磯部宗潤 interview:市場を広げる『ネイルグランプリ』!それがネイリストの価値を上げていく
「あなたはあなたで素晴らしい――どんな人でもそれぞれに良さがあるが、それに気づいていない人が多い。ネイルを通してお客様にそれを伝えて、輝く人生になってもらいたい」と語る磯部さんは、お客様だけでなく、美容業界全体を輝かせようと『美容オリンピック』開催を目指しています。現在、一般社団法人『ネイルグランプリ』の理事長を務める磯部さんが考えるこれからのネイル業界のお話を、就職活動の手助けにしてください。
スタートは邪(よこしま)な考えでした
「きれいな美容の世界で仕事がしたい。最初はそんな軽い気持ちでした。18歳のころに一度、美容室に就職したんですが、その会社が潰れてしまったんです。高校を卒業してすぐ美容室に就職し、通信で美容の専門学校に行くつもりだったのですが、 その前に会社が無くなってしまって……挫折しました。
一年半ほどふらふらしていましたが、二十歳の頃にテレビでネイルを見て、『男性 が少ないし、目立てるんじゃないかな』という邪(よこしま)な気持ちで、スクールの体験入学に行ったんです。
ところが、スクールの先生の技術を見て感動してしまったんです。爪の手入れや、長さを一本出すという技術を見て、『こんな世界があったんだ』と衝撃を受けました。『この技術を僕自身が広めたい』と思って、すぐスクールに通いました。
周りには猛反対されましたよ。今でも少ないですが、当時は男性のネイリストなんて、もっと少なかったわけですから。『男性のネイリストなんて、食べていけるわけがない!』って言われましたよ。でも、スクールで受けた『新しい世界に対してのワクワクが止まらない』感覚、『この世の男性は誰も知らないだろう』という感覚は、僕の行動を抑えられませんでした」
ネイリストの現場離れ、お客様のサロン離れ
「美容師やエステティシャンの勉強は、接客に関することがすごく多いんですが、ネイリストには技術に関する勉強がメインとなります。僕は現在、経営者であり、ネイルグランプリ理事長であり、ネイリストであるわけなんですが、その中でもサロン業務がすごく好きで、『お客様に施術をしてこそネイリストである』という考えを一番に置いています。
今は、『ネイリストが現場離れをしている』と言われています。アーティスト化しているネイリストが多くて、お客様を疎かにしている面があります。それではネイルの市場は広がっていきません。
現在、ネイルをする女性は多いように思われていますが、実際は女性の1割しかネイルをしていないと言われています。ネイル市場を広めていくためにはしっかりしたサロンを作っていかないと、お客様がサロン離れをしてしまうのです。
僕は、その『お客様のサロン離れ』を防ぎ、もっとネイル市場を広げていくためには『サロンを良くする団体を作る必要がある』と考え、『社団法人ネイルグランプリ』 を作りました」
コンビニを超え、エステ超えも目指すネイル業界
「ネイルグランプリにエントリーしたサロンには、年に3回覆面調査が入ります。1年目の調査では、サロンの平均接客ポイントが200点満点中、140点そこそこでした。140点というのは、コンビニやファストフード店が取る点数なんです。
コンビニやファストフード店で、店員さんが笑顔で接客してくれたら、ちょっと嬉しくなりますよね。ネイルサロンはそれくらいのレベルで見られていたということなんです。商品を提供して対価をいただくコンビニでは、この点数でも良いとは思いますがそれ以外にお客様からお時間までいただいているネイルサロンのサービスがこの程度の点数ではもちろんダメです。
ネイルグランプリを始めて3年。ネイルサロンの接客技術向上のために尽力してきた現在は、165点まで上がってきました。これはエステサロンや美容室が取る点数です。数値だけで見ると、サロンの品質は年々上がってきていると言えます。
200点満点を取るネイルサロンは何店舗かありますが、そういったサロンの経営者の考えや、スタッフさんの笑顔は半端ないですね。すべてのネイルサロンがこのような品質だと、ネイル市場はどんどん広がっていくと思いますよ」
「ネイルグランプリ」がネイリストの原動力に――
「他の団体では、『エステティックグランプリ』さん、異業種だと『居酒屋甲子園』さんが、業界に影響を及ぼす団体になってきています。『ネイルグランプリ』も、いち早くその域に達することが最初の目標です。参加企業も増やしたいし、エントリーサロンも増やしたい。やりたいことがいっぱいあります。
ただ、エステサロンや美容室では、ディーラーさんやメーカーさんが応援してくれるのですが、ネイル業界は異色で、応援してくれる企業さんが少ないんです。そういった面でもネイリストの価値が低く見られているのかもしれないと思っています。ネイリストの価値を高めるためには、自分たちがコツコツ力をつけていくしかありません。
