前にとにかく早くオーナーさんとお会いして、契約させていただきました。

――空間作りのこだわりはどこですか。

店内の雰囲気は若すぎず大人すぎず、幅広い年齢層の方に居心地よく感じてもらえるように考えました。照明にもこだわっています。セット面はカラーがきれいに見える白系の光にして、シャンプー台の方はリラックスできる暖色系の光にしています。

――お店の理念を教えてください。

よく「Win-Win」って言いますけど、僕は「三方良し」という言葉がとても好きなんです。お客様もスタッフも取引先も幸せという関係が大事で、どこかが負担を負っていたらダメだなと思っています。

――「三方良し」のために実践していることをお聞きしたいです。まず、「お客様に良し」のためには?

僕はいろいろな美容室の口コミをヒントにしているんですが、特にマイナス意見に注目します。なぜなら、そこにお客様の本音が見えるからです。「これが嫌なんだ」と気づいた部分を「じゃあ、こうしよう」とひとつひとつ対策して、自分たちのサロンに取り入れています。

例えば「予約時間に行ったのに待たされた」という口コミって、わりと見かけると思います。そこで、待ち時間をなるべく少なくする工夫をしました。あえて待合スペースを最低限にして、すぐに席に案内して飲み物をお出ししたり、予約の受け方自体を欲張りすぎずに少しゆとりを持たせたり。

――2つ目の「スタッフに良し」に関してはいかがでしょうか。

いろいろありますが、「僕が一スタッフとして働くならどういうサロンがいいか」をベースに考えました。フリーランスを経験した時に、時間の自由度をすごく感じたんですよ。だから正社員とフリーランスのいいとこ取りにしました。正社員雇用だけど、時間は自由。自分のお客様の予約状況に合わせて、午後から出勤してもいいし、早く退勤してもいい。

やっぱり美容師の課題は長時間労働・低賃金だと思うんです。個室を作った理由もそこにあります。もちろん個室を好むお客様がいるというのもありますが、営業中に練習する場所としても使えるからです。営業後に先輩に指導をお願いするのではなく、手が空いたタイミングでできれば、教える側も学ぶ側も早く帰れますよね。

――その分、プライベートも充実させられますね。

そうなんです。スタッフには、美容師だけをしてほしくない。早く帰って彼氏や彼女に会ってほしいし、家族との時間を作ってほしいし、趣味の時間も楽しんでほしい。仕事もプライベートも両方大事にできれば、トータルで幸せじゃないですか。

――3つ目の「取引先に良し」についてもお願いします。

スタッフが気に入って使いたい商材を2つの美容ディーラーさんから仕入れているのですが、取引が均等になるように調整しています。どちらかを贔屓したくないというか、なるべく公平にしたいと思っているんです。

技術やSNS集客を効率良く学べるしくみ作り

「Aura omotesando」のオープニングスタッフは14人。「一緒に働いたことがあるメンバーなので安心感がありました。本当に僕は恵まれています」と梅村さん。

――サービスやメニューに関するこだわりを教えてください。

「ReFa ULTRA FINE BUBBLE VEENA」や、肌が荒れやすい方のための後処理ケア、ヘッドスパ、髪質改善トリートメントなど、頭皮と髪のケアメニューを充実させています。

加えて僕が意識したのは、単価アップのためのメニューを積極的には勧めないことです。例えば「普通のカラーから1000円アップで髪質改善カラーにしませんか」とか。人によって感じ方はさまざまだと思いますが、あれこれ追加メニューを勧められるのが苦手な方もいらっしゃいますよね。だから、初めからいい薬剤をデフォルトで使うメニュー設定にしました。予約時に納得してメニューを選んでもらっているので、そこから料金が変わらなければ不信感もないと思います。

――アシスタントさんの教育に取り入れていることは?

技術指導を動画に残すようにしています。一度教えるだけでは疑問が出るし、後輩から先輩に聞き直しづらいこともありますよね。動画にしておけばいつでもどこでも確認できます。

動画は技術がよく見えるように、切る目線の位置にカメラをつけて、説明しながら撮影します。カリキュラムごとに動画を作り、テスト前に見ておいてもらい、それから実際にウィッグを切って、それを見てさらにアドバイスをして…という感じです。

――なるほど。動画を活用した予習・実践・復習で技術向上を図っているんですね。

あとは、ウィッグの練習だけではカバーできないこともあるので、サロンワーク中にライブ形式で教えることもあります。仲のいいお客様に協力してもらい、リアルに髪を切りながら技術解説をするんです。若手が勉強できるだけでなく、お客様も「こんなにこだわって切ってるんだ、すごいね」と喜んでくれるので、僕も嬉しいんですよ。

