アンミカ interview:「ワクワク」する気持ちに対して、素直になったから今がある
「相手の方のお顔を見て話をするのが大好きなんです」。その言葉通り、視線を合わせ、どんな辛かった時の話も笑顔でお話ししてくださったアンミカさん。たくさんの苦労を経験しながらも、きっと別の道があると模索して乗り越えてきたからこそ、「幸せな今」がある。その心の有り様が、周囲を照らす輝きを放っています。
今充実しているのは、迷った経験があったから
「今、テレビ番組の出演をはじめとして、ファッションショーのモデル、化粧品やジュエリーのプロデュース、ライフスタイルやマナーの講演会などもさせていただいています。また、韓国の観光名誉広報大使として日本と韓国のお互いの良いところを伝えたり、大阪市初代観光大使として海外のテレビなどで流れる大阪観光局のCMに出させていただいたりなど、国と国、場所と場所をつなぐお仕事もさせていただいています。とても充実した仕事ができていますし、旦那様もすごく理解してくれています。ありがたいことに、仕事を辞めたいと思ったことはありません。ただ、辞めようかな……と思ったとこはあります。15歳でモデルになる決意をしたものの、そこから3年間は仕事がほとんどなく、『自称モデル』の時期でした。20歳を前にして、もう無理かもしれないと、他の仕事に就職しようと思ったことがありました。でも、デスクワークのお仕事をしてみたら3ヵ月間でストレスによる激太りをしてしまい、。自分には『勤め人』は難しいと痛感しました。今となってはいい勉強でした」
NYは逃げではなくチャンスだった
「仕事も何ごとも、自分の心がワクワクするものを選ぶ、という意識を持つようにしています。実は20代半ばの頃、それまで出ていた大阪の大きなコレクションから外されたことがありました。ショーで一色になる大阪の街に自分の居場所がなく、思うがままにニューヨークへ行きました。大阪より大きなショーに出ようって。だけど心の中はざわついていました。私は逃げてるんじゃない?と。ニューヨークに着いてみたら、空港で私の荷物だけ出てこない。さらに一緒に住む予定だった人にパートナーが出来て、パートナーが嫌がるのでと宿泊を断られる。そんなふうに始まったニューヨークでの仕事は、本当にトラブル続き。心労で7キロぐらい痩せてしまいました。
しかもそのタイミングで、日本の留守番電話には、私が出ているCMを見たある映画監督から『主役のオーディションにぜひ来てほしい』と言っているという伝言がずっと入っていたんです。当時は携帯電話なんてありませんでしたから、まったく気づかなくて。結局、映画のお仕事のチャンスを失ってしまいました。だから帰国した時、ニューヨークに行ったのは間違いだったと感じてしまいました。でも、後になってみると、『しっかり計画を立てて、本当にワクワクする方に動かなければいけない』と学んだのだから、失敗ではないと捉えることができるようになりました」
誰かの役に立つために生きる
「私は何でもシェアするのが好きです。自分が楽しいと思ったことを誰かの役に立たせたい、誰かが喜ぶ顔を見たいと考えた瞬間に、それは趣味の範囲を超えて、社会と手を結んだことになります。そうすると、たくさんの人に求められる人間になり、自分にも自信が持てます。人と共有する喜びから愛が生まれます。ここが一人で楽しむだけなのか、シェアをしようとするのかの違いなのではないでしょうか。私は年子の5人兄弟姉妹の真ん中で、姉と兄には気を使い、弟と妹の面倒をみるという立場でした。何かに対して『嫌だ』と主張できないまま育ってきたんですが、それが悲しかったということもありませんでした。弟が何かを欲しいと泣いていれば普通にあげましたし、兄は体が大きいからもっと食べ物をと言われれば気兼ねなく譲りました。シェアが当たり前という性格は、もって生まれたものだけでなく、親からも、家庭環境からもいただきました。逆に自分だけで何かしていると罪悪感が生まれて、弟や妹に何かをあげた時の喜ぶ顔を見ていると嬉しくなりました。
さらには私が住んでいた大阪のコリアタウンは100年近く前から韓国の人たちが住んでいて、お互いに助け合うのが当然だったことも、シェアの精神を育んでくれたと思います」
資格の取得は人間の幅を広げてくれる
