店舗こそ最大のメディア。感動体験でお客さまの心をつかむ『LUSH』の接客術に迫る
「環境問題に配慮する」というブランドポリシーを掲げながら、ハンドメイドで新鮮な化粧品を提供し、独自の路線を走り続ける『LUSH』。1998年の日本上陸以来、多くのファンに愛されており、2019年6月には新宿駅前に4階建てのアジア最大となるショップが誕生。その勢いは増すばかりです。
前編では人気の秘密について、新宿店のショップマネージャーを務める飯村麗さんにお話しを伺いました。
人にも地球にも優しいブランドとして
————まずは、『LUSH』が世界中で支持され続けている理由について教えてください。
「『人にも地球にも優しい』というポリシーを掲げているからだと思います。このポリシーに共感し、『LUSH』の商品であれば安心してお買い物ができると、ファンになってくださるお客さまが多いと感じています。ですから私たちは理念を明確に設定しており、企業が目指すゴールをお客さまにも共有しています。
ちなみに、私たちが打ち出している考え方が『エシカル』です。『エシカル』とは、『環境だけではなく人、社会、地域など自分たちを取り巻くすべてのものに対して、良識な考え方を持ち行動しよう』という思想です。
そのため、『LUSH』では商品に使用する原材料を倫理的な方法で調達しながら、地球環境の保全にも取り組んでいます。また化粧品も手作りしており、パッケージレス商品の販売をしていることもこだわりのポイントです。余計な包みを除くことは、ゴミの削減につながりますからね。他にも、動物実験反対の意思も表明しおり、多くのお客様に共感していただいていると感じています」
————接客ではどのようなことを意識していますか?
「意識しているのは、お客さまにとって唯一無二のお店になるために最高の体験を提供することです。その体験がお客さまの心を動かした時に、『LUSH』 のファンになってくださったり、売上という形になって表れるからです。そのため企業ポリシーでもある『ブランドは人が作る』ということを念頭に、お客さまにとって心地よい立ち振る舞いやコミュニケーションができるよう人材育成にも力を入れています。我々は店舗こそが最大のメディアと考え、そこで得られる体験を何より重視しています」
「地球の上でビジネスをしている」感覚を大切に
————ポリシーを宣言するというのは、日本ではなかなか難しいことではないでしょうか?
「そうですね。過去には実際にネガティブな反応が起きたこともあります。しかし、ネガティブな意見は『私たちが取り組みたい問題に興味を示してくださっている』ということだと思うので、そういった意見も恐れてはいません。
私たちにできるのは『さまざまな問題について考えるきっかけ作り』だと思うので、どんな反応も決して悪いことだとは受け止めずに、発信を続けていくことが大切だと考えています」
————環境に配慮しているとのことですが、具体的にはどのような取り組みをしているのですか?
「パッケージレスの商品を作っており、パッケージがどうしても必要になる時には環境に配慮した素材を使っています。また、商品にタグを付けないこともこだわりのポイントです。使っている紙はたとえ少量でも、それは大切な資源ですからね。そこで『LUSH』では商品の情報が見られる『Lush Labs』というアプリを導入しています。
他にも今までは『店舗での体験を大切にしよう』と、実際に店舗でバスボムを溶かしたり、泡を作ったりしてお見せしていました。しかし水や資源について、さらに厳しく考えなくてはいけない時期がきていると感じています。私たちの商品の原材料は自然由来のものがほとんどですから、『地球の上でビジネスをしている感覚』を忘れずに、環境保全にはこれまで以上に力を入れて取り組んでいきたいですね」
新規のお客さまと『LUSH』を結ぶ、アジア最大級のお店として
————アジア最大のお店である新宿店の特徴を教えてください。
「人通りがとても多い場所に店舗を構えているため、何気なくご来店いただけるチャンスがあり『LUSH』を知らない方の集客にも成功していることです。
またフロアごとに異なる魅力を楽しめることも人気の理由だと思います。1階には生花、2階にはグッズ、さらに4階にはSPA。ちなみにSPAを取り入れている店舗は日本に2店しかありません。空間作りでは、さまざまな国や年齢の人が訪れるため、文字ではなくアイコンを多用していることがこだわりのポイントです」
————生花を取り扱っているのはなぜですか?
「『LUSH』の核にある『フレッシュさ』をより感じていただくためです。生花はオーガニックのお花を農家さんから直接仕入れしているため、今の気候でしか育たないお花が揃っています。『お店のなかでも四季を楽しめる』と好評ですね」
ファンを獲得するブランディングの極意
人にも地球にも優しいサービスを展開している『LUSH』。ファンを獲得するブランディングの極意をまとめると、以下の3つでした。
1.「エシカル」に基づいた取り組みや発信を行い、お客さまに共感してもらう
2.店舗でしかできない感動体験でお客さまの心をつかむ
3.日本の中心地、新宿で大型店舗を展開をすることで、ブランドとつながるきっかけを増やす
後編では『LUSH』が最も大切にしている、ショップスタッフの育成術に迫ります。
▽後編はこちら▽
「現場で働く人こそブランドを作る」逆三角形型の組織図で強い組織を形成する、『LUSH』の人材育成術に迫る>>