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コラム・特集 2019-10-08

【理美容業界の動向】できるサロンは客単価よりも『分単価』を上げている!アシスタントの活用術とは

美容室において、従来客単価というものは売上基盤を作る上で大変重要なものでした。そのため、客単価を上げるためにパーマ、トリートメント、店販商材の提案など、お客様にお金をたくさん落としていただく工夫が美容院の方針として多く見られました。

しかし、その一方で残業廃止やスタッフの待遇改善など、サロン側が人材に対して考慮しなくてはいけない場面は昔よりはるかに多くなっています。

そうなると以前より人件費の重みが増し、1人のお客様でいくら売上を作れるかということよりも、1人のスタッフが時間内にいくら売上を作れるかということが大切になってきます。スタッフの売上については、客単価よりも時給換算した場合の効率が重要になってきます。

今まであいまいだった『分単価』を見直す時期が来たのです。美容室の売上アップ施策について、船井総合研究所で美容室のコンサルタントを務める、富成将矢(とみなりまさや)さんにお話を伺ってきました。

客単価にとらわれるサロンは負ける時代が来た


先述したように、人件費の重みに気づいた美容院は分単価を意識し始めています。そのもっとも分かりやすい例が1000円カットでおなじみのQBハウスです。

2019年2月に1000円から1200円に値上げをしたので今は1200円カットですが、1000円カットの走りであり、10分1000円のカット専門店という他者との差別化で格安カットのブームに火をつけた美容院です。

短時間・高単価を考えた際に、非常に効率が良いシステムです。1000円で髪が切れると考えるとすごく安い!というイメージがわくと思いますが、実は60分で換算すると6000円もします。6000円のカットって決して安くはない金額です。下手したら、普通の美容院の方が安いケースもあります。

QBハウスは、カットのみの潔いオペレーションです。ヒアリングやマッサージの時間といった付加価値どころか、カラー、パーマ、シェービング、シャンプー&ブローといった理美容院では当たり前のサービスも全て排除しています。オペレーションをシンプルに削ぎ落すことでミニマムなセット面回転を実現。まさに分単価に重きを置いた良い例です。

もちろん、短時間で回転させなくてはいけないので、スタッフの質は非常に大事になってきます。また、シャンプー&ブローの代わりにエアウォッシャーを導入したり、カットの際に使い捨てのネックペーパーを首に巻くことで、シャンプーなしでもお客様が気持ちよく帰宅できる工夫もされています。

そのため、1997年の立ち上げ以来右肩上がりに成長を続け、2018年には東証一部上場を果たしています。今年2月の200円値上げの影響に注目が集まっていましたが、客足は衰えず、株価も安定しています。QBハウスの例は極端ではありますが、分単価に重きを置き、余計なものをそぎ落とす企業努力で他社との差別化に成功した例もあるのです。

アシスタントの活用で分単価は上げられる


QBハウスのように1からシステムを組み替えるやり方は最も合理的な差別化が叶いますが、通常のサロンワークの中でも工夫すべき点はたくさんあります。

未熟な人材とされるアシスタントの活用もその1つです。通常、サロンの売上はスタイリストが支えています。スタイリストがお客様のヒアリングをし、要望に沿うように仕上げていきます。その際アシスタントの基本業務は、シャンプー、カラーやパーマの補助、マッサージ、ブローといった補助業務がほとんどです。

サポートだけと考えると、アシスタントはお金を生んでくれません。客単価で考えると、1人のお客様に2人つく形になるので、スタイリストが同時進行で別のお客様の予約をこなさないと客単価は半分になってしまいます。ましてやヘアスタイリングに携わる場面だと、一歩間違えるとクレームに発展するケースもあり、未熟なスタッフが接客できるタイミングは非常に限られてしまいます。

