学びの姿勢を忘れずいつも全力。人との縁につながる仕事術とは【フリーランスのライフスタイル ヘアメイク・粟野千里さん】
フリーランスのなかでも業務委託として結婚式場やヘアメイク事務所と契約をして働く粟野さん。前編ではフリーランスになって生活面も収入面も余裕ができたこと、未経験のブライダル業界での技術の習得方法などをお伺いしました。
後編ではフリーランスになってからのお仕事の増やし方やインスタグラム経由で増えてきた個別のお仕事についてご紹介。また粟野さんの仕事に対する姿勢をお伺いすることで、長年多くの方から支持される理由がわかりました。
お話を伺ったのは…
粟野千里さん
パンメークアップスクール卒業。卒業後はヘアメイク事務所に就職し、ナイトセットを中心としたヘアスタイリングを担当。約1年半勤務した後2013年にフリーランスに転身。結婚式場やヘアメイク事務所と業務委託契約を交わしブライダルのヘアメイクを開始する。同時期に、美容師免許を取得するため美容の専門学校に入学。仕事と学業を両立させた。現在は合計3社の業務委託契約のほか、個人の依頼も受けつけており、年に数回は全国出張に行くことも。
Instagram：＠chisato_awano
こだわりを持つ花嫁さんが増えたことでフリーのヘアメイクにとってチャンスの時代に
伝統的な和のスタイル文金高島田の地毛結い。かつらが主流だが、地毛で結うことでナチュラルに。
――現在は3社との業務契約と個人からのご依頼があるとのこと。お仕事はどのようにして増やしていったのですか？
業務委託については仕事で出会った方に紹介していただいて契約が増えました。昔一緒に働いたヘアメイクの方やフリーのカメラマンさんなどから連絡をいただくことが多く、自分ではあまり営業に行ったりはしていません。仕事を淡々とこなすだけではなく、周りのスタッフともしっかりとコミュニケーションを取ってお話をすることで、私の経歴ややりたいことを認識してもらえていたのだと思います。いいお話があったときに私のことを思い浮かべてもらえることはうれしいですね。
さらに今年の初めくらいからはインスタグラム経由で花嫁さんから直接ご依頼のDMが来るようになり、全国出張に行く機会も増えました。
――インスタグラム経由でご依頼がくるようになったきっかけは？
トーンを揃えることや、スタイルとアップ、顔写真のバランスをよくするなど、詳しい方にアドバイスをいただき意識して投稿したところ、今年になってからご依頼が増えるようになりました。インスタグラム経由でご依頼をいただいた花嫁さんにご依頼までの経緯をお尋ねしたところ、コロナの影響で結婚式が延期になって、その間にいろいろと調べる時間ができたそうです。時間を掛けて好きなスタイルをいろいろと検索した結果、私のページにたどり着いたとおっしゃっていました。延期するまではヘアメイクを外部に依頼できるなんて知らなかったという花嫁さんも多いです。
個人的な感覚ですが、コロナの影響で制約が多い分、できるところにこだわりを持ち、型にはまらないスタイルを好む花嫁さんが以前より増えた気がします。今はフリーで仕事をするヘアメイク業界の方にとってアピールするチャンスなのではないでしょうか。私もこれからもっとインスタグラムに力を入れて個人のお客さまを増やしていきたいと思っています。
多くのファンを生むポイントは本番直前までベストなスタイルを探求し続けること
黒髪だからこそ「面のきれいさ」にこだわったスタイル。全体のバランスを大切にしている
――たくさんのご縁がお仕事につながったとのことですが、粟野さんご自身が次の仕事へつなげるために意識していることはありますか？
一回一回全力でやること、当たり前ですがそれが多くの方に喜んでいただける秘訣だと思います。たとえばリハーサルでつくったものに満足せずに、本番当日のヘアメイクを始める瞬間まで花嫁さんにとって一番いいスタイルとは何かということを考え続けています。ウェルカムスペースや出来上がったブーケを見てインスピレーションが湧くこともあるんですよ。たとえ式直前でも、よりよいスタイルが思いついたら花嫁さんに説明をして変更をすることも多々あります。
また、仕事が終わった後に家でひとり反省会をすることもしばしば。同じようなオーダーがあったときによりよいスタイルを作れるようにウイッグを使って練習することが多いです。何年経っても今日は完璧だと思えることって少なくて、常に改善点を探しながら仕事をしています。
――急な変更も多いとのことですが、そのときのお客さまの反応はいかがですか？
リハーサルでは当日までベストなものを探したいというお話をしているので、快く受け入れてくれる方が多いですね。毎回全力で仕事をしいている熱意が伝わったのか、「粟野さんって真面目で誠実な武士みたいですね」ってお客さまに言われたこともありました（笑）。そうして真剣に向き合った花嫁さんはインスタグラムで私のアカウントをタグ付けして何度もほめてくださったり、お友達を紹介してくださったり、そこから次の仕事につながることも多いです。お客さまにはいつも感謝の気持ちでいっぱいです。
人との縁を大切にいろんな場所で仕事の幅を広げていきたい
ロサンゼルスに行ったときに撮ったサンセットの写真。今後も仕事とプライベートどちらも充実させていきたいとのこと。
――今後どのような働き方をしたいとお考えですか？
今の生活に満足しているので今後職を変えたり、正社員になったりするつもりはありません。フリーランスは保証がない分不安定ではありますが、制約なくいろんな場所で働けること、人とのつながりで仕事が広がって行くことがすごく楽しいんですよね。私の性格上、1つの場所でずっと同じことをするよりはいろんなものに触れて、いろんなものを見たいと思う気持ちのほうが大きいのだと思います。
――それでは、現在のお仕事のなかで活動の幅を広げることは考えられていますか？
コロナの影響で仕事が減ったときに、知り合いのカメラマンやスタイリストと集まって作品撮りをしていました。趣味の延長だったのですがそこからまたモデルさんと知り合いになったり、仕事の依頼があったりしてここでも縁を感じましたね。ブライダルの仕事はもちろん大好きですが、今後はジャンルにとらわれずいろんな現場に行ってみるのも面白そうだなと思っています。
■ ブライダルヘアメイクとして長く活躍するための方法
今後は個人の仕事や全国出張も増やしていきたいという粟野さん。ブライダルヘアメイクとして長く活躍するための方法をまとめると、下記の3つでした。
１. 何年経っても現場で学ぶ姿勢を忘れない
２. 自分に合った仕事のやり方や契約相手を見つける
３. 本番直前までベストなスタイルを検討し、仕事終わりは次回に向けた反省を行う
ブライダルのヘアメイクとして安定して仕事が入る今でも反省や向上心を忘れず現場で学び続けることがお客さまとの信頼関係につながり、長く仕事を続けられる秘訣。プライベートや美容業界の仲間との交流を楽しみつつ、仕事にひたむきに取り組む姿勢が、多くの花嫁さんに指示される理由だとわかりました。フリーランスとして働くことに不安がある方は業務委託の働き方や、人脈の広げ方など参考にしてみてはいかがでしょうか。
