鍼灸師の需要は今後どうなる? 女性鍼灸師の活躍の場が広がっている理由とは?

日本において、古くからなじみのある鍼(はり)や灸(きゅう)を用いた施術を行うのが「鍼灸師」の仕事ですが、現在はどのような状況にあると思いますか?

昔を懐かしむかのように感じる老年世代もいるでしょうし、『ぜひ施術を受けたい』と思っている若者もいたりと、人によって受け取り方は様々なのではないでしょうか。

そんな『どこか古くて新しい』鍼灸師のお仕事の需要はどうなっているのでしょうか。また、これからの需要はどうなっていくのでしょうか。

これからキャリアを積もうとしている人にとっては、その職種の“将来性”を考えずにはいられません。そのような点を踏まえて、鍼灸師の仕事について考えてみたいと思います。

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鍼灸師の需要はある?

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鍼(はり)や灸(きゅう)を用いた治療法は、古代中国を起源とする「東洋医学」です。日本に伝来した後は、独自の発展を遂げてきました。

現在では、“整体”というジャンルにひとくくりにされがちですが、国家資格を必要とする職種であることが大きな特徴といえるでしょう。

鍼灸は、リウマチや神経痛、頚腕症候群、五十肩、腰痛、頚椎捻挫後遺症など、幅広い病状を正してくれる治療法として親しまれてきました。

現在、日本は4人に1人が高齢者という、超高齢化社会を迎えています。そのため、身体の不調を整えてくれる鍼灸師の需要は増えています。

鍼灸師の有資格者

公益財団法人の「東洋療法研修試験財団」の統計によると、鍼灸師の有資格者は右肩上がりで増えています。

平成29年度での累計で、日本における有資格者の数は、どちらの資格もおよそ17万人にもおよんでいる現状があります。

「鍼灸師」といった資格はなく、「はり師」と「きゅう師」の資格があるのですが、その両方を取得する人がほとんどです。

そして、患者の容体に合わせて、鍼を用いたり灸を用いたりと、使い分けて施術することが一般的であるため、「鍼灸師」という呼称が存在するのです。

はり師

注射針よりもはるかに細い、髪の毛ほどの太さの鍼を用いて行う治療法です。痛みを感じることはほとんどありません。

きゅう師

ヨモギの葉の一部を乾燥させた“もぐさ”を身体の経穴(ツボ)に据えて、燃やすことで血流などを改善させ、快方へと向かわせます。

東洋医学の考え方が浸透し始めている

古くから伝わる鍼灸ですが、その根本は、『人体には気の流れがある』という考えが基本となっています。

そして、身体にある360箇所の経穴(ツボ)のうち、必要な部位に処置を施すことで、気の流れを正し、快方へと向かわせるという考え方なのです。

『気の流れ』と聞くと、非科学的な印象を受ける方もおられるかと思います。そこだけを切り取ると、いかがわしく感じてしまうことは仕方ないかもしれません。

しかし、21世紀になって、科学的な観点から東洋医学を捉えたときに、その有用性が実証され始めているという現実があります。

伝統医療として認定される

臨床試験をもとに科学的な見地に立つ西洋医学ですが、その従事者などが自身の知識と照らし合わせて、東洋医学を捉えなおす動きが活発化しました。

そして、実際に効果があることが認められる事例が相次いだことから、西洋医学の現場に、治療として取り入れられている動きがあるのをご存知でしょうか。

そのような状況を受けて、2018年にはWHO(世界保健機構)が東洋医学を「伝統医療」として公式に認めることを発表しました。

当然のことながら、鍼灸もそのなかに含まれており、今では世界的な規模でその存在を知られるようになってきています。

スポーツ鍼や美容鍼など活躍の場も広がっている

スポーツなどの激しい運動に対しても、鍼灸は効果があります。未然にケガを防ぐものから、ケガをしてしまった後の処置まで含まれます。

また、プロのアスリートともなると、禁止されている薬剤の服薬を避けるために、身体のメンテナンスに鍼灸を取り入れる人がたくさんいます。

また、美容に対する需要も、近年になってますます増加傾向にあり、そんな現場から必要とされる場面が少なくありません。

鍼を用いて直接的に表情筋へと働きかける施術法もあることから、利用者が効果を実感しやすく、お店のリピーターとなるパターンも多く見受けられます。

正社員としての就職は難しい?