――新規の集客はどのようにされていますか。

集客サイトも利用していますが、ほぼ個人個人のインスタグラムによる集客がメインです。なので、いらっしゃるお客様も美容師によってそれぞれタイプが違います。

――インスタ集客のコツもサロンで教えるのでしょうか。

はい。サロン内でもやりますし、先日SNSに強い外部の人を講師として招いてレクチャーしてもらいました。講習会のあとに一緒に食事に行って、もっと砕いた話を聞けたのも良かったです。インスタグラムは本当に競争が激しい市場なので、何とか差別化しないと難しいんです。

スタイリストはフォロワー1万人を超える人もいますし、アシスタントもリール動画を頑張って作って、リーチがぶわっと伸びてきているので、講習会の成果はしっかり出ていると感じます。

――夢だった自分のサロンを出して約3ヶ月(取材時)。今の心境は?

3ヶ月が一瞬のように感じるほど、あっという間でした。すごく楽しいですし、スタッフの人数が多いのでいろいろなことを分担でき、だいぶ助かっていますね。

――何が一番楽しいですか。

人が喜ぶのが大好きなので、お客様が喜ぶのはもちろん、スタッフが生き生きしているのを見るのも楽しい。後輩たちがみんな可愛いので、もう親目線になっています(笑)。ただし、締めるところはビシッとやりますよ。ダメなものはダメと目の前ではっきり言うタイプです、僕は。

僕にとって、働くことは「喜ばせ合戦」

2店舗目も美容室激戦区の表参道を検討中だという梅村さん。「競合が多いからこそ、僕は燃えるんです!」と朗らかに宣言。

――サロンを率いる代表として、理想はありますか。

人が集まり、人が離れず、どんどん大きくなるのが理想です。とはいえ、超スピード展開は求めていないです。人が増えて手狭になって、みんなが自然と「次の店舗を出さないと!」と思えるのがいいですね。スタッフ一丸となって頑張れるサロンでありたいです。

――一丸となるために意識していることはありますか。

常にみんなの立場に立つことかもしれません。美容師1年目から8年目までいろいろなスタッフがいますが、今何が課題なのか、何が不安なのか、本当に働きやすいと思っているか…そういうところをよく見るようにしています。

こまめにコミュニケーションを取ることで、スタッフも臆さず意見を言ってくれます。何か提案されたら、「明日からやろう!」ってすぐ行動に移しますね。やってみて、ダメだったら戻せばいいというのが僕らのモットーなので。

――スタッフのやりたいことが、お店の方針と合わないこともあるのでは?

「常に三方良しができているかを基準に考える」というのが、全員の共通認識としてあります。だからスタッフがやりたいことでも、もしお客様にとって微妙なことだったらやらない。それはみんな理解していると思います。

――では、梅村さんが一人の美容師として大切にしていることは何ですか。

人の感情を動かすことですかね。きれいに髪を切って帰すだけではなくて、お客様の心が動いているかなというのを意識しています。

リピーターのお客様こそ、毎回ちゃんと心を揺さぶるようにしたい。店が変わっても僕についてきてくれるなんて、めちゃくちゃ嬉しいことです。僕を信頼してくれるお客様の期待を毎回裏切らないことが、大切なんだと実感しています。

――1年後とか3年後とか、近い未来に叶えたいことは何でしょう。

来年の秋頃に2店舗目の出店を予定しています。その時は内装からスタッフにまかせようと思っています。自分たちの好きな内装にできるなんて、絶対楽しいと思うので。今のところ表参道エリアで考えていて、年が明けたら早速、物件を探し始めるつもりです。

――楽しみですね!最後に、梅村さんにとって働くということは?

人を喜ばせることでお金をいただいているので、「喜ばせ合戦」かな。誰かが働くことで、誰かの役に立っている。接客業じゃなくても要は人対人だから、喜ばせたもの勝ちだと思いますね。働くって、楽しいですよね。働きたくないと思っている人がいるとしたら、本当にもったいないです。

梅村さん流、夢を叶える3つの秘訣

1.「三方良し」を忘れない

2.まずは人に与える

3.習慣にする

撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子


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Aura omotesando
住所:東京都渋谷区神宮前3-2-19 メゼリテ表参道 1F
TEL:03-4400-7643

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