ヘアケアメニューの見直しで分単価が劇的に変わる

アシスタントを最大限有効活用するには、トリートメントメニューの見直しが一番効率的と言えます。分単価を上げるためには短時間・高単価のメニューが最適です。その点で、トリートメントに関してはシャンプーの延長線上にあるので、技術を必要とする特殊な薬剤でない限りアシスタントでも対応可能なメニューだと言えます。

船井総研の富成さんも、現在のトレンドとしてヘアケアはニーズが上がっているため、売上を上げる施策としてトリートメントメニューの強化は各サロン検討すべきと指摘しています。

今の商材のトレンドとしては、ヘアケア(トリートメント)のジャンルになるでしょう。ホットペッパーのビューティー総研調べによると、予約の検索ワードでヘアケアの比率は上がってきています。つまりヘアケア全体のニーズは上昇傾向にあると言えます。

今までは美容師側から提案することの多いオプションメニューのイメージがあるヘアケア・トリートメントのメニューですが、現在の潮流的にはお客様自身が求めているので、うまくメニュー構成に組み込めれば単価アップだけでなく集客にも一役買ってくれそうです。

髪質改善サロンの台頭で消費者のヘアケア意識が底上げされた

この背景には、髪質改善サロンといった、トリートメントに特化した専門店が増えてきたことも関係します。今までヘアケアと言えば2000~3000円のなんとなく手触りのいいトリートメントをオプションでつけるというイメージが強かったのですが、髪質を改善するという結果に特化したことで、消費者の潜在ニーズを引き出しました。

顧客が美容院に通う理由としては、イメージを変えたい・飽きたという理由でヘアスタイルを変えに行くケースもありますが、実は過半数以上が「まとまらなくなってきた」という理由で美容院に来店します。

20~30代前半のF 1層の女性の美容院選びのポイントの調査結果で、決め手の1位は「スタッフの技術力(24%)」、2位「スタッフの接客の良さ(18%)」となっています。

出典元:ミュゼマーケティング

逆に行きつけの美容院を変えるタイミングとしては、「ほかに気になる美容院を見つけたら(32%)」が最も多く、「理想の髪型にならなかったら(28%)」が次点です。化粧品やアパレルにおいても低コスト志向があるF 1層の20代ですが、最終的に値段で美容院選びをする顧客は全体の13%にとどまっています。

そして髪のお悩みについては、髪の悩みトップ3は、「パサつき(23%)」「枝毛・痛み(21%)」「くせ毛(19%)」。髪で一番重要なのは「ツヤ(39%)」「潤い(25%)」という調査結果が出ています。

出典元:ミュゼマーケティング

つまり、自分でケアしきれず扱いにくくなっている髪を何とかしたいというニーズです。このニーズをうまく取り込んだのが、髪質改善サロンです。

今まで、繰り返すカラーやパーマ、縮毛矯正などスタイリングでごまかすという形でしのいでいた客層が、ケアをしながら悩みを解消できるとあって1万円をだしてでも殺到しています。その場では高く感じても、毎日のお手入れが楽になり髪が美しくなるのであれば、コストパフォーマンスは最高と言えるでしょう。

髪質改善サロンが使うトリートメントになると機材などシステム導入部分にお金がかかったり、技術が必要なトリートメントも多いです。一般の美容室が取り入れるのであればコストパフォーマンスの良いメニュー作りをする必要があります。

メニュー施策の要点としては

①アシスタントでも扱える商材であるかどうか
②分単価としての価値がある10分以内のもの
③手触りの改善やスッキリ感など、即効性を感じられる体感があるか

この3点があげられます。

例えば効果の高いトリートメントでも、アシスタントには扱いが難しい商材では意味がありませんし、それ自体に30分以上かかってしまうと分単価アップの為の施策としては効率が悪くなってしまいます。カットもカラーもするお客様の場合、次に予定があると当日追加することができませんし、土日の予約の重複具合からしても、直前に30分のメニュー追加というのは店舗側もキャパオーバーになる可能性があります。

手軽にできる例としては、例えば炭酸ヘッドスパを追加する場合だと、シャワーヘッドなどの機材は必要になりますが、消耗品としてのランニングコストや新たに覚えなくてはいけないオペレーションは簡単なヘッドマッサージのみ。

そしてお客様側も、所要時間はほぼ変わらずに家ではできないシュワシュワする体感と、洗い上がりのさっぱり感を体感することができます。例えばこれが追加1000円~2000円だとして、コストパフォーマンスはどうでしょうか?双方にとって良いと思いませんか?

