美容師免許なしでもシャンプーはできるの? 知っておきたい美容師法と法令違反

美容室やヘアサロンで行なわれるカットやパーマ、カラーなどは高い技術を要するため、美容師免許を持つ人のみ施術を認められています。しかし、シャンプーは誰もが日常的に行なっているため、美容師資格がない人でもできるのではないかと思われることがあるようです。

美容師の免許がなくても行なえる施術はあるのでしょうか。美容室などで働く際に知っておきたい美容師法と、法令違反となる行為について解説します。


美容師免許なしでもシャンプーはできるの?

結論から言うと、美容師免許を持たない人は美容室などでシャンプーを行なえません。シャンプーになると施術者が変わる場合が多いので、「シャンプーは美容師資格がなくてもできる」と誤解されてしまうのかもしれません。

どのような目的であっても、お客様にシャンプーを行なうときは美容師免許が必要です。法律上の扱いと厚生労働省の見解などについて解説します。

美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない

美容師法第6条では、「美容師でなければ、美容を業としてはならない」とされており、料金を徴収するか否かを問わず資格が必要としています。

美容師法では、パーマやカット、カラーやメイクなどを美容行為の例として挙げているため、シャンプーは美容行為に該当しない、つまり無資格でも可能と捉えられることがあるのかもしれません。もちろん、美容所で提供する美容行為は美容師資格が必須であり、シャンプーも同様です。

引用元
厚生労働省 美容師法概要

資格の緩和が提案されたこともあった

2020年3月に、トータルビューティサロンを経営する企業が厚生労働省へ「無資格でのシャンプー施術を認めてはどうか」と提案しました。美容室などで働きながら美容師資格を目指す学生がシャンプーやマッサージなどの補助業務を行えるように求めたのです。

厚生労働省は検討の結果、美容師資格を持たない人がシャンプーを含む美容行為を行なうことは「公衆衛生上適切な処置とは考えていない」と回答し、提案を却下しました。

引用元
内閣府 提案内容に関する所管省庁の回答

無資格のアシスタントができる仕事とは?

美容室などでは、美容師の専門学校へ通っている学生などの無資格者をアシスタントとして雇用する場合があります。無資格者なのでお客様への施術は、シャンプーを含めていずれも行なえません。

無資格のアシスタントができる仕事は、受付や道具の準備、洗濯など、お客様の身体に触れない業務のみです。なお、有資格も働きはじめたときはアシスタントからスタートしますが、この場合はお客様への施術が認められています。

知っておきたい美容師法と法令違反

美容師法では、美容師が行なえる施術や、美容師による美容行為を認めている場所、美容師になるための要件、管理美容師の設置義務などについて定めています。これらの法令に違反した美容室側あるいは本人は、罰則を受けなければなりません。

また、美容行為として認められる施術が増えることもあるため、美容師になる前もなった後も美容師法についてしっかり知っておく必要があります。

e-GOV 美容師法

美容所以外の施術は基本的にNG

美容師法第7条では「美容師は、美容所以外の場所において、美容の業をしてはならない」とされており、基本的に美容室などの美容所以外で美容師が施術を行なうことを禁じています。

ただし、「法令で定める特別の事情」がある場合は例外です。厚生労働省では、次の3点に該当する場合に美容所以外での施術を認めています。

1. 疾病等により美容所に来られない者に対して行なう場合
2. 婚礼等の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に行なう場合
3. 上記1あるいは2を満たす出張専門の美容師である場合

なお、出張専門の美容師には、訪問美容師が挙げられます。

引用元
厚生労働省 美容師法概要

訪問美容師とは? 仕事内容を紹介|美容師免許だけあれば働ける?

管理美容師不在が違反となる場面とは?

美容師法第12条3では、「美容師である従業者の数が常時2人以上である美容所の開設者は、当該美容所を衛生的に管理させるため、美容所ごとに管理美容師を置かなければならない」と定めています。

管理美容師とは、美容所における公衆衛生と衛生管理の責任者のこと。美容師免許取得後3年以上の経験を積み、所定の講習会の課程を修了した人がなれます。

自分1人で美容室を経営している場合には問題ありませんが、自分を含めて美容師が2名以上在籍する場合は管理美容師を設置しなければなりません。管理美容師設置義務に違反した場合は、30万円以下の罰金が科せられます。

管理美容師については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

管理美容師の免許とは? 資格取得に必要な2つの条件や将来性、廃止のウワサなどについて解説

まつエク施術が許されているのは免許取得者のみ

まつエクは美容師免許取得者しか施術できません。根拠は、2017年、経済産業省および厚生労働省が、まつ毛エクステンションは美容師に認められている「美容」に該当すると公表したことです。

美容師法第2条では、「容姿を美しくすること」を美容と定義しており、経済産業省および厚生労働省では「通常首から上の容姿を美しくすること」と認識しています。そのため、目元への施術であるまつエクも美容にあたると認めたのです。

引用元
経済産業省 まつ毛エクステンション施術に係る美容師法の取扱いが明確になりました

まつエクの資格については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

アイリストになるのに必要な資格は?専門学校へ通わなければならないの?

