わずか4年で全国に84店舗を出店! リピート率90%以上を誇る『Dears』の経営術に迫る
2015年の5月、長野県長野市に1号店をオープンした美容室『Dears』。顧客のリピート率90%以上という驚異的な成果を上げ、現時点で全国32都道府県に86店舗を展開中。年内には100店舗出店も視野に入れており驚きのスピードで拡大を続けています。そんな『Dears』が成功した背景には、新規・リピーターの双方を獲得しやすいコンセプト設定と、データに基づいた緻密な戦略がありました。
今回は代表の北原孝彦さんに全国展開を成し遂げた経営術について伺いました。
ツヤ髪の需要がなくなる可能性は限りなくゼロに近い
————北原さんは『Dears』がこれほどまでに成長を続ける理由はどこにあるとお考えですか?
「成功の要因のひとつは、確実にニーズがある『美髪』というコンセプト設定にあると思います。美容室にはカラーに強い、パーマが得意、ショート専門など、さまざまな打ち出し方があり、どれも魅力的ではありますが、長年サロンを維持するためには、お客さまが求め続ける突出したコンセプトの設定が大切。もしかしたら、将来はカラーやパーマをしないほうがきれいといわれる時代が来るかもしれません。しかしツヤ髪の需要がなくなる可能性は限りなくゼロに近いと思います。なぜなら江戸時代から女性は美しい髪を求めており、今も多くの女性が憧れを持っていますから。つまり美髪を前面に出すことで今後もニーズがあり続ける美容室になると考えています」
トリートメントはダイエットに近い
————コンセプトを設定したら、次にどのようなことに取り組めばよいのでしょうか?
「スタッフにお店のスタイルを理解してもらうことが大切です。美容室のオーナーの話を聞くと、多くの方が『自由な働き方』の意味を勘違いしています。『ネイルをやりたい』と言ったスタッフのために、それを取り入れることが自由といった感じです。すると他のスタッフの『まつエクをやりたい』という言葉も聞き入れなければなりません。結果、お店の方向性がバラバラになり、どんなコンセプトのサロンかわからなくなります。スタッフの声を聞くことが悪いと言っているわけではなく、大切なことはその要望の根拠を深く考えることです。たとえば『美髪というサロンのコンセプトと合っているか。ネイルを取り入れたらどんな効果があり、どのくらいの成果が上がるのか』までを理解しなければ、実施するべきではありません。『Dears』ではカウンセリング、接客スタイル、施術の手順、使用する商材など、すべてに経営側で決めたルールがあります。こう聞くと堅苦しいイメージがありますが、それさえ守っていればあとは自由なんです。残業はありませんし、急なキャンセルで隙間時間ができたら外出してランチや夕飯の買い出しをするスタッフもいます」
————リピート率が高い要因については、どのようにお考えでしょうか?
「こちらも髪のケアをウリにしているのが、関係していると考えています。私は、トリートメントはダイエットに近いと感じていて、わかりやすくたとえると『1回だけライザップに行こう』と考えて足を運ぶ人はほとんどいないと思います。同様に『Dears』のお客さまも、『これからきれいな髪を手に入れるために通おう』という気持ちでご来店いただく方がほとんど。そのため、多くの方がお帰りの際には次回予約を取ってからお店を後にされます。また新規の方に、無料でヘアケアセットをプレゼントしていることも高いリピート率を誇る要因だと思います」
初回の無料プレゼントが生み出す莫大なリターン
————初回プレゼントではどのようなセットをお渡ししているのでしょうか?
「シャンプー、トリートメント、ボディソープ、ケアジュレ、オイルの5種類のセットをお渡ししています。割引ではなくプレゼントにする理由のひとつは、売り込みは失客につながる可能性があるからです。もし、必要がないお客さまに無理やり売ってしまったら『販売が強引だった』というクレームにつながるかもしれません。またスタッフ間で揉め事が起こる可能性が高いので、あえて店販手当を導入していません。たとえば初回に担当したスタッフが、自社のシャンプーを丁寧に説明したとします。しかしその時は、お客さまは購入せず2度目の来店時、別のスタイリストが担当した際にシャンプーを買った場合。歩合は2度目のスタッフに入りますが、実はそのスタッフはシャンプーの説明をしていないこともあります。すると初回に担当したスタイリストが残念ですよね。スタッフ間での摩擦を減らす努力をすることも、サロン全体の成果を伸ばすためには大切なことです。ちなみに『Dears』のオリジナル商品は通販でも販売しており月に3,000万円ほどを売り上げています。初回のプレゼントで納得した方が購入してくれるので、今でも毎月100万円ずつ確実に伸びていますね。ちなみに通販は利益を生むだけでなく、さまざまな活用方法があるのでおすすめです」
————その活用法について教えてください。
「店舗出店の場所を決める際に、とても役に立ちます。サイトでは購入時に商品発送のために住所を入力していただいているので、データからどの地域の方がより多く商品を購入しているかがわかるんです。つまり、集客を見込めるエリアを知ることができます。商品は店頭のほうが価格を安く設定しているので、お客さまはサロンに足を運んだほうがお得です。要するに、その場所では初月からある程度の集客を期待できるんです」
全国からリピーターを獲得するための極意
緻密なデータ分析により、爆発的な成長を遂げている『Dears』。全国展開を成功させるための極意をまとめると下記の3つでした。
1.確実なニーズがあり、リピーターを獲得しやすいコンセプトを掲げる
2.失客につながるような強引な売り込みをしない
3.データに基づいて出店場所を決める
後編ではサロン経営を成功させるために、大切なことを伺いました。
▽後編はこちら▽
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