Akamiho interview #3:長年望み続けてきたことが、目の前にある
池袋に店舗を構える、元祖ヴィジュアル系ヘアサロン『Tritt fur Tritt』。エレベーターが開くと、鮮やかなメイクをほどこしたバンドのポスターが、真っ先に目に飛び込んできます。美しいロックのサウンドがかすかにもれる扉を開け、一歩足を踏み入れると、そこに広がるのは、まさにヴィジュアル系の世界観。
そんなサロンを作りあげたのは、自身も熱狂的なヴィジュアル系のファンだと語るAkamihoさん。いったいどのようにして、現在のスタイルにたどりついたのでしょうか?
後編では、ヴィジュアル系をコンセプトに置くサロンならではの、お客さまとの関わりや、今後の目標について語っていただきました。
店内に流れる音楽の正体
――お客さまを楽しませるために、工夫されている点はありますか?
「普通の美容室は初めて来たお客さまに会員カードを渡すと思いますが、『Tritt fur Tritt』では3回目の来店時に会員カードを発行します。理由は、心から私たちのサービスに満足してから会員になって欲しいからです。会員になった後も、来店した回数によってカードのデザインが変わります。全部で6種類あるので、会員カードをすべて集めることもお客さまの楽しみになっているようです」
――著名なアーティストが来店されることもありますか?
「武道館の舞台に立った方や、現在メジャーで活動しているアーティストがお忍び来店されることもありますね。しかし、著名な方が来たからといって、SNSを利用しサロンをPRしてもらうようなことはしません。宣伝をしてもらえば集客は伸びると思いますが、それは一時的なものです。目先のことを考えず、きちんと技術を提供していれば、お客さまはついて来てくれます」
――ヴィジュアル系をコンセプトにしているサロンならではの、できごとはありますか?
「バンドマンのお客さまが、できあがったばかりのCDをプレゼントしてくれます。いただいた音源は、プロモーションもかねて店内に流していますよ。カットしているときに“いま流れている曲いいですね”とお客さまが反応することがあり、そんなときは歌っているバンドを紹介するようにしていますね」
ヴィジュアル系の世界観を作ることが仕事になっている
――ともに働くスタッフについて、共通するポイントがあれば教えてください。
「 “高い技術と意識を持っている”という点は共通していますね。『Tritt fur Tritt』にいらっしゃるお客さまは、バンドマンをはじめ、人前に出る方が多いんです。自分をどう見せようか考えているので、こだわりがすごく強い。自然と普通の美容室と比べ、スタッフに対する要求のレベルが高くなります」
――サロンで働くなかで、うれしいのはどんな瞬間ですか?
「お客さまが喜ぶ顔を見たときはもちろんですが、スタッフの作品を見るととてもうれしいですね。ヴィジュアル系の世界観を作ることが、仕事になっていると実感できるので。それは、私がヘアメイクをやり始めた20年前では考えられなかったことです。長年望んでいたことが、目の前で形になっているというのは、感慨深いものがありますね」
ただ見た目だけきれいなものを作っても、観る人には伝わらない
――今後の目標を教えてください。
「もっと海外のお客さまの髪をカットしたいです。そのためにも、近いうちに外国人向けの電話回線を引こうと思っています。すでに、サロンのホームページは英語に切り変わるように設定されているので、今でもときどき外国人のお客さまもいらっしゃるんです。世界に向けて、日本で育ったヴィジュアル系という文化をもっと発信していきたいですね」
――最後に、長年ヴィジュアル系に関わってきたAkamihoさんが、今望んでいることはありますか?
「美容業界でも音楽業界でも、今の若手には、もっと自分で考え行動して欲しいですね。最近は情報があふれ過ぎていて、積極的に動く人が少ない気がします。自分の判断で動くと、失敗し心折れそうになることもたくさんあります。しかし、何度でも立ち上がり挑戦するべきです。そうしなければ、人の心を動かす作品は生み出せないと思いますね。どちらの業界も、“ヴィジュアルが大切”という点は同じですが、ただ見た目だけきれいなものを作っても、観る人には伝わりませんから」
黒を基調とし、赤い腕章が目をひく制服は、軍服をイメージしているそう。「デザイナーに依頼し作ってもらった、こだわりがつまったオリジナルの制服です」と笑顔で語ってくれたAkamihoさん。スタッフとお客さまが作りだす、ヴィジュアル系の世界観に浸れる美容室『Tritt fur Tritt』。興味のある方は、ぜひ訪れてみてください。
Profile
Akamihoさん
Tritt fur Tritt マネージャー
カリスマV系スタイリスト&アーティスト。ヘアーメイクアーティスト学院卒業後、日本美容専門学校へ。免許取得後、サロン勤務を経て、フリーの美容師に。ヘアーメイクアーティストとしてライブや雑誌など、幅広い分野で活躍。2004年に『Hair & Make Studio Tritt fur Tritt』をオープン。
Salon Data
Tritt fur Tritt(トリット フューア トリット)
住所:東京都豊島区池袋1-32-1第2アムスビル4F
TEL:03-5960-9363
http://www.tritt.co.jp/salon-tritt.htm
Akamiho interview #1:ヴィジュアル系の世界観を作りたい。熱い思いを胸に上京>>