インスピレーションのためのソースになるアートブックを探る!
一冊一冊がその個性を主張しつつも、美しい芸術を表現するアートブックたち。スタイルブック作成の参考にしている方も多いのではないでしょうか?
そんな数多くあるアートブックの中でも特にユニークな洋書を、今回はジュンク堂池袋本店洋書担当の鎌田伸弘さん監修のもと、ご紹介いたします。
“The Stanley Kubrick Archives”
TASCHEN
鮮やかな赤にシックな黒のデザイン、がっしりとしたハードカバーの装丁。もうすでに一流の風格が感じられますね。映画好きなら誰もが知っている、あの有名なスタンリー・キューブリック監督。彼の映画の舞台裏に迫るアートブックが日本にもやって来ました。
「ロリータ」(Lolita, 1962)「時計じかけのオレンジ」(A Clockwork Orange, 1971)「シャイニング」(The Shining, 1980)など数々の大ヒット映画を生み出した、映画製作の巨匠であるキューブリックは、その圧倒的な映像美と独特な世界観で今なお人々を惹きつけてやみません。
キューブリック作品の印象的な赤
キューブリックの監督する映画で印象的なもののひとつとして、その独特な色彩の美しさが挙げられます。作中に何度も登場し、周囲とのコントラストが美しい鮮やかな赤。触れてはいけない有毒物や警戒色のような怪しげな色味は、思わず息をのむ魅力的なもの。これはシーンとして印象的に描かれている、性と暴力に非常に強い関係があると言われています。赤は血や危険、強さなど、パワーを秘めたものを表すことが多い色彩。その力強い赤にキューブリックは人の“生と死”を重ねて描いたとされています。
いたるところに散りばめられた、数多くの赤。映画としてではなく、切り取った写真として見てもその美しさは色あせることがありません。
CG不要のキューブリックマジック
キューブリックの映画の中でも、「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey,1968)はSF映画の金字塔と言われています。凄いのはCG技術なんてまったく無い時代に、宇宙で撮ったとしか思えない映像に仕上がっていること。死後に「アポロ月面着陸の映像はキューブリックが捏造した」という噂が出まわってしまうほど、彼の映像技術は素晴らしいものでした。このアートブックにはそんな有名映画たちのセットのデザインなどの記録も掲載されいるので、彼の撮影技術を参考にできるかもしれません。
完璧主義者の秘密が分かるかも?
何度も何度も同じテイクを撮り続けたり、監督だけでなく映画製作の全般を手がけたり、そのこだわりっぷりは広く知られ「完璧主義者」とまで言われたキューブリック。その強い意志は、手間隙かけて作らせたセットを「思っていたほどじゃないね」とバッサリ切り捨ててしまうほどであったそうな。ここに掲載されている、幾度と無く書き換えられた手記や脚本のスナップからも、その思いはよく伝わってきます。そんな彼の制作に手を抜かない姿勢は、写真や映像のみならず、物作りのひとつの姿として参考にすることができるでしょう。
Life on Instagram
Penguin UK
キューブリックの緻密に作りこまれた芸術の次はこちら。正反対の、身近にある自然な芸術の世界。今や誰もが知るインスタグラムがとうとう本になって登場です。ジュンク堂の鎌田さんが「インスタを見直すきっかけになった一冊」とお話くださったこちらのアートブック。その中身をご紹介いたします。
日常も立派なアートに
写真を撮る方も撮られる方も、一般の人が多いインスタグラム。しかしなんの気無しに撮影されたものでも、人目を引くものが多くあります。居眠りしている人の写真や鏡を使って自撮りしている人の写真、笑っている子供の写真など、日常の1シーンを切り取っただけなのに、驚くほど物語性のある写真たち。これらの写真の多くは、人々が住むこの日常で生まれ、芸術へと進化したものたちです。だからこそ構図や色味などの撮影のテクニックは、学ぶことも多い作品かもしれませんね。
高尚なものとされがちな芸術。でも本当は堅苦しいだけじゃなく、気取らず血の通った芸術もあるのだと、この写真たちは教えてくれます。
多種多様!国境を超えた芸術たち
80万人を上回るユーザーが世界各国で利用するインスタグラム。当然のことながら、その撮影地や撮影者の国籍はさまざまです。撮影者にとっては当たり前の風景でも、見る人にとっては不思議な世界に見えたり、同じ風景でも撮影者が変わったことでまったく違う場所に見えたり。そんなことがあるからこそ、インスタグラムは人々が住むこの世界を、色んな角度から再確認させてくれます。
そういった意味でもこの作品は、他者やその周囲の世界への理解を深めるツールと言えるでしょう。
ご紹介した作品はいかがでしたでしょうか?まったく違うタイプの2冊をチョイスしてみましたが、どちらも立派なアート。見て楽しむもよし、学ぶもよしの素敵な作品でした。そして書店によりますがこの2冊は、日本でも十分に購入が可能です。(今回ご協力いただいたジュンク堂池袋本店さんは在庫数わずかですのでお早めに!)
芸術への理解を深めるためにもぜひ一度手にとってみることをおすすめいたします。
ご協力いただいた店舗
ジュンク堂書店池袋本店
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東京都豊島区南池袋2-15-5
月~土…10:00~23:00 / 日・祝…10:00~22:00
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