開業後にぶつかった「人を育てる」難しさ。拡大から育成へ舵を切り、愛される整骨院に【治療・リラクゼーション・歯科業界のお仕事 荻野俊さん】#2

治療、リラクゼーション、歯科業界など、人々の痛みや不調に寄り添う仕事の魅力を紹介する本企画。今回お話を伺うのは、神奈川県鎌倉市の大船エリアで2019年に開業し、自費診療の丁寧な施術を行う「大船エール整骨院」院長の荻野俊さんです。

前編では、柔道整復師としての仕事の内容と、夜間の専門学校に通いながら現場経験も積んだ資格取得までの道のりを伺いました。

後編では独立後の荻野さんが直面した壁と、院づくりの考え方について伺います。開業当初は集客への投資に成功し、順調に店舗を展開。しかしその裏で、スタッフとの関係構築に悩み、離職が続くという苦しい時期も経験しました。

3店舗まで広げた整骨院を最終的には1店舗へと縮小。その経験を経て、いまは「広げる」よりも「育てる」こと、そして地域に根差すことを軸に経営に向き合っています。

お話を伺ったのは…

荻野俊さん

大船エール整骨院 院長/柔道整復師

高校卒業後にサッカー指導者の道を志し、川崎フロンターレに入社。その後、整骨院で働きながら、柔道整復師の資格を取得する。2019年に独立して、「大船エール整骨院」を開業。現在は社員を抱え、地域に根差した院づくりに取り組んでいる。

インスタグラム

集客への投資が、開業初期の追い風に

荻野さんが開業した「大船エール整骨院」。院名の「エール」には地域の人を応援したいという思いが込められている

――2019年に念願の開業をはたされたわけですね。今のような人気の整骨院になれた理由は?

その要因をまだすべて言語化できていないのですが、大きかったのは集客に力を入れたことだと思います。開業前に義理の兄について、経営の勉強もさせてもらった際に、集客の重要性についても学んだんです。技術を磨くのは当然として、そもそもご来院いただけなければ、技術を提供する機会もありませんから。

立ち上げたばかりで自然に知ってもらえるとは考えていなかったので、一番力を入れたのがホームページ制作です。費用はかかりましたが、最初の投資として必要だと判断しました。

――集客と並行して、技術面で意識していたことはありますか。

前編でもお話したように、技術の更新を続けることです。僕は開業当時に使っていた技術を今は一切使っていません。現在は奈良県の仲谷健吾先生が開発した手で身体を調整する施術「CODE15」と、筋膜に関する技術の2つを柱にしています。

こうやって日々、技術をアップデートすることで、その場で患者様に変化が出ることも増え、どんどん自信が増していきました。

「教える自信」が壁に。育成で気づいた自分の課題

開業後、壁にぶつかることで自分を見つめ直したという荻野さん

――独立後、大きな壁になったことは?

人と組織です。開業したからには店舗展開もしたいと思い、半年ほどで社員さんを雇いました。ただ思うように育成ができず、離職も続いてしまったんです。

実は開業後に出店も経験して、3店舗まで広げた時期もありました。でも結果として2店舗は閉め、いまは1店舗に戻しています。離職や撤退を経験したことは、自分にとって大きな転機でした。

――うまくいかなかった原因をどう分析されていらっしゃいますか?

僕は元々サッカーコーチで、人に教えることが好きでした。だから自分ならうまく指導できるだろうという、自分への期待が高かったんだと思います。

でもその期待がそのまま相手への要求になってしまって。徐々に「ここまでできて当然」、「なぜできないんだろう」という見方に変わってしまっていました。人はみな違うのだという当たり前のことを、当時はまだ分かっていなかったんだと思います。

――そこからどのように見直していったのでしょうか。

まだ完璧ではありませんが、研修や学びの場に足を運び、自分のあり方を見つめ直す時間を重ねてきました。社員さんへの見方や関わり方は、少しずつ変わってきていると思います。

いまは事業を拡大するよりも、目の前のメンバーと地域を大切にすることを優先しています。将来的には出店も考えていないわけではありませんが、それは人が育って初めて成り立つもの。急がず、状況を見ながら判断したいです。

患者様の人生に深く関われる。それが柔道整復師の醍醐味

患者さんの人生に関わることこそ、この仕事の魅力だと語る荻野さん

――院づくりや、日々の仕事で大切にしていることはありますか。

治療家としてというより、人として大切にしていることの方が多いかもしれません。たとえば清潔感です。

この仕事は人の体に触れますが、一般社会では当たり前の行為ではありません。だから、適当には触らない。触る手が本当に清潔かどうかも気をつけています。

デスクワークの後は必ず手を洗いますし、お金を触った手で施術に入ることも避けたいので、受付の方を必ず雇用し、会計をお願いしています。爪の長さや身なり、施術の前日に食べるものは匂いの強いものを避けるなど、触れる前の段階から配慮することは徹底しています。

――柔道整復師の仕事の魅力を、改めて教えてください。

患者様の人生に深く関わることだと思います。治療家がその人を治すことができるか、それは結果論の部分もあります。ただ、重い症状の方であればあるほど、治すまでのプロセスでその方の人生に深く関わることになると思うんです。

治療家の側にも患者様の人生が残りますし、患者様の人生のなかにも残ることがある。人間関係が希薄になっていく時代だからこそ、その価値は大きいと感じています。

――人とのつながりを生み出せる仕事なのですね。

はい。そう思います。

開業したとき、半年ほど経ってからお花を贈ってくださった患者様がいました。お礼の電話をすると、「たくさんの方からお花をもらうと思うから、あえてタイミングをずらしてお祝いしました」と言ってくださって。

そういった配慮をしてくださったこと、半年ほどタイミングを見計らってくださった間、その方のなかに僕が居続けたということが、本当にうれしかったです。

――今後、柔道整復師を目指す人へのアドバイスをお願いします。

目的を持つことにつきるのかなと思います。僕が学生時代の勉強を苦に感じにくかったのは、ゴールが資格取得ではなく、その先にあったからです。開業して家族を支えたい、母の面倒も見たい。そういう目的が、自分を動かしていました。

すべてにおいて目的を持って、資格取得、就職を進めていくといいのではないでしょうか。

――目的が見つからないという人もいるかもしれません。

厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、一度本気で取り組む経験が必要だと思います。そもそも学べる環境にいるのは、周りの誰かの支えがあってこそです。そのことに対する感謝と、自分の人生に誠実であろうとする姿勢があれば、目的は探せると思います。

目的が見つからないと言って終わらせるのではなく、探そうとする。逃げずに向き合うことが大切だと思います。


荻野さんの成功を支えているのは、「誠実さ」ではないでしょうか。技術、患者様、スタッフ、そして何より自分自身に対して誠実であること。その積み重ねが、目的を明確にし、結果へとつながっているように感じました。

開業前に義理のお父さんが「君なら開業できる」と声をかけたのも、その誠実さを見抜いていたからかもしれません。

何のために働くのか。何を実現したいのか。その問いを持ち続けることの大切さを、改めて教えてくれる取材でした。


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大船エール整骨院
住所神奈川県鎌倉市岩瀬1-5-6
TEL:046-795-2338

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