眉カラーは薬事法でNG!

カラーリングした髪の色に合わせて眉毛を染めるのはNGです。薬事法では、医薬品等を適正に使用しなければならないとしており、髪用のカラー液を眉毛なども含めた髪以外の部位へ使うことは不適切な行為にあたるからです。

また、カラー液は毛髪に色を入れ込むための強い薬剤を使っており、薬剤が顔に付着してしまうとかぶれやただれの原因になります。とくに皮膚の薄い目の周辺に使うのは、非常に危険な行為です。眉カラーを希望するお客さまには、眉用のマスカラなどをおすすめしましょう。

引用元
e-GOV 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

飲食のサービスはどこまでOK?

美容室などでは、お客様にリラックスしていただくために、コーヒーやお茶などを提供する場合があります。このようなサービスを行なっても問題ないのでしょうか。

飲み物や食べ物を提供するお店は、原則「食品衛生法」による「飲食店営業許可」が必要です。飲食に係る料金を徴収しない場合は「食品等事業者(飲食業)」と見なされないため、営業許可がなくても飲食物の提供を行なえます。

つまり、美容室で飲み物を無償提供する程度ならば、営業許可がなくても問題ありません。ただし、美容室にカフェを併設していて、そちらで飲み物や食べ物を販売している場合は、飲食店営業許可が必要です。

また、飲み物を無料で提供していても、原材料費が高いと施術料に飲食代が含まれているのではないかと疑われることがあります。そのため、水やお茶などの安価な飲み物を提供する程度にとどめておくと安心です。

引用元
e-GOV 食品衛生法

立入検査を拒否するのもNG

保健所などによる立入検査を拒んではなりません。美容師法第14条にて、都道府県知事による立入検査の実施を認めているからです。都道府県知事が必要と認めた場合、保健所職員は美容所内で安全衛生基準が守られているかを検査できます。

立ち入り検査でチェックされる項目は、消毒設備などが適切に設置されて清潔に保たれているか、採光や照明は適切か、換気が安全に施術できる状況か、床や椅子の台数などが構造基準が届け出と相違ないかなどです。

なお、立入検査を拒否すると法令違反となり、処分が下されます。


法令違反したらどうなるの?

美容師法第18条では、美容師の免許を持たずに施術を行なった場合や、美容所の開設および変更の届け出が適切に行なわれなかった場合、立ち入り検査を拒否した場合などに「30万円以下の罰金に処す」と定めています。

なお、美容師法および厚生労働省では、罰金以外の処分も決めているので注意が必要です。

たとえば、美容所、あるいは例外として施術を認められている場所以外で施術を行なった場合や、充分な衛生管理をしなかった場合は、業務停止処分が下されることがあります。業務停止処分を無視して働き続けた場合は、美容師免許を取り消されてしまうことも。

また、美容室においては、閉鎖処分を下されることもあります。たとえば、管理美容師の設置義務違反、美容所として求められる衛生的な措置や施設設備の不備、業務停止処分を受けた美容師の勤務などが発覚した場合です。

e-GOV 美容師法
厚生労働省 理容師・美容師の懲戒処分等の基準

美容師法を理解して違反を防ごう

美容師法は、美容師資格取得者に対して、お客様の髪や顔への施術を認めている法律です。資格を持った美容師が安全かつ衛生的に適切な施術をするために、最低限必要な決まりを定めています。

美容師免許を持たない人が、シャンプーやまつエクを施術すると法令違反となり、罰則を受けることになるため注意が必要です。また、美容師免許を取得していても、施術場所などを違反した場合も処分が下されます。美容師法を理解したうえで、美容室の業務にあたりましょう。

引用元
e-GOV 美容師法
厚生労働省 理容師・美容師の懲戒処分等の基準
e-GOV 食品衛生法
e-GOV 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
経済産業省 まつ毛エクステンション施術に係る美容師法の取扱いが明確になりました
厚生労働省 美容師法概要
内閣府 提案内容に関する所管省庁の回答
厚生労働省 染毛剤、脱色剤及び脱染剤の使用上の注意について


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