【子育て応援メソッド】営業が長引くなら店に子どもを連れて来れば良い。そうして生まれた「子連れ歓迎」ムード/Dayt. ディレクター 朝菜さん#2
美容業界で働くワーママ・パパに仕事と育児の両立について伺う「子育て応援メソッド」。前回に引き続き、「Dayt.」のディレクタースタイリストであり、二児のママである朝菜さんにお話をお聞きします。
出産後も美容師としてのモチベーションを維持し、一人目・二人目ともに早いタイミングで育休から復帰。一時期はサロンにベビーベッドを置いて仕事をしていたそうですが、今でもお客様やスタッフたちに見守られながら、小さなアイドルたちは元気いっぱいに育っています。
後編では、そんな自営業ならではの利点や、保活のコツ、ママさんが安心して通えるサロンづくりについてお聞きしました。
教えてくれたのは…
Dayt. ディレクター 朝菜さん
原宿のサロンを経て、2018年、のちにご主人となる悠馬さんと「Dayt.」を立ち上げる。同年、結婚&出産。2021年に第二子を出産し、現在は二人の女の子を育てるママ。長女の妊娠時から時短勤務を継続中。子連れにも優しいサロンとして、多くのママたちが通う。
何としても職場近くの保育園に入れるべく、申請書には第1希望しか書かなかった
――保育園を見つけるのは大変ではなかったですか?
私はそれほど苦労しませんでしたね。私たちが住んでいる渋谷区は働いている若い世帯が多く、働くママ・パパに対するサポートが手厚いんです。保育園も毎年新しくできるし、休日保育といって日曜・祝日も無料で預かってくれるシステムもあるし。
仕事柄、接客が長引くこともあるだろうから、そのときはサロンに子どもを連れて来られるように、とにかくお店から近い保育園が良くて。ここから歩いて2〜3分くらい、しかも自宅からも10分くらいの、サロンと自宅の通り道にある保育園にしか入れたくなかったんです。だから、申請書には認可保育園と認可外保育園それぞれ第1希望しか書きませんでした(笑)。どっちも外れる可能性も大いにあったので、博打でしたね。でも、私が早く職場復帰していたこともあって、無事に第一希望の保育園に入れることができました。
渋谷区は兄弟入園が強く、シンママと夫の単身赴任の次に優遇されるんですよ。だから、二人目のときも同じ保育園に入れるという確信があったので、同じく第1希望しか申請せず、見事通りました。
自宅・サロン・保育園が全部近いので、送り迎えのストレスはありません。
――ご主人とは育児・家事をどのように協力し合っていますか?
家事分担の割合でいったら主人の方が少ないかな。でも、私が長時間働けない分、主人が頑張って働いてくれているので、どっちが偉いとか、どっちの負担が大きいとか、そういう風に思ったことはないですね。同じ職場で働いているので、仕事への理解はあると思っています。一応、家事当番は決めているけど「今日は疲れてると思うから、私やっておくよ」という風に、そばで仕事を見ているからこそできるサポートはしたいなと。
主人は帰宅が遅い分、朝できることはやってくれています。子どもたちにご飯を食べさせたり、下の子のおむつを変えたり、ゴミ捨てをしたり、皿洗いをしたり。保育園に送るときも、私が上の子、主人が下の子担当なんです。
――ご主人との連携プレイはさすがです! では、一日の流れはどのような感じですか?
朝のうちに自分のことをしたり、家事をしたり。日頃のリフレッシュとして、近所のスタジオで朝ヨガすることも。ヨガ中は何も考えず、自分の心と体に集中するから、終わったあとはすごく気持ち良いんです!
