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コラム・特集 2019-10-05

僕のカットは僕の人生あってこそ 私の履歴書Vol.16【美容師・川畑タケル】#1

これまで、数多くの有名モデルのヘアスタイルをつくり上げてきたBEAUTRIUM(ビュートリアム)・川畑タケルさん。美容業界のみならず、ファッション業界においても圧倒的な影響力を持って最前線に立ち続けてきました。現在は、都心の喧騒とは無縁の鎌倉市七里ヶ浜の店舗でアートディレクターを務めていらっしゃいます。前編では、幼少期から美容師として働きはじめるまでのお話を伺いました。スタンダードではない選択をし続けてきた川畑さんは、日本のヘアスタイルの概念をくつがえしたと語ります。

KAWABATA’S PROFILE

幼少時代~インターン時代

サーフィンをやるためにインターンを辞めました

――幼少時代はどんなお子さんでしたか?

うちは転勤族だったんですよ。2~3年に一度くらい引越しをしていたので、色々なところに住んできましたね。それこそ北海道から大阪まで。でも、あちこちに行けるのは楽しくて、自分は全然苦ではなかったです。住めば都ですよ。

――適応力の高いお子さんだったんですね。

人見知りもしないし、知らないところに行ってもすぐに仲良くなれちゃう子でした。あと、転校生って目立つでしょ?「この転校生つまらないな」と思われるのが嫌だったし、転校生は新しい風を吹かせなきゃいけないと思っていたんです。だから、色々なネタやスキルを持つようにしていたんですよ。それで、みんな面白がってすぐに友達ができるんです。そういう調子の良さが美容師に向いていたのかもしれないですね。

――もともとおしゃれや美容には興味があったのですか?

ありました! 洋服が好きでしたね。色落ちしたジーパンをかっこ良く穿いている大人がいて、「何で色落ちしていてもカッコ良いままなんだろう?」ってずっと感じていたんですが、小学2年生くらいのときにその理由を見つけたんですよ。それで、僕も真似してジーパンとGジャンを毎日着るようになったんです。そうしたら、学校の先生に「毎日着てたら汚いでしょ!」って怒られちゃって(笑)。きちんと洗って着ていたし、自分はこれしか着たくない!って反発していました。

――おしゃれはどこから影響を受けていたのですか?

僕は映画が大好きだったんです。とくに洋画が好きで、小学生の頃は、学校から帰宅すると色々な洋画をやっていたから、もう毎日観ていたんですよ。そこから影響を受けたんですかね。

――ヘアスタイルへの興味はいつ頃から生まれたのですか?

中学生くらいの頃からですね。テクノカットが流行ったときは自分もやりましたよ。自分では覚えていないのですが、子どもの頃から理髪店とかで髪を切ってもらうのが好きだったみたいです。

――美容師になろうと思われたきっかけは何だったのですか?

高校の修学旅行のときにパーマをかけに行ったんですが、担当してくれた美容師のお兄さんが「美容師って面白いよ~」という話を聞かせてくれたんですよ。ちょうどその時間に木漏れ日が入って、店内は陽の光でオレンジ色に照らされてすごく綺麗で…。お客さんは僕以外に誰もいなくて、お兄さんはずっと美容師について語っているんですよ。そのとき、ふと「美容師って面白いかもな」と思ったんです。

――美容学校での生活はいかがでしたか?

とにかく不真面目でしたね(笑)。授業はきちんと出ていましたけど、卒業できたのはクラス委員をやっていたおかげだと思います。当時の美容学校はまだ一年制で、卒業したあとはインターンをやるんです。でも、実は僕、インターンを3・4ヶ月で辞めちゃったんですよ。

――インターンを辞めてしまったのは何故ですか?

お店が平塚にあって海が近かったので、出勤前にサーフィンをしていたんですよ。それで、波が良い日はそのまま仕事を休んじゃうんです。すごく不真面目だったんですよね(笑)。

――ちなみにインターンを休みがちだったのは仕事内容?それとも人間関係が原因ですか?

いや、職場で嫌なことがあったわけではないんです。今思うと、どういう美容師になりたいかというビジョンがはっきりしていなかったんですよ。本当は、美容師においてもライフスタイルにおいても、自分自身のことをもっと知った上でお店を選ばなければいけなかったんです。

――自己分析は大事ですよね。

自分のときも「自己分析」の風潮があれば良かったんだけどね~。バブルの時代の頃はそんなことまで考えず、とりあえず就職先を決めておけば良かったんだから。僕も、実際に美容室で働きはじめてみたけれど、全くファッション性もないし、ビラ配りなんかをしていて「何やってるんだろう?」って。そんな風に思って働いているんだったら、毎日サーフィンをしていた方がいいやと思ってお店を辞めたんです。

――すごい!そこまで振り切れる人は最近では中々いないと思います。

だってサーフィンがしたくて仕方がないんだもん。インターンを辞めたあとは、5年くらいサーフィンだけをして過ごしていました。でも、生活費は稼がなければいけなかったので、波がない日は山に行って色々なところでアルバイトしていましたね。月に15日くらい働くとだいぶお金が貯まるんですよ。まあバブルの時代だったからかもしれませんね。

美容師への復帰~

ヘア企画にロケーション撮影を取り入れたのは僕が初めて

――どうして美容の道に戻ろうと思われたのですか?

