管理美容師の免許とは? 資格取得に必要な2つの条件や将来性、廃止のウワサなどについて解説
美容師の中に、管理美容師という資格があることをご存知でしょうか。一般的には聞き慣れない資格かもしれませんが、美容室を安全に運営するための知識を得た美容師に与えられる資格であり、独立開業するためにも必要な資格です。
管理美容師とは、どのような資格なのでしょうか。そして、この資格を得るための試験はどのような条件を満たせば受けられるのかをご紹介します。
管理美容師の免許とは?
管理美容師という言葉を聞くと、堅くてむずかしい資格とイメージされる方もいることでしょう。管理美容師は、美容サロンになくてはならない存在です。
管理美容師の資格というのはどのような業務をおこなうために必要であり、実際にはどんなものの管理をしているのでしょうか。
あわせて管理美容師は、美容室のなかで、どのような役割を果たすことが求められているのかを解説します。
そもそも管理美容師とは?どんな仕事をするの?
美容室ではハサミなどの刃物を使用して、お客様の髪を整えます。パーマ液やカラーリング剤などの強い薬剤も、毎日のように使用しているものです。
お客様の髪や肌に直接触れて至近距離で施術をおこなう仕事でもあることから、各種感染症を媒介したり、美容師自身が感染してしまったりするリスクもあります。
これらのリスクを防ぐための管理をおこなうのが管理美容師です。そもそも管理美容師というのは、お客様の安全を守るために公衆衛生と衛生管理に関する知識と技能をもった美容師のことをいいます。そして、サロン内の衛生管理と環境整備をおこなうという大切な役割も担っているのです。
美容室や理容室を衛生的に管理させるために必要な資格
美容師法に定められている美容室の衛生管理の責任者となる資格が管理美容師です。美容室にいる従業者の数がつねに2人以上いる場合には、必ず管理美容師を置く必要があります。
サロン内が清潔に保たれているか、また必要とされる消毒設備を設けているか、じゅうぶんに明るいか、換気がされているかということを確認するのがおもな仕事です。美容室の衛生状況をつねにチェックしておき、都道府県が条例で定められている衛生上必要な措置が守られているかどうかを確認しなければなりません。
美容室内の環境を整えたうえで衛生を確保し、そこで起きてしまいかねない感染症や事故などを防ぐことが役割となります。具体的には、お客様の皮膚に接するタオルやクシ、ハサミなどに、清潔を保つための消毒を徹底し、皮膚に接するタオルや首巻きなどを使いまわさないことなどが法律で定められているのです。
それぞれの都道府県の条例によって作業衣の色の指定やマスクの使用、未消毒の器具の扱いなど、細かな決まりが定められています
サロンを開業する場合に必要な資格?
管理美容師は、一人で美容室を経営しているのであれば必ずしも必要な資格ではありません。しかし誰かを雇用するとなると、必要な資格です。雇われて美容師の仕事をする場合でも、管理美容師を持っていることで給与が上がったり店長に昇格したりする可能性があります。
「いつかは自分のサロンを持ちたい」「まつエクサロンを開きたい」というような夢への第一歩にもなるでしょう。そのため、機会があったら取得しておくのがおすすめです。
管理美容師がいないと罰則が適用されることも
美容師が2人以上在籍している美容室やサロンの経営者は、開業時に管理美容師がいることを届け出る必要があります。
管理美容師がいない状態で経営を続けたり、管理美容師がいることを保健所に届け出たりしないと、30万円以下の罰金を課されます。また、実際には管理美容師が在籍していないのに、虚偽の申告をするのも罰金の対象になります。
保健所は定期的に衛生検査を実施して、美容室やサロンの衛生環境・管理美容師の有無をチェックするので、バレないと思って虚偽の申告をするのは危険です。
ちなみに、美容室経営者が管理美容師である場合も、「管理美容師」として届けを出せます。管理美容師を雇用していない状態で、罰金対象となるケースを避けるためには、経営者自らが資格取得しておくことも考えるべきです。
管理美容師の詳しい罰則規定については、以下の記事も参考にしてみてください。
サロンに管理美容師がいないと罰則が適用されることがある? 美容室開業に管理美容師が必要になる場合とは
管理美容師の免許をもつメリットは?
管理美容師の免許をもつメリットは、衛生管理についての知識を習得でき、自分の就職・転職に役立つことです。
美容師になるための専門学校や短大・大学では、理容の技術面を重点的に学べる一方で、衛生管理の知識が疎かになってしまうことも。
前述した通り、美容師が2名以上在籍している美容室やサロンには、管理美容師の在籍が必須です。衛生管理の知識と資格があれば、優先的に就職できるでしょう。
管理美容師の資格を取得するにはどうすればいいの?2つの条件について解説
美容室を開業するのに必要な管理美容師資格ですが、受験には2つの条件があります。ここでは、管理美容師資格試験の受験に必要な条件、資格取得までの流れを解説します。
管理美容師資格の取得を考えている方は、参考にしてみてください。
条件1.美容師または理容師としての実務経験|3年以上の従事
美容師の資格を取得したのち、3年以上の美容に関する実務経験があることが、この資格を取得するための必要条件とされています。人によっては「美容師の免許を取った時にそのまま、管理美容師の授業も受けさせてくれたらいいのに」と思うかもしれません。
しかし美容師としての知識と技術を生かして、実際の美容院やサロンなどで働いてみなければわからないことも少なくありません。いくら熱心に講習を受けたとしても、どの場面にどのようなリスクがあるのかが実感できなければ、現実に即した知識や技能は身につかないと考えられます。
そのため、3年の実務経験が必要とされているのです。
条件2.都道府県知事が指定した講習会を受講する
美容師として3年の実務経験をしたうえで、さらに国が定めて県が指定した18時間の講習を終了することで、管理美容師の免許を取得できます。
講習は3日間のなかで、18時間かけておこなわれるものです。最初に公衆衛生についての講義を4時間受けます。そして、そのあとに美容室の衛生管理についての講義を14時間で受けなければなりません。
東京都|管理理容師・管理美容師資格認定講習会
管理理容師・管理美容師資格認定講習会は、公益財団法人理容師・美容師試験センターが開催しています。2022年の東京都における講習会の日程は、9月12・13・14日に開催され、6月10日までが講習会の応募締め切り期限となっています。
講習会への応募に必要な書類や受験料金は、以下の通りです。
・必要書類:美容師免許、受講申込書、美容業務従事証明書、証明写真(4.5×3.4cm)
・受験料:16,000円
以上の必要書類を準備して、受験料を支払えば、講習会への応募が完了します。とくに美容師免許証や美容業務従事証明書は、受験資格を満たしているかどうかを判断する重要な書類です。忘れずにコピーして、申請書類に貼り付けましょう。
講習会ではどんな内容を学ぶの?試験はある?
