美容師が使うヘアアイロンは、一般用とどう違う?
ヘアアイロンはホットカーラーやドライヤーとは違い、髪へ直接熱を伝えられるため、短時間で手軽にヘアスタイルをアレンジすることができます。一般用でも数多くの種類が販売されているため手軽に購入できるものの、「きれいにセットできない」「美容院でしてもらったようには、カールがうまくできない」と感じたことはありませんか。
ヘアアイロンは「ストレートアイロン」と「カールアイロン」に大別され、美容師は目的に合わせて使い分けています。しかし、美容師が使う業務用のものと一般用では大きな違いがあります。では、その違いとは何なのか見ていきましょう。また、いくつかあるヘアアイロンの種類や使う上でのメリット・デメリットもご紹介します。
一般用とプロ用のヘアアイロンの違いとは?
プロ用のヘアアイロンの特徴は、幅広い温度調節ができることです。40度~200度前後まで設定することができ、髪の状態やダメージ具合に合わせて適切な温度で使うことができます。これに対して、一般用の温度は150度程度までしか上がらないものもあり、髪質によっては全くアレンジできないこともあります。この他の大きな違いは、持ちやすさや操作のしやすさへのこだわり、長期間の使用にも耐えられるようプレートやバレルの耐久性も高いことです。具体的に構造から説明すると、ヘアアイロンは「プレート」や「バレル」「ボディ」「コード」から成り立っています。「プレート」とは、ストレートアイロンで髪を挟む部分のことです。中にヒーターが入っており、このヒーターの構造がヘアアイロンの質を大きく左右します。ヒーターには「シングルヒーター」「ワイドヒーター」「ダブルヒーター」があり、このヒーターの性能がヘアアイロンの価格を決めているといっても過言ではないほど重要な箇所です。
「シングルヒーター」は大半の安価なストレートアイロンに使われています。プレートの中心に小さなヒーターが入っていて、小さいためコストが抑えられコンパクトなサイズです。しかし、ヒーターの入っていない両端部分の温度が下がりやすく真ん中だけが高温になります。その結果、髪に均一に熱を伝えられず伸ばすのに時間がかかってしまいます。
「ワイドヒーター」ではヒーター部分が大きい分、短時間で髪全体に熱を伝えられます。素早くストレートにできますが、ヘアアイロン自体が重くなるので手首に負担がかかるという欠点があります。「ダブルヒーター」は高価なヘアアイロンに使われています。ヒーターが2つ配列されており、効率的に髪へ熱を与えられます。短時間できれいにストレートにできますが、構造が複雑なため高額です。美容室の多くは、この「ダブルヒーター」を採用しています。
カールアイロンの「バレル」(金属部分)にしても、プロ用はチタンやセラミックといった髪の傷まない材質が使われています。チタンは高価なものの、摩擦による髪へのダメージが一番少なく、スタイリング剤や薬剤にも強いためヘアアイロンも長持ちします。セラミックは熱伝導が早く、忙しい朝や時間がない時には素早く温まってくれるので重宝します。どちらの素材も非常に髪の滑りが良く、余分な摩擦を与えません。またダメージが最小限になるよう、イオン放出や遠赤外線照射・ミスト照射など多彩な機能を搭載したものを使う美容師もいます。
次に、「ボディ」についてですが、ストレートアイロンは新品の状態ではボディはまっすぐです。この部分の一般用では、使い込むうちに熱と握力によって先が嘴のように開いていき、次第に髪がすり抜けて挟めなくなります。業務用のものは、プレートとヒーターの下に入っているスプリングでプレート部分が調節されています。そのため、ヘアアイロンが変形しても髪がこぼれずにセットできるのです。カールアイロンではクリップ部分に相当しますが、ここもプロ用は適度な強さでしっかりと髪を挟んでくれます。市販品では挟む力が弱すぎて、いつまでもカールがつかないこともあります。
ヘアアイロンで、一番劣化が激しいのがコードの付け根部分です。通常コード部分は補強されていますが、ヘアアイロンはさまざまな角度で使うため必ずこの部分が駄目になります。美容院専用では付け根部分のコードが回って、どの角度からの使用にも耐えられるように作られています。コードの強度も高く、断線しにくいものが使用されています。
ヘアアイロン3種類とそのメリット・デメリット
ヘアアイロンは「ストレートアイロン」「カールアイロン」「2WAYタイプのヘアアイロン」の3種類があります。
「ストレートアイロン」はくせ毛の人や寝ぐせなどで髪がうねっている場合に使うことで、髪をサラサラのストレートヘアにできます。V字の形で先端に金属プレートがついています。ここに髪を挟んで毛先に向かってスライドさせると、ストレートになる仕組みです。美容師の使うものと市販品では、耐久性や髪をまっすぐにする性能が全く違います。
「カールアイロン」はコテとも呼ばれ、おしゃれなカールを作りたいときに使用します。スイッチを入れると先端の丸いバレルに熱が伝わり、髪をクリップ部分に挟んで回転させることでカールができます。このヘアアイロンは、バレルの太さによってスタイリングのしやすさが変わってきます。髪の長さがショートからミディアムヘアの場合、26ミリ前後のサイズがおすすめです。毛先だけ巻いてもよし、縦に巻けばパーマ風に、横では内巻きにとアレンジの幅が広がります。32ミリ前後のバレルはミディアムからロングヘアに使いやすい太さです。頭頂部から毛先までしっかり巻くことができます。38ミリ前後の太いバレルでは、ロングヘアで大きなカールを作りたい場合に使用します。
「2WAYタイプのヘアアイロン」はストレートとカール両方の機能を備えたヘアアイロンです。アタッチメントをつけることで、ストレートにしながら髪を巻くことができます。1台2役で便利ですが、通常より価格が高くなります。また、巻き髪とストレートにする場合の温度が違うため、うまく使いこなせない場合もあり、他の2つに比べて使われる機会は少ないです。
次にヘアアイロンを使うことのメリットとデメリットを見てみます。
メリットは、その日の気分によって髪型を自由に変えられることです。パーティーや結婚式では華やかな巻き髪で、通勤や通学では清楚なストレートでなど、状況に応じて気軽に髪型を選べます。第二に、パーマや縮毛矯正よりも、圧倒的にコストがかかりません。ヘアアイロンの多くは1万円以下で購入できますが、パーマや縮毛矯正は2万前後かかります。
デメリットは、「髪が痛む」ことです。熱、圧力、摩擦によって、ヘアアイロンを使うたびに髪はダメージを受け、熱による髪のたんぱく質の変性は修復不可能です。また、ヘアアイロンのスタイリングには持久性がありません。雨の日など湿度が高かったり、シャンプーをしたりすればすぐに元の形に戻ってしまいます。毎日、はじめからスタイリングをしなければなりませんので、手間と時間、面倒さがつきまといます。その他にも、仕上がりが個人の技術力に左右されることも欠点です。慣れるまではきれいにできないことも多く、失敗すると元通りに直すことが難しいです。やけどの心配もあります。ヘアアイロンは100度~200度もの高温になります。手や顔に触れると瞬時にやけどを負うので、慎重に使う必要があります。このように、ヘアアイロンは利点と欠点を考慮して使うことが大切です。