「私は今、20個以上の資格を持っています。『資格を取って自分に付加価値を付ける』というのが、モデルを目指す上での父との約束でした。また、もともと好奇心が旺盛なので、面白そうだと感じるとまず経験してみるんです。そして、良い物だったらすぐ周りの人に薦めたくなります。これもシェアの精神ですね。でも、自分の中にきちんとした知識がなければ他人に薦めることができません。もし何か尋ねられたとしても答えることができません。ですから、ちゃんと理解してから薦めるようにしようと、資格を取得するようになりました。例えばNARDアロマアドバイザーの資格。NHKのキャスターをしていたころに、香りに関する情報が必要だったことがきっかけでした。香りは人間の脳の一番古い部分を刺激するので、気づかぬうちに心や体に働きかけてくれます。アロマの元となる植物というのは、実は人間と同じ部位に作用するのです。植物の葉は人間の手の平、茎や根っこは胴体なので体内循環、雌しべは女性ホルモンなど。まさに植物は無償の存在です。花を飾る、アロマの香りを楽しむ、野菜を食するというのは、エネルギーの源といえるでしょう。これも、きちんと学んだからこそ自信を持って言えることです。このように、検定は自分を高める付加価値となり、みんな情報を共有できるツールにもなります。最近では漢方養生指導士を取得し、3月にはジュエリー検定に挑戦する予定です」
自分の心と体の本当の声に耳を傾けて
「私は今、40代です。そして、今が一番楽しいです。幸せです。それはなぜだと思いますか。未来を憂いて、手近で安全な道を選んでしまう人は少なからずいらっしゃるでしょう。でも、もっと自分の心に気を配ってあげてみください。『私にとって何が幸せなのだろう』『何をしている時がリラックスできるのだろう』。自分の心と体の声に耳を傾けて『自分を知る』のは、自分に責任を持つことに繋がります。自分を理解しないままに他人と何かを共有しようとすると、心地良くないですし、無理をして付き合うことで心身に無理が生じて、バランスを崩してしまいます。
例えばファッション。「似合う」と「好き」は違います。ただただ好きなものだけに偏ることなく、自分に本当にしっくりするものを選ぶには、自分を知らなければなりません。仕事もそうです。好きなことを仕事にできれば一番ハッピーですが、一方で、自分が周りのお役に立てるポジションというものがあります。例えば会社でお客様へのお茶出しを頼まれたとします。それに対して『私はお茶くみではない』とは思わず、自分がお茶を出すことで、その場がなごやかになるという考え方でお茶を出せば、そこから周囲の信頼につながっていくこともあるでしょう。そういった気持の変化も必要です。
そしてもうひとつ、年を経るとともに、性格や環境、恋愛感や家族、社会や友人とのポジションは絶妙に変わります。だから、歳相応の魅力のある人が一番きれいなんです。私も深みのある『良いシワ』を刻みたいと思っています。時代と環境に応じて自分を変えていけば、幸せになれると信じています」
今、仕事選びで悩んでいる皆さんへ
「これから就職や転職を考えていらっしゃる方に、2つお伝えしたいことがあります。まず、自分の心がワクワクドキドキする仕事、自分が好きになれそうで、お役に立てそうな仕事を選ぶことです。
そしてもうひとつ。『仕事』というのは『事に仕える』と書きます。自分が事に仕えさせていただいているという、謙虚な気持ちも必要です。そこからお金という対価が生まれます。
『やりがいがない』とよく耳にしますが、やりがいは自分でつくるもの。面白くないと思うのではなく、自分が任された事にどれだけ仕えさせていただいて、お返しできるかが仕事です。それが分かるようになるまで、一定期間はしっかり働くべきです。
それでも合わない、辞めようということになったら、職場に入った時と同じ温度で握手をするというのが大人のマナーです。それを念頭に置いて、お仕事を選んでくださいね。応援しています」
Profile
アンミカ(あんみか)さん
モデル、タレント
韓国出身。大阪育ち。15歳の時に母が他界。母に薦められたモデルの道を目指すも、「一流になるまで戻るな」と父から勘当される。その父は29歳の時に他界。その頃はすでにパリコレに参加して活躍していたが、家族のルーツを知るために意を決して韓国へ留学した。帰国後はモデル以外にも、テレビ・ラジオ出演、韓国の観光名誉広報大使、大阪市初代観光大使、エッセイの執筆や講演会、ジュエリー・フアッション・化粧品プロデュースなど、活躍の場は多岐にわたる。38歳でアメリカ人の実業家と結婚。NARDアロマアドバイザー、ASIACT認定オーラソーマ、プラクティショナーなど、取得した資格は20を超える。
Information
『アン ミカの幸せの選択力~愛・幸・運に恵まれた人生を手に入れる~』
幸せの選択力 「今、幸せになる選択をして未来に投げてあげれば、だれでも、いくつになっても、未来は自然と幸せになるんです」。そう語るアンミカさんが、壮絶な恋愛体験や荒波を乗り越えてきたご自身の体験を交えながら、幸せを呼びこむための48のヒントを紹介。いずれも日常生活で簡単に実践できる、元気になれる一冊です。
出版社 大和書房 定価:1,300円(+税)