10分以内の手軽なものでしっかりと効果を感じられるような施策が、お客様側にもお店側にもコストパフォーマンスの良いメニューになります。

セルフプロデュース力の高い美容師が物販を制する


メニュー施策でアシスタントの価値を上げることが分単価アップには有効ですが、もし店舗で指名客が多いスタイリストを抱えているのであれば、物販強化も施策のひとつです。

以前は店で扱うホームケア商材をスタイリストがおすすめして売るという形式が多かったのですが、最近ではただの指名客ではなく、いわゆるファンのような顧客がつく美容師が増えてきています。そうすると、ただの美容師の顧客の関係ではなく、アドバイザーやコーディネーターとして美容師のアドバイスを求めるようになります。

髪のスタイリングにとどまらず、ファッションやメイクのアドバイスをする美容師も実際に増えています。この背景は、SNS発信の勢いが増したことにより、店としての広告宣伝ではなく、美容師個人の発信にも注目が集まることも影響していると言えるでしょう。例えば、美容室に勤める一個人の美容師が、Instagramで1万人のフォロワーを抱えているケースもあります。

最近ではサロモからフリーランスモデルになる若い女性も多く、そういった女性たちがサロンモデルをやった際に自分のSNSで担当の美容師を紹介し、その美容師に注目が集まることがあります。

また、新卒の美容師アシスタントなのにSNSアカウントが数千人のフォロワーを抱えているケースもあり、そういった子はカットの技術ではなくメイクの技術やコスメの紹介でたくさんのフォロワーがついていたりします。ファンが多い美容師に共通することは独自の世界観を持っているという点です。

現在の世の中は組織よりも個の時代と言われており、個人においてもセルフプロデュース力の高い人材が、インスタグラマーやYouTuberとして活躍しているのです。それは美容師においても例外ではなく、お店の看板を背負ってではなく、コンテスト優勝などの実績ではなく、その人個人の持つセンスや世界観でファンを獲得している美容師が徐々に増えています。

これは美容師としての位置づけが変わりつつあるということが言えます。今まではあくまでも髪の担当者でしたが、共に過ごす2~3時間を繰り返すことによって、ファッションの話や恋愛相談や人生の相談を含め、ライフスタイルコーディネーター的な立ち位置になる美容師もいます。

女性が定期的に通い続けるビジネスはそうそうなく、販売チャネルとしての価値は非常に高いです。美容師さんがいうなら買いますという顧客は多く、異業種から見ても美容師と顧客の絶対的な信頼関係は非常に魅力と言えます。

そのため最近で異業種企業側からのオファーで、ヘアケアとは関係のないスキンケアや健康食品を販売して欲しいというオファーもでてきているそうです。例えば、ある地方の美容院ではこのようなデータも出ています。

これは、あるサプリメントを美容院に導入し店頭で販売した例ですが、売上が1年間で300万円ほどアップしています。その他の美容室でも、サロン専売品の健康食品で全店舗トータル年間2000~3000万円の売上を上げているところも出てきています。

物販に関しては客層や美容師のクロージング力でかなり売上が左右されるとは言えますが、ヘアケア以外で売り上げを伸ばした良い例と言えるでしょう。サプリメントについてはヘアケア剤よりも消費が早い点も、顧客の来店頻度アップにも貢献してくれると言えます。物販に力を入れていない場合は、顧客のリピート率の強化として商材検討の余地があります。