結論から述べますと、正社員としての採用はたくさんあります。極端な例を挙げると、不妊治療に特化し、女性の鍼灸師だけで構成された職場などもあります。

“整体師”の仕事は、実に多様な業態にあるといえますから、鍼灸師といっても様々な職場があるのが日本の実状なのです。

しかし、鍼灸師は国家資格を必要とする仕事であり、いわば“国のお墨付き”を得ている立場ですから、あらゆる場面で有利に働きます。

そのような状況ですから、これから業界に入っていく人も、すでに有資格者で再就職を考える人も、安心して職場探しをしてみましょう。

女性鍼灸師の活躍の場が広がっている理由

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これまで、鍼灸の認知度はあまり高くなく鍼灸師も少なかったのですが、今では女性鍼灸師の活躍の場も広がるなど鍼灸業界が賑わっています。では、なぜ女性鍼灸師が活躍するようになったのでしょうか。

お客様の男女比率の変化

鍼灸治療は主に痛みを和らげることを目的とした治療です。

また、その他にもスポーツをしている選手が大会直前や大会後などに、コンディションを整えるなどの目的で治療を受けることがあります。

しかし、今では鍼灸治療の認知度が高まり、美容にも良いとのことで女性からの人気を多く集めています。

同性の施術を望む方は多い

一般的に女性は男性と比べて、華奢な身体をしています。それにも関わらず、出産・育児などで身体を酷使し、痛めてしまうことが多いのです。

また、生理不順だったり、妊娠や産後のケア、不妊の問題などをどうすれば良いのかといった問題がつきまといます。

そんな女性特有の苦しみは、同性である女性の鍼灸師の方が、同じ目線に立ってくれるため、悩みを打ち明けやすいといえるでしょう。

苦痛を訴える女性にとっては、自身の症状に対する理解が得やすい女性鍼灸師は、大変ありがたい存在として映っているはずです。

このように施術を受けるお客様からすると、同じ性別にしかわかり得ないような悩みを共有することのできる、同性の鍼灸師からの施術を望む方が多いということなのです。

エステサロンでの施術も

日本において、老いも若きも今日ほど“美”の追及に余念のない時代はなかったのではないでしょうか。

男性とてエステサロンに通う時代となりました。そのようなニーズを満たす存在としても、鍼灸師の仕事は重宝されています。

このことは、『血流を改善し、健やかな身体を取り戻す』ことが、この施術法の本来の意義ですから、そこと照らし合わせても、納得のいく話ではないでしょうか。

このように、ボディケアやフェイシャルケアを謳っているエステサロンが、鍼灸の技術を取り入れているのは自然の流れであると考えられます。

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今後の需要はどうなっていく?

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身体の不調を整えて快方へと持っていく、古くから伝わる施術法ですが、今や科学的にもその有効性が証明されつつあることは既に述べました。

そのことから、日本でも医療の最前線で鍼灸が用いられるようになる可能性は十分に考えられます。

また、街に点在する店舗に目を向けてみると、様々な施術を謳っているお店があることに気づかされます。

そういった場所においても、国家資格として認定されている鍼灸は、幅広いニーズに応えられる、頼れる存在として必要とされているのです。

介護方面でますます需要が高まっていく

現代の高齢化社会では、少子化対策と並行して、高齢者の健康をどのようにケアしていくのかといった点が問題となっています。

介護の現場では、利用者に満足してもらえるサービスを提供するために、日々汗を流して働いている職員の姿があります。

そこで、介護職にその問題をすべて委ねるのではなく、社会全体の問題として多方面からのサポートを得られる環境を整える視点を持たなくてはなりません。

そんなサポートの一面として、鍼灸師を考えてみるとどうでしょうか。利用者に寄り添った施術で、健康を維持するために、欠かせない存在といえないでしょうか。

【平成30年】鍼灸師が機能訓練指導員として従事可能に

介護現場での人材不足を補うための政策のひとつに「機能訓練指導員」の導入があります。そのなかに鍼灸師の有資格者も含むことが平成30年に決定されました。

これは、鍼灸師としてある程度の実務を積んだ人を対象としたもので、デイケアサービスや特別養護老人ホームで働くことができるといったものです。

介護の現場では、利用者自身でできることは、なるべく自身の力でやってもらうことが原則ですが、施術によってその能力を維持できるとしたらどうでしょうか。

きっと他では味わうことのできない、やりがいのある仕事といえるでしょう。キャリアアップを考えるひとつの手段として検討してはいかがでしょうか。

鍼灸師の需要は今後ますます高まっていく!

古代中国を起源として、日本へと伝わった歴史のある鍼灸ですが、医療行為の枠を超えて美容、スポーツといったジャンルにまで需要が広がっている現状を見てきました。

また、“医療行為”であるという従来の認識に立ち戻ってみても、介護といった福祉分野での需要が増えてきていることがわかります。

さらには、西洋医学に従事する人の科学的な知見によっても、その効果が実証されている事実があり、世界的な規模で鍼灸への認識は深まっているといえます。

“整体”といっても、その内実は多様です。多様な業態が混在するなかで、国家資格である「はり師」「きゅう師」の取得を通じて“鍼灸師”になることは、自身にとって大きな“拠り所”となってくれるはずです。

そのため、常にたゆまぬ努力を重ねることこそが「鍼灸師」として成長していく上で、欠かせない資質といえるでしょう。

資格試験にみごと合格したあかつきには、様々な分野で必要とされる人材として、大いに活躍できるに違いありません。

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