美容を伝える使命について RUALAディレクター 角 薫さん #2
業界誌や一般誌、TVでも活躍する「RUALA」(ルアラ)の角 薫(すみ かおる)さん。女性美容師の中では長年に渡り第一線で活躍する、まさにカリスマ美容師です。
第二回目のインタビューでは、彼女の“美容の原点”や“無理をしない経営”、また、後進への指導などについてお伺いします。
師匠からは美容だけでなく、一流の所作を全て教わった
角さんは、同世代のちはるさんとビジネスパートナーを組み、共に運営しています。ふたりの関係は、もう20年以上続いているそうです。
――長い間共に働いていると、もう家族以上の関係ですね?
「はい。お互いの旦那さんについてもよくわかっている関係です(笑)。私とちはるは、アシスタント時代も共に過ごしてきました。当時はカリスマブーム。その中心にいるサロンで修業をしてきているわけです。私たちは地方出身で、若い頃から“原宿の美容師として、絶対に成功したい”という信念を持って上京しています。このこだわりは、二人とも相当強かったし、共通の夢があるから共感できることも多かったと思います」
――当時の原宿界隈の美容師さんは、寝る暇もなく働くという感じですよね。夜中の2時過ぎにサロンから出てくる美容師さんを見かけたことがあって。後日その話をしたら〝そんなの毎日です”って笑っていて。びっくりしたことを今でも鮮明に覚えています。
「そうですね(笑)。そんな時代でしたね 当時、私にとって美容の師匠は、綾小路竹千代(あやのこうじ たけちよ)さんです。そして、独立した今も、私の師匠であることは変わりません。ちはるもそうですが、綾小路さんからなにもかも教わりましたね。サロン営業だけでなく、セミナーやショー、撮影など外部活動も今では考えられないぐらい抱えていましたから、これ、大げさではなくて長年に渡って“寝食を共にする関係”なんです(笑)。
休みなんて欲しいとも思わないし、とにかく綾小路さんから全てを学び、盗みたかった。仕事のことはもちろんですが、食事のマナー、会話の運び方や立ち振る舞いなど、一流の人の所作を側でみてこられたことは、私にとっての財産です」
――綾小路さんといえば、今や美容界の重鎮です。簡単にはお会いできない印象ですが、その方と一日の大半を過ごされてきたなんて、なんてスペシャルな時間!そして、角さんの根性と信念は凄い!
「私の焼肉の焼き方は、綾小路さん直伝(笑)。だから、上手ですよ」
プライベートと仕事の両立ができる無理のない経営を心掛けている
18年後、角さんとちはるさんは独立の道を歩みます。紆余曲折を経て、2016年には現在の「RUALA」を原宿にオープンさせます。
「基本的には、ちはると私のふたりでも運営できる範囲で物事を決めました」
――さすが女性経営者。堅実ですね。
「新規のお客さまに関しては口コミや紹介でいらっしゃる方が多いのですが、サロンは35坪弱でセット面は7つ。土日は席が足りなくなってしまうので、所々で休むようにしています。
現在は12名のスタッフがいますが、既婚者が4名。出産を望むスタッフもいますから、とにかく女性が働きやすい体制を、その都度取り入れたいと思っています」
――無理のない経営をされているから、女性の転機に対しても気持ちよく応援できるんですね。働く女子にはうれしい職場ですね。
「当初から心がけているんです。私自身には子供がいませんが、スタッフが子供のような感じ。一人前の美容師を育てるのが私にとっての子育てなのかもしれない。使命ですね」
人へつなげる美容を目指す。これができないと一人前ではない
今、角さんが特に意識していることが社内教育。師匠から受け継いだ美容のイロハを後進の指導に活かすよう意識しているそうです。
「スタッフには“私とちはるになった気持ちで身振りや手振り、接客の仕方など全てを真似てね”とアドバイスしています。私たちも師匠から全てを教えていただいた。観察して真似ることで覚えたことは山ほどあるので。それらを今度は自分のスタッフに伝えていきたいと思っています」
――素敵な心意気。スタッフさんへの愛も感じられます。
「経験したことを自分だけのものにするのは、なんか違うと思うんです。特にサロンワークに関しては、後輩につなげていくことがものすごく重要だと思っています。私は感覚派で外部活動の仕事も多いので、そこにもスタッフを連れて行き、外部の方とのコミュニケーションの取り方も伝えているつもりです。一方、ちはるは現実主義で効率を考えられる人。スタッフにはそれぞれの得意分野を見極めて、上手く真似て欲しいと思いますね」
実は角さん、こう見えてかなりのアウトドア派。趣味の釣りは大した腕前を誇る方です。
「この年齢になると、プライベートも充実しているほうがお客様も喜んで下さいます。“いいよ、もっと休んで!出勤日に合わせて予約とるよ!”なんて言って下さるお客様もいて、ありがたいですね」と角さん。
20年以上、美容に対し諸突猛進できたからこそ、今、大人の女性として充実ライフを満喫できているのでしょう。
「女性はいつまでもキラキラと輝きながら働き続けられる」。そんな勇気をもらったインタビューでした。
取材・文/小澤佐知子
撮影/田中大三
Salon Data
RUALA(ルアラ)
http://ruala.jp
2016年1月にオープン。原宿の最大手サロンで修業と経験を積んだ角さんとちはるさんが共同で運営する。
サロン名のRUALAはハワイ語で道。お客さまに羽を伸ばしに来ていただき、リラックスしてほしいという思いを込めたサロン。
女性美容師を中心にチームを組み、お客様のライフスタイルにあったデザイン、美と健康を考えた頭皮ケアにも力を注いでいる。
女性が作り上げるサロンの醍醐味 RUALA・ディレクター 角 薫さん #1>>