子どもを連れてくるのが当たり前なサロンに
――ママになったことで仕事面でも良いことがたくさんあったと、以前Instagramで投稿されていましたね。
ママのお客様がめちゃめちゃ増えたんですよ。ママの紹介でまたママが来店してくださる、みたいな。接客中に子育ての悩みや家事のコツ、おすすめの遊び場などの情報をお客様とシェアできるので楽しいです。
あと、自分がママになったことで「スタイリングしている時間がないんです」という気持ちがすごくわかるようになりましたね。「この年齢のお子さんがいれば、そりゃ丁寧にケアできないよね〜」「でも忙しくてもママだって女性としてお洒落したいよね!」と両方の気持ちを汲んで、お手入れはラクだけどきちんと可愛くも見えるスタイルを提案しています。
――ママ客が増えたのは、Instagramなどで打ち出していたからというのもあるのでしょうか?
そこまで全面的にママ美容師を売りにしていたわけではないんです。もともと私のInstagramって美容師っぽくなくて、お客様のヘアスタイル写真もあまり載せていません。美容師本人のパーソナルな部分とか日常が見えている方がお客様もとっつきやすいのかなと思って、子どもの写真をいっぱい載せているんですけど、新規のお客様もそれを見て私がママ美容師ということを知ってくれている方が多いです。
――はじめて行くサロンの場合、「子連れOKかな?」「子どもに優しくしてくれるかな?」ときっと気になりますよね。
そうですよね。うちの場合は、自分たちの子どもがサロンにいることもあって、子ども歓迎なムードがあるから、きっとお子さんを連れて来やすいと思いますよ。実際、お客様のお子さんも一緒に来てここで遊んでいることも多いですし。
――サロンとしてママさんに対してどのような配慮をしていますか?
5階建ての一棟サロンでスペースが結構あるので、上の階で授乳したり、おむつを変えたり、ワンフロアを貸し切りにして、ゴザを引いて子どもたちのプレイルームにすることも。プロジェクターもあるので、アニメも流せます。
ただ階段が多いので、そこはスタッフ全員の気配りでカバーしています。入り口も階段を上がらないといけないので、ベビーカーを持ったり、一緒に手を引いて昇り降りしたり。割れ物のインテリアなどは、お子さんが壊しちゃって、その親御さんが気にして次に来店しづらくならないように、手の届かない場所に先に移しておくなどしています。
――スタッフさんたちもママさんへの配慮を兼ね備えているんですね。ママ美容師が働きやすい環境づくりなど、サロンとして取り組んでいることはありますか?
保育園のお迎えで気を使ってくれたり、サロンで子どもたちの面倒を見てくれたり、スタッフたちにはすごくサポートしてもらっているので、彼らに将来子どもができたときは、自分がサポートしてもらった分のサポートはしたいなと。自営業なので、給料面も自分たちで融通を利かせられますから、産休に入ったことでお給料が下がる、ということにはならないようにしてあげたいですね。
システムでガチガチに決めるより、そのときの状況を加味して一緒に話し合って決めていくスタイルかな、うちの場合は。子育てと両立しやすい環境をこれからいくらでもつくっていけると思っています。
――最後に、子育てと美容業を両立するための秘訣を教えてください。
私個人の考えなんですけど。私には私の人生があるので、子育てに支配された感じで疲れてしまうのも嫌で、子育ても仕事もどっちも楽しみたいし、自分に正直になって納得できる選択をしたい。自分自身が仕事や普段の生活で「楽しい!」と感じられるよう、頑張りすぎず、気持ちになるべく余白を持たせて、毎日をポジティブに愛を持って生きていきたいと思っています! その結果として「子どもや家族、仲間が幸せ」であることが理想です。
朝菜さんがママも美容師も楽しめている3つの理由
お子さんや家族のエピソードを楽しそうに話してくださった朝菜さん。子育てと仕事の両立に息苦しさを感じることのないように。そんな想いが伝わってきました。
1.仕事が終わらなければ、子どもはサロンで面倒を見る
2.パートナーを理解し、家事・育児はできるときにできる方がやる、というスタンスでいる
3.ママとなって気づけた視点を美容業に活かしている
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