5年間遊びすぎたんですよ。毎年、冬になると海に誰も来なくなって寂しくなるんですよね。「また今年も終わってしまう…自分はずっとここにいて良いのかな?」って思うわけですよ。このままではやばい!と、働こうと奮起するんですが、何の仕事をしたらいいのか思い浮かばないんです。それで、せっかく親にお金を出してもらって美容学校を出たのだから、もう一度美容師をやってみようかなと思って。ただ、東京にいると友達が多く、海にもすぐに行けちゃうから、思い切って大阪に引っ越したんです。大阪だったら友達はいないし、サーフィンができる海もないので。そうやって仕事せざるを得ない環境に自分を追い込んだんですよ。と言っても、それでも週に2回はサーフィンに行っていましたけど(笑)。その後、東京に戻っては来ましたが、美容師としての芯はしっかり出来ていました。

――美容師をやっていて苦しかったことはありますか?

自分はカットが上手い方だと思っていたんですよ。だから、本当は雑誌の仕事をやりたかったんだけど、その当時、BEAUTRIUMは無名だったんです。他に大手のサロンがいくつもあったので、自分が入れる枠がなかったんですよ。すごく悔しくて地団駄踏みましたね。

――どのようにして雑誌に出られたのですか?

たまたま友達が有名ファッション雑誌で働いていたので、「モデルの髪の毛やらせて」って頼み込んだんです。最初に任されたのはとても“小っちゃな”カットだったんだけど、読者アンケートで「あの“小っちゃな”カットの髪型が面白い!可愛い!」という感じで人気が出て。そうしたら、次は半ページ、その次は1ページ、見開きのページ、ついには中綴じになったんですよ。ヘア企画を組むと、その号の売り上げ部数が倍になるんです。そのくらい反響があったんですよ。

――ファッション雑誌のヘア企画で、川畑さんは地位を確立したのですね。

ヘアカタログをファッション雑誌に取り入れたのは僕だからね。当時は、ファッション雑誌にヘア企画は少なかったんですよ。実は、僕は髪型しか扱わないヘアカタログには載りたくなくて。ファッションやライフスタイルを載せているような一般誌に出たかったんです。ちなみに、その当時のヘア企画って、撮影するのはヘアのみだったし、ロケーション撮影はやっていなかったんですよ。でも、僕はロケーション撮影をやりたいと編集部に提案したんです。ヘアスタイルって本来は天気とか風とかで左右されるものでしょ? 僕はロケーション撮影でそういう要素を取り入れて表現したかったんです。僕は、美容師さんの世界をちょっとだけ広げられたんじゃないかな。

――小さいカットにも関わらず、読者アンケートで人気が出たのは何故なのでしょう?

僕のカットは他とは違っていたんです。日本人って昔から動かない髪型だったんですよ。髪は硬いし、バツっと切ったワンレングスが多くて。「どうして欧米人みたいにサラサラッと風で動かないんだろう?」と思ったんです。そこで、動きが出るように切ったのがスライドカットだったんですよ。見た目もそれまでの日本人のヘアスタイルとは全然違ったんです。そして、「このヘアスタイルは何かが違う!」と気づく女の子たちがいたわけです。海外の雑誌を読んでいるようなおしゃれな子たちが。欧米人風のヘアスタイルを求めて東京中からお店に押し寄せて来ました。1日100人とかね。

――川畑さんならではの生き方があったからこそ生み出されたスタイルなんですね。

僕、カットは美容師に復帰した一年後くらいには見様見真似でやっていたんです。技術がよくわかっていなくても、イメージだけは持っていました。それが欧米人のイメージだったんですよ。だから、後輩には「映画を観ておけよ」と言っているんです。映画を観ていると、日本人と欧米人の骨格の違いなどがわかってくるし、何が違うんだろう?って考えられるようになるんです。

自然光が惜しみなく入り込む開放的な店内で、海をバッグにサーフィンが好きだと語る川畑さん。小さい頃から映画を観てきたこと、心の赴くままにサーフィンをしてきたこと、様々な場所を訪れたこと、その全てが川畑さんのスタイルに反映されているようです。後編では、七里ヶ浜で働く川畑さんの今の心情を伺います。

▽後編はこちら▽
都会にこだわらず、心を広げて 私の履歴書Vol.16【美容師・川畑タケル】#2>>

取材・原文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/石原麻里絵(STUDIO BANBAN)

Salon Data

BEAUTRIUM 七里ヶ浜

住所 神奈川県鎌倉市七里ガ浜1-1-1 WEEKEND HOUSE ALLEY 04
営業時間 10:00~19:00(木 20:00迄)
定休日 火・第3水
HP http://beautrium.com/salon/shichirigahama.php

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