トレンドを創る人Vol.13 Belle・堀之内大介さんが大切にしたい“人の心” #2
表参道、原宿、銀座、そして吉祥寺と4店舗を展開する人気サロンBelle(ベル)。オーナーの堀之内大介さんが、修業時代からずっと共に歩んできた飯田尚士さんと二人三脚で立ち上げ今年で7年になります。
二人の代表が創り出す、絶妙な空気感のあるヘアスタイルはもちろんのこと、一軒家に緑あふれるサロンづくりでも注目です。第二弾では、Belleを立ち上げてから今までどう変わってきたのか。大切にしてきたことは何なのか? クローズアップしたいと思います。
目指したのは「人にやさしいサロン」
――独立したいと思ったのは、いつ頃だったんですか?
「28歳のときですね。思い立ってから2年間かけて話をして会社を説得し、31歳で辞めました。(Belle共同経営者の)飯田も一緒です。表参道界隈で、なおかつ一軒家でというこだわりがあったので、物件探しには時間をかけました。何より大事にしたかったのは、人がいて気持ちがいい空間づくりでした。
お客様を大事にして、なおかつスタッフも大事にする。それまで美容師を続けてきて思ったのは、人がいないとサロンはダメだと。お金じゃない、人が抜けていくといずれ店はつぶれる…という危機感を持っていましたから、自分たちが店をつくるときはそこを大事にしたいと思ったんです。
作品づくりも同じで、当時は僕らの世代の美容師がどんどん新しいブランドを出店していたときでもあったので、フツーにやってたらダメだと。飛び抜けすぎても、ナチュラルすぎてもダメ。赤文字と青文字が重なって紫文字くらいの(笑)一般の女性たちがギリギリ真似できるデザインを目指そうと決めました」
兄弟より長いつき合いだからこそ
――飯田さんとは前々店からずっと一緒なんですよね。
「はい。最初のお店からずっと一緒で、もう20年くらいつき合っていますね。僕からすると“きょうだい”みたいな間柄です。どちらが兄とか弟ではなくて。実の兄弟より長く一緒にいるから、ある意味、家族みたいなものだと思います。
(美容室経営での)二人代表ってたまに聞きますが、1、2年程度のつき合いでは絶対に無理だと思います。芯の部分がわからないですから。どこかが同じだから一緒にやっていけるし、美容師として育った環境が同じだからリスペクトもできる。
僕たち、作品づくりも売り上げもずっと互角で来たんですよ。すべてに対して同じであまりぶつかることがない。でも性格は真逆かもしれません。
僕は人が好きなタイプ。飯田は、人は必要だけどそのためにはお金も必要だよねというタイプで、いい意味で経営者向きです。僕はスタッフなど、つねに人を見ていますが、お互いにそれぞれの仕事をやりながら、まかせっきりにしないことが7年続いた理由かもしれません」
自分らしい背中を見せ続けていきたい
――前回(#1)、自分らしいヘアスタイルを求めたのも独立の理由だと言っていましたよね。
「それは独立してBelleを立ち上げたときに、自分自身が一番進化させたところです。(ZACCの)大野さんの作品が本当に好きだったので、それを追い越したいとガムシャラになっていたときは辛かったんですよね。
でもあるとき追い越すのをやめてそこを通り抜けたら、つくることが楽しいことに変わりました。それからBelleっぽさって何なんだ? と考えて、うちの場合は流行も大事だけど、お客さんが無理しなくてもやり続けられるヘアデザインでなくてはならない。そこで勝負しないと、大型店には勝てないですからね。
今、表参道、原宿、銀座、吉祥寺と4店舗あって、最近は教育面も6人の幹部たちにまかせているんです。まだまだスタイリストよりアシスタントのほうが多いですし、今は人を育て続ける時期だと捉えています。僕は1月のうちにできるだけ4店舗を回りながらスタッフと一緒に営業をする機会を設けています。
指示は幹部にまかせて、見ているだけです。口はめったに出しません。食事のときなどは下からの意見を聞きます。トップダウンだけじゃダメで、ボトムアップも大切ですからね。
難しいことを考えずに、ただ寄り添うだけです。それが自分の役割だし、好きなんだと思います。チャラいことは嫌いだけど人は好きですから。エ? そこ、似てますか? 大野さんに(笑)」
サロンには多くのグリーン(植物)が生い茂っているのですが、空気を浄化してくれるのか、とても居心地がよく、何時間でもいたくなる空間でした。人と緑をこよなく愛する堀之内さんの人柄が現れるサロン。Belleが老若男女問わず愛される原点を感じた取材でした。
取材・文/山岸敦子
撮影/石田健一、編集部
Salon data
Belle(ベル)
修行時代を同じ店で共に学んだ飯田尚士さんと二人で2010年表参道にサロンをオープン。
一軒家にこだわり、本当に居心地のいい空間を創りたいと、店内にはたくさんの緑を配置。グリーンは僕の担当と、子どものように目をかける堀之内さんの“人としてのやさしさ”は、相棒の飯田さんとの絶妙なコンビネーションでサロンを美の館から癒しの空間へと変えるだけの何かを醸している。
トレンドを創る人Vol.13 Belle・堀之内大介さんが振り絞った“2つの勇気” #1>>