物販の場合、買取での在庫を懸念する声も多く耳にしますが、最近はサプリメントや化粧品メーカーも知恵をだし、美容師は在庫買取をせず売れた分だけ手数料をもらえる、委託販売形式で進めているところもいくつかあります。企業としても、営業費や広告費をかけずに対面販売をしてもらえるということで、非常においしいシステムとなっています。

店舗で商品を販売する際にも、影響力のあるスタイリストを抱えている場合は商品選定やオリジナルの商品の企画に携わってもらい、自分の商品としてファンに発信してもらうというのも新しい物販の在り方と言えるでしょう。

二極化する消費傾向で、増える高級家電需要

物販で売れるものと言えば、1万円未満の印象が強いですが、最近では数万円単位の物販を売り上げる強者美容師もいます。安かろう悪かろうではないですが、最近では付加価値のある高機能・高価格の商品が非常に増えてきています。

特に美容業界においては、ドライヤー市場は非常に加熱しており、わかりやすく高価格化してきています。これは、ヘアビューロンでおなじみのBioprogramming Clubの高価格のドライヤーの発売や、掃除機のdysonさんの美容家電参入が非常に大きな影響を及ぼしています。

ドライヤー市場としては、なんと200億を越えるまでの成長を見せています。今までは家電量販店で1万円程度のものを購入するケースが多かったのですが、高機能のサロン専売品が増えてきたことで、ドライヤーや美顔器など、5万円を超えるアイテムを美容院で買うケースも増えてきました。

5~10万円程度の家電や美容グッズの需要はまだまだ伸びしろがあり、こちらについては賞味期限がない点も、販売をチャレンジする価値はあると言えます。オーナーについては、物販アイテムの定期的な市場調査と、スタッフの売りやすいジャンルの見極めは定期的に確認すべきと言えるでしょう。

付加価値を高めるサロンブランディング


結論として、分単価をあげるということは、経営者目線でいくとその美容院に勤めるスタッフを最大限活かしてあげられるかという点にかかってきます。分単価効率をあげる施策を打ち出していくことで、宝の持ち腐れを防止することができるでしょう。

また、スタッフ側の目線でいくと、技術面の才能がスバ抜けていなくても、自分の見せどころや世界観がぶれていなければ、そこが強みになる可能性も多いにあります。若いスタッフに関しては、先輩方よりもSNSを使いこなしている分セルフプロデュースの面では優位と言えるでしょう。

お客様の立場から言っても、常に変化を求めて高いスキルの美容師にお願いする場合もあれば、毎回同じ髪型を希望して、「あなたに切ってもらうのがいいのよ~」という方もいます。前者に関しては技術力とセンスが全てですが、後者に関してはいかにフィーリングが合うか、という点が軸になってきます。

重要なのは、エンドユーザーの価値としてお客様に感じていただけるかという点です。オプションメニューにしても物販にしても、その点がクリアできれば、固定客はますますつきやすくなります。

買わせるのではなくて選ばせる、お客様の選ぶポイントとしてはコストパフォーマンスが良いか、人が信頼できるか、いずれかです。奇をてらうような差別化ができなくとも、そんな顧客目線の施策が打ち出せるサロンが現代の激戦を生き残る店舗になると言えるでしょう。

出典元:
QBハウス
ミュゼマーケティング F1層のヘア事情調査

Profile

富成将矢さん Masaya Tominari

1991年生まれ。立命館大学卒業後、船井総合研究所入社。美容室の業績アップを得意としており、売上2000万円の美容室から、県内No.1美容室まで、規模に応じた経営戦略を組み立てながら、業績アップに必要なものを的確に提案するスタイルが経営者から高く評価されている。業界内有名美容室もクライアントに多数抱える実力のあるコンサルタント。日本各地にクライアントを持ち、今日も全国を駆け巡っている。
「富が成る」美容室経営ブログ:http://www.funaisoken.me/m-tominari/
美容室経営のことをもう少し聞きたいという方は、m-tominari@funaisoken.co.jpまで

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