定着率を上げて繁盛店へ。プロが教える優秀な人材確保の秘策 #2
美容サロンを中心にコンサルティングを行っている、社会保険労務士の東久仁子さんご登場!
時間をかけて育てた優秀なスタッフが辞めてしまうのは、経営者にとって大きな損失ですよね。とくに女性スタッフを多く抱える職場では、おめでたいはずの結婚や出産を素直に喜べない、なんてことも少なくありません。
また、働く女性にとっても、キャリアを捨てて家庭に入るのは勇気が要るもの。いざ、復帰したくても条件に合うところが見つからないのではないか、不安定なアルバイトしか見つからないのではないか、という不安の声をよく聞きます。
ライフスタイルが変化しても女性が自分らしく働けて、お客様にも愛されるサロンづくりのためには、経営者には何ができるのでしょうか?
そこで、美容サロンの現状に詳しい東久仁子さんにご意見を伺います。ぜひ、参考にしてください!
子育ても仕事も両立したい女性を応援するプラン
社会保険には経営者にとってもメリットが大きい制度がたくさんあると話す社会保険労務士の東久仁子さんに、美容サロンなど女性が多く務める企業のオーナーが、ぜひ、押さえておきたい制度をあげてもらいました。
「まず、『両立支援制度』ですね。文字通り、育児や介護と仕事が両立できるように支援するために作られた法律『育児・介護休業法』に基づいて設けられた制度なのですが、お休みだけではなく、労働時間の短縮なども取り入れやすいよう考えられています」
中小企業の場合、従業員が育児休業を取得して復職すると、企業に『両立支援助成金(育休復帰支援コース)』60万円が支払われる仕組みなのだとか(1企業2人まで支給。無期雇用者1人、有期雇用者1人が対象)。
最近では、従業員約30名のうち7割が女性という数店舗展開の美容室オーナーに導入サポートをしたところ、それまで、育児休暇を取得したのに復帰しないスタッフや、復帰してもすぐに辞めてしまうスタッフもいたのに、定着率が大幅に改善したと喜ばれたそうです。
具体的には、対象者一人一人について『育休復帰支援プラン』を作成するところから始まるのだそうですが、肝心なのは、そのプランの実施を公表すること。
「育児休暇や子育て中の遅刻や早退は、『周りに迷惑をかけそうで気兼ねする』という人も少なくないのですが、誰でも平等に利用できる制度ですし、戻ってくるのが前提であると同僚に発表するだけでも、気持ちが楽になるものですよ」
スムーズな復帰には、休業中のフォローを
『育休復帰支援プラン』を作成する上でもう一つ忘れてはいけないのが、休業中のフォローなのだそう。
「職場や社会と離れている時間が長くなると、『自分はもう必要ないのではないか』『元のように働けないのではないか』といった不安が生じやすいのです。ですから、定期的に職場の情報を提供するという流れも組み込みました。一見シンプルな方法ですが、『つながり』を絶たないこと大切なんです」
また、育休中に担当のお客様のご予約だけは受けるという提案もされたそうです。
「体調など無理のない範囲で、例えば、月に一人や二人でも、常連のお客様のためにだけお店に来て、数時間だけ働ける仕組みを作ることもできるのです。育休中に担当のお客様が離れる心配が減れば、お店にとっても損失になりませんし、本人も勘が鈍らない。何より、お客様にも喜ばれるのではないでしょうか」
(注※但し、両立支援助成金(育休復帰支援コース)を受給するためには育休中は完全休業であることが求められます。)
なお、育児ではなく介護の場合も従業員ごとにプランを作ることができるそうです。
「両親の介護などは女性の役割になりがちですが、特にベテランになってからの離職は、一般的に復帰が難しいもの。積極的に制度を活用していただきたいですね」。
いろいろな働き方をサポートできるように
「他にも、『キャリアアップ助成金』や『キャリア形成促進助成金』なども、ぜひ活用していただきたい制度です」。
簡単にいうと、『キャリアアップ助成金』は、パートやアルバイトの従業員を対象に、
○正社員化コース、○人材育成コース、○処遇改善コースの中にある取組みを行うことで、経営者が助成金を受給できる制度のこと。
例えば、フルタイムでは働けないからとパート雇用しているスタッフを、前述の『短時間正社員制度』を導入して短時間正社員に、またはアルバイトスタッフを正社員にするといった方法があります」
こちらは、『育児休業』や『介護休業』と異なり、短時間しか働けない理由を問わないのだとか。一方、『キャリア形成促進助成金』には、評価制度を導入することで助成金を受給するができるものなどがあるそうです。
「働き方も多様化していますが、ライフスタイルや事情に合わせた働き方ができて、しかも社会保障もあれば安心して働けるし、評価制度や研修が充実していれば技能も上がるし、モチベーションも高まりますよね。もちろん、経営者からの配慮やサポートあってのことですが、それを行うことで、店全体もスキルアップして繁盛するのですから、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいです」
社会保険労務士は、社会保険制度の説明や助成金の申請をするために、個々の状況に合わせて、最適な活用方法をアドバイスしてくれるのだそうです。
難しいことや面倒なことはお任できるそうなので、ぜひ、一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
取材・文/あどわいず・橋本弥司子
写真提供/Azex社会保険労務士事務所
イメージ写真/AJHAJHA
Profile
東久仁子さん
社会保険労務士。Azex社会保険労務士事務所 所長。
大阪生まれ東京育ち。百貨店での販売職、メーカーでの商品企画・営業職などを経験後、40歳になって一念発起し、社会保険労務士の国家資格を取得し東京都で開業。以来10年にわたり、労務管理の専門家として、女性従業員がライフスタイルに合わせて安心して働き続けることできる仕組みづくりを提案している。特に近年は、美容サロンや医療・福祉・介護業等で、産休・育児休業をスムーズに取得し復職できるための相談を多く受け、講演会などでも活躍中。
Azex社会保険労務士事務所
https://www.facebook.com/Azex.sr/
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