ネイルグランプリ実行委員の皆さんも徐々に力をつけてきて発信力が上がってきたので、来期か再来期にはすごく良い大会になると思っています。
『ネイルグランプリ』を含めた社会貢献活動に全力を注ぐことにより、ネイリストとしての仕事の成果は上がっていきます。技術や能力は年月が経てば磨かれていきますが、ネイリストとしてのあり方や考え方というのは原動力によって成長すると考えています。『ネイルグランプリ』が、ネイリストたちの原動力になれば良いですね」
僕たちにはオリンピックがなかった――
「6年後には美容のオリンピックを開きたいと考えています。ネイル以外にもエステ、ヘア、メイク、ファッションを含めたすべての美容のオリンピックを開きたいんです。僕はスポーツが大好きで、オリンピックを見ると毎回泣くんです。努力をしている人のドキュメントを見ても泣くんです。
僕たちネイリストもドキュメントを作ったら、見ている人が泣くくらいの苦労をして、泣くくらいの努力をしているのに、なんでこれだけ違うのかと思ったら、きっと美容業界のフォーカスのされ方が違うんですよね。
僕たちもサロンワークが終わった後、コンテスト用のレッスンをして、休日を潰してまでやっているのに、『なぜフォーカスのされ方が違うんだ』と思ったら、『オリンピックがない!』と思ったんです。東京ドームを一週間貸し切りにするくらいの大規模な美容オリンピックを作ったら、周りも黙ってないでしょう。その時に、美容の世界は変わるかなって思います」
フォーカスするところを変えてみると――
「僕が最初に働いた美容室は大きなチェーン店で、自分が思っていた世界とのギャップがありすぎました。店舗が変わり、その度にレッスンが一から始まるので、全然先に進めなかったんです。他のみんなは進んでいるのに……すごく悔しかった。
そうこうしているうちに会社が潰れることになったので、美容師は辞めてしまいました。会社が潰れることを理由に、美容師を辞めたんです。でも、今思えばいくらでも頑張り様はあったと思います。
そんな経験をした僕がみなさんに言えることは、『謙虚になること』です。就職先を探すとき、どうしても雇用形態や待遇に目が行きがちです。もちろんすごく大事なことなんですが、待遇よりも『自分の人生においてこの会社が必要か』、『本当に自分がやりたい仕事か』を考えてください。
そうすると休みが少なくても、少しくらい給料が安くても、『ここでやりたい!』という衝動に駆られる企業は現れます。是非、そういう企業に就職してください。面接でオーナーさんの話を聞くだけではなく、自分からもいろいろ質問してください。
そこで、会社の方向性やビジョンに賛同できる企業で働くことができれば、みなさんにとってすごく楽しい人生になると思います。会社の方向性やビジョンにフォーカスしてみると、すごく良い企業はいっぱいあります。あなたの人生を楽しくしてくれる企業はいっぱいあります。ぜひ、そこを見つけ出してください」
Profile
磯部 宗潤(いそべ そうじゅん)さん
Nail Salon Today 代表
男性ネイリスト
大阪府出身。18歳の時に美容師を目指すが挫折する。20歳のときネイルアートに目覚め、スクールに通った後にネイルサロンに就職する。26歳で独立し、ネイルサロン「Today」を開業。7年目の現在はサロン3店舗(本町・心斎橋・茨木)、スクール2店舗(本町・心斎橋)を構え、一般社団法人ネイルグランプリ理事長・ネイルグランプリ第3回実行委員長をも務める。
Shop Data
Nail Salon Today
心斎橋、南船場にある [Nail Salon Today]。爪を傷めず施術をさせていただいております。
カウンセリングもしっかりしているので、安心して施術を受けていただけるサロンです。
また、キッズルーム(託児所)も設置しているので、お子様を連れての来店もご安心ください。
〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場4-6-6 宮川ビル2F
TEL:06-6484-7753
HP:http://nailsalontoday.com/
ネイルグランプリ
共に目指し、共に輝き、共に叶える ネイルの素晴らしさを伝え、一人でも多くの笑顔を生みだし、そこから生まれる美しい心の輪を広げようという理念のもと生まれた「ネイルグランプリ」。 主役は、現場で働くネイリスト達です。日々努力を重ねているネイリストたちの夢を叶えるため、サロンの熱い想いを伝えるためのステージです。第2回大会は、196サロンがエントリー。半年に及ぶ審査により、栄えあるグランプリが決定しました!
団体名称:一般社団法人ネイルグランプリ
事務局住所:〒542-0081 大阪市中央区南船場4‐6‐6 宮川ビル3F
営業時間:平日10:30~16:30
電話番号:06‐6125‐5665
FAX番号:06‐6125‐5780
HP:http://www.ngra.jp/
Mail:ngra-hq@ngra.jp