この講習会では、美容室の環境を整えつつ、しっかりと衛生を確保したうえで、感染症や事故などを防ぐ方法を身につけなければなりません。
公衆衛生で学ぶことは「公衆衛生と衛生行政」と「感染症」についてです。衛生管理では「衛生管理総論」「店舗の構造設備」「店舗の衛生管理」「従業者の健康管理」「消毒法とその用途」「美容業務に使用する医薬部外品等」「事故等の対応」について学びます。
ほかにも「衛生管理計画と自主点検」「自主点検による問題点と改善策」「美容業に関わる各種の届出・申請」「衛生水準向上のための支援策」など、学ぶことは多いです。とくに試験はなく、この講習をすべて履修して衛生管理と自主点検後の改善策のレポートを提出することで資格取得となります。
管理美容師の資格取得までの流れ
管理美容師の資格取得までの流れを説明すると、管理理容師・管理美容師資格認定講習会センターのホームページをクリックして、必要書類を申請します。
必要書類を申請する方法は、Webと郵送の2種類があります。「管理理容師・美容師資格認定講習会開催案内(令和4年度)」のページから、どちらかを申請しましょう。
Web申請は内容をネット上で入力するだけで手軽ですが、郵送申請はエントリー用紙を印刷して郵送して、はじめて必要書類を申請できます。
必要書類が届いたら、不備がないように申請をして、講習会を受講します。講習会後に修了証書を受け取ったら、晴れて管理美容師として活躍できるという流れです。
管理美容師の講習会を受講するための、詳しい条件やメリットについては、以下の記事を参考にしてみてください。
管理美容師の講習会を受講するために必要な条件とは? 受講するにはどうすればいいの?
管理美容師の将来性は?
管理美容師は美容室やサロンを経営している人にとって、まさに求めている人材です。
実際に、美容師専門の求人サイトにおいては、約5件に1件の求人が管理美容師の求人という現状があります。将来的にも、美容師の求人がある限り、管理美容師の需要は大きいままでしょう。
また、管理美容師を条件としていない求人でも、「管理美容師歓迎」と記載されている求人も多いです。このことから、希望する美容室に就職・転職を希望するなら、管理美容師資格をもっているメリットが大きいといえます。
管理美容師廃止のウワサって本当?
実は、管理美容師資格は、事業仕分けで2010年に廃止される計画がありました。資格の廃止をめぐっては、以下の点が争点になったそうです。
・従業員が1人だけの美容室やサロンは対象外になっている
・講習会の時間が18時間しかない
・合格率が8割を超えている
事業仕分けの結果として、管理美容師資格は廃止が決定しましたが、2022年の現在になっても資格は廃止されていません。
管理美容師資格が廃止されていない理由は、法律の壁があるからです。美容師法で定められている資格であるため、法改正をする必要があるのですが、いまだに法改正されるに至っていません。
衛生管理の面で重要な意味合いをもつ管理美容師資格は、実際の理容業界の現場で「必要とされている知識だ」ということが、共通認識とされているからでしょう。そのため、管理美容師資格の廃止は、現実的に見て起こらないと推測されます。
現実問題として、求人サイトで「管理美容師」を求人に記載する事業者も多いので、管理美容師資格を取得する重要性は無視できないでしょう。
管理美容師の資格取得には条件がある!最新情報をチェックしよう
今回ご紹介した管理美容師という資格を取得するためには、美容師免許をとってから3年以上美容業務に従事しているということが絶対条件です。さらに厚生労働大臣が定めている基準に従って、都道府県知事が指定している講習会の課程を修了していなければなりません。
講習会の内容や受講料などは、必ず各自治体の情報をチェックしてください。郵送での申し込みだけでなく、インターネットでの申し込みができる場合もあります。そして、定められた期間に理容師美容師試験研修センターへの事前エントリーが必要な場合もあるのです。そのため、管理美容師の資格を取得するときには、都道府県のホームページなどで確認するようにしましょう。
出典:
厚生労働省|美容師法概要
公益財団法人理容師美容師試験センター|管理理容師・管理美容師資格認定講習会開催案内(令和4年度)
東京都福祉保健局|管理理容師・管理美容師資格認定講習会(令和4年度)
公益財団法人理容師美容師試験センター|過去の試験実施状況