顧客のニーズを引き出し、ホスピタリティも高い美容師は最強 「source」代表・久保雄さん
千葉県の美容室「source」の代表であり、カメラマンとして大企業の撮影にも数々さんかしてきた久保雄さん。
前編では久保さんがどのようにしてカメラマンになったのかを中心にお話を伺いました。ディテールにこだわる仕事と、経験がないことも飛び込んでいく久保さんの姿勢が大きな仕事の獲得につながっているようです。
後編では、久保さんが美容師×カメラマンとして成功した理由を掘り下げます。美容師は最強だという久保さん。美容師目線で撮影した写真が評価されたり、クライアントのニーズを引き出す際にも美容師として培われた力が活きたといいます。
今回、お話を伺ったのは…
久保 雄さん
美容師、カメラマン、ヘアメイクアップアーティスト／「source」代表
高校在学中に通信教育の美容学校で美容師免許を取得し、高校卒業とともにサロンへ入社。入社2年目にしてファッション誌のヘアメイクの仕事をつかみ、活動の場を広げていく。その後カメラマンとしての活動もするようになり、adidasやPaul Smith、ロッキング・オン・グループなど ビッククライアントも多数。2019年には独立し、活動の拠点である千葉県に「source」をオープンさせる。
美容師目線で、モデルさんの一番いい表情を切り取るカメラマンに
花嫁着物専門店「CUCURU」の写真。モデルさんのいい表情を一瞬でとらえる
――カメラマンとして成功されていても、美容師に軸足を置いていらっしゃいますよね。美容師を続けたい気持ちがやはりあるのでしょうか？
そうですね。美容師もカメラマンも同じくらい大切にしていきたい仕事ですし、僕にとってカメラマンの仕事というのは、美容師さんが着付けをできるのと同じくらいの立ち位置です。美容師の仕事があっての、カメラマンだと思っています。というのもカメラマンの仕事を始めてみて、改めて感じたことなのですが、やはり美容師は最強だと思うんです。
――といいますと？
美容師は、その方の外見の良さを最大限に引き出す力があると思います。その美容師として力が培われてきたからなのか、僕がカメラマンとして撮影をすると、モデルさんの一番いい表情が撮れていると評価していただくことが多いんです。
あとはコミュニケーション面でも強みがあると思っていて。カメラマンの撮影はほとんどがクライアントワークです。基本、撮影に関してはお任せしていただいているのですが、クライアントのニーズを引き出さなければ、満足いただくことはないと思っています。このニーズを引き出す力というのは、日々のサロンワークで培われたものだと思うんです。お客さまがどんなものを求めているか、それに対してどんな提案をしていくか。毎日がその積み重ねですよね。美容師の仕事も好きですし、美容師目線があったからこそカメラマンとして成功できたのかなと思っているので、引き続き美容師×カメラマンとして活動をしていきたいと思っています。
ひとつの仕事がうまくいけば、かならず次の仕事につながる
久保さんが担当した、ファッション業界大手「アダストリア」の新卒採用キービジュアル。「アダストリア」内の1ブランドの撮影から始まり、数多くの仕事を任されるように
――なるほど。美容師としての視点があるから成功できたと。
そうですね。美容師って本当に強いと思いますよ。チームを組み始めて気付いたんですけど、僕のチームはモデルさんのケアがとても得意なんです。これもサロンワークで培われたホスピタリティなのかな、と。
ファッションの撮影はとくに、冬物を夏に、夏物を冬にという形で、時期をずらして撮影されるので、モデルさんにとってはかなり大変な状況になることが多いんです。撮影がひと段落して、写真のチェックをしているときのちょっとした空き時間などに、寒い日だったらモデルさんにダウンを着てもらったり、暑い日だったら日傘をさしたり。そういったケアができることも、仕事の評価につながっていると思います。
――そういった姿勢も評価されて、仕事が広がっているというわけですね。具体的にはどのようにして新たな仕事が入ってくるのでしょうか？
新規の場合はインスタ経由でお話をいただくことも多いですが、僕のカメラマンの仕事は、リピートだったり、紹介だったりでいただくことがほとんどです。大きな会社ですとアートディレクションをやっている方たちは、常にいいカメラマンがいないか話しているようですし、作品を見た方から連絡が入ることもあります。ひとつの仕事がうまくいくと、仕事がどんどん広がっていくのではないかと思いますね。
自分たちが提供できる価値を求めてくれるお客さまと出会えるように
久保さんの拠点である千葉県の「source」。その高い技術やファッション性を求めて、県内外から多くの人が訪れるそう
――「source」のオーナーとして心がけていることはありますか？
サロンオーナーとして、より自身の直感で感じる「格好いいことが見られる仕事」をスタッフに見せられるような行動を心がけています。美容室としてお客さまが求める技術やデザイン、サロンの居心地の良さはもちろんですが、「source」を選んでご来店いただく以上、「刺激を与えられるサロン」としてのポジションは常に目指していきたいと思っています。
僕が美容師の枠にとらわれず活動するように、「source」も「髪をデザインする」だけでなく、いろいろなカルチャーに触れて楽しんでいただくこと、新たな人と人とのつながりを生み出すきっかけになる存在でありたいと考えています。
経営センスがあまりないのですが（笑）、闇雲に売上を上げるために数をこなすというより、お客さまに向き合い、僕たちのこだわりの技術やデザイン、ご来店いただく付加価値に賛同していただけるお客さまがより増えればいいなと思います。その思いが伝わっているのか、ありがたいことに長いお付き合いのお客さまも多く、ご紹介につながっています。
――最後に今後の目標を教えてください。
sourceチームとして関わる仕事を増やしていきたいですし、そのなかで内容を充実させて、もっと格好いい仕事をしていきたいと思っています。そして活動拠点は引き続き千葉で、撮影で東京に行く今の形を続けていきたいです。ちょっと性格悪いけど、千葉 からこのファッションシーンを少しでも動かしたときの感触がたまらなく好きで。「食らっただろう」みたいな気持ちになるので（笑）。
店舗に関してはより濃厚にしていきたいなと思います。強烈なヘアメイクができる美容師が在籍するサロンでありたいですし、マルチな活動ができるスタッフを育てて、ゆくゆくは店舗拡大などを視野に入れています。まずは僕自身がよりマルチな活動を増やし、仕事を楽しむ姿勢や格好いい仕事が見せられるよう、日々成長していきたいです。
久保さんが活動の場を広げた3つの理由
1.美容師目線を持って、モデルさんのいい表情を切り取るカメラマンになった
2.サロンワークで培ったクライアントのニーズを引き出す力で、紹介を増やした
3.数をこなすのではなく、自分たちが提供する価値を必要としてくれるお客さまに出会うようにした
「これまで起きたこと全部、運が良くて」と取材の冒頭から話してくれた久保さん。しかしお話をお聞きするうちに、自分が実現したい美容師、ヘアメイク、カメラマンとしての形に臆することなく飛び込む姿勢が、多くの実績につながっているのだと感じました。美容師の方、多様な働き方を実現したい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
