しもむらひろみ interview #2:移り変わり繰り返される、福岡の美意識
福岡・天神は全国でも有数のファッションビル集合都市です。ファッションビルの掲げるシーズンビジュアルは当時の流行ファッション、ヘア・メイクを表すものとして福岡中の注目を集めます。そんな天神のおしゃれの変貌を間近に見てきたしもむらさん。今回は当時、ご自身の経験をもとに、福岡の美容、ファッションの移り変わりについてお話を伺いました。
個性的な時代から、同調する時代へ
――長年スタイリストをされて福岡のおしゃれの変化をどう思いますか?
「スタイリストになりたてのころはデザイナーズのファッションが流行していて、それにあわせてヘアやメイクなども工夫して、個性の強い人が多かったですね。現在はどうしてもみんなが同じようなものを、同じように着こなしている印象があります。若い人でも洗練されたセンスを持った人がたくさんいますが、そんな人たちが集まってしまうとどうしてもみんな同じに見えてしまう…。だから私たちより先輩の人たちのほうが、個性的だなと感じることが多いです。」
――福岡独自のセンスを感じることはありますか?
「20年ほど昔は、福岡も『ハカタスタイル』と呼ばれて、ボーダーのTシャツに細身のパンツ、ブーツを合わせる格好が流行して、ファッションの発信地だと言われていました。でも当時では珍しく、みんなが右にならうように同じ格好をしていたと思います。福岡のファッションってそういうところが特徴ですよね。色や形も個性的で派手なものでなく、ベーシックカラー、スタンダードなシルエットのものが福岡ではよく売れると聞いたことがあります。きれいめなスタイルが好まれるようです。保守的な性格な人が多いのかもしれません。」
おしゃれは繰り返されるもの
――広告スタイリングの時代も合わせて、しもむらさんがセンスを磨くために頼っていたものってなんですか?
「やはり雑誌が主流でした。あと、海外の写真集や昔の雑誌。コレクションは毎年繰り返し出るものもあるので、昔のスタイリングを参考にして、いかに現在に生かすか考えていましたね。あと映画。フランス映画やイタリア映画を参考にすることがよくあり、小さい映画館によく行っていました。」
「福岡以外にも買い物に行くことがありました。熊本は当時、全国的に有名なアパレルショップもあり、東京と並ぶファッションのアンテナ都市と言われていました。現在活躍している大御所スタイリストの方も熊本出身が多いんですよ。」
ストーリーにあうスタイルを提案
――広告の仕事から現在のパーソナルスタイリストで、なにか影響していることはありますか?
「広告スタイリストの時代に培った、ストーリーに合わせて人の背景を読み解く力がとても今の仕事に生きていると思います。ファッションスタイリストだと最先端的なものを追いかけなければなりませんが、パーソナルスタイリストはその人に合うものを提案するので、その人がどんな人なのか、どういうときにどういう服を着たいのか、いつもどんなメイクやヘアアレンジをするのか、考えることが大切です。当時、TVCMなどに登場するキャラクターを作り上げるために重ねた苦労がとても発揮できていると思います。」
Profile
しもむらひろみ
パーソナルスタイリスト。『Class.Salon』オーナー。福岡で長年、広告のファッションスタイリスト経験。2004年、一般の人を対象にしたパーソナルスタイリングを開始し、今はスタイリングのほかイベント、ワークショップを催すなど幅広く活動する。
<Class.Salon>
http://www.salon309.jp/
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