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忙しい師走だけど、ちょっと寄り道気分で、羽子板市へ! 【縁起物・前編】

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美を司る人へ–縁起物から学ぶ、江戸の美意識  師走その1

もう、ずっと昔の話です。年末の慌ただしい中、やっとの思いで髪を切りにヘアサロンへ行き、「こちらへどうぞ」と案内されて席に着く。ケープなどをかけていただきつつ、ぼんやりとミラー越しに見えたのは、華やかな羽子板でした。潔いほど余計な飾りがない、モダン&シックな雰囲気が好きで、ひそかに我が部屋もこうありたいと憧れていた場所。そこに、不釣り合いな、伝統工芸品の羽子板が、ぽんと置かれている?

いやいや、それが、実は、とても美しく新鮮に思えたものでした。もしかすると、江戸から続く縁起物に興味を持ち始めたのは、あそこで、日本人の持つ美意識みたいなものを教えてもらったからかもしれない。そんなことを、ふと思い出すのは、決まって慌ただしい年の瀬。

忙しい日々だからこそ、ちょっとひといき。今月は、江戸人の美意識をさぐりに羽子板市に行ってみませんか?

12月の江戸東京、最後を飾るのは、師走の風物詩「羽子板市」です。

サロンにお勤めの方の12月は、年末ぎりぎりまで忙しい日々。この私も、毎年、ギリギリに駆け込む客のひとりですから、それは重々承知です。ですが、そこをちょっとだけやりくりし、浅草・浅草寺までお出かけになるのはいかがでしょうか?

羽子板市

「羽子板市」は、12月17・18・19日の午前9時から夜22時頃までと、朝から晩まで市が立っているのが嬉しい。出勤前や帰宅途中にちょっと寄り道も、あるいは可能なんじゃないでしょうか?

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雷門をくぐって仲見世に入れば、もうそこは華やかなお正月仕様の飾り付け

浅草寺に続く仲見世は、師走の声を聞くやいなや、もうこんな寿いだ感じ満載です。他のエリアはみな、クリスマス気分に浸る中、ここだけちょっと違う空気が流れているみたい。

羽子板市
羽子板市
羽子板市

ひとつひとつ眺めれば、凧や玩具など、和風テイストのモノが、ポップにアレンジされて、なかなか可愛い。いちいち立ち止まって鑑賞してみたくもなりますが、この飾りは年明け過ぎまであります。今日は、いそいで境内へ。

宝蔵門(仁王門)を抜けた五重塔のあたりには、江戸時代さながらの情景が繰り広がっています

まずは、遠目で、市の様子を眺めてみましょう。羽子板市の露店は、地面から一段高いところに床を張ったにわか座敷店。そこにシックな色合いの地に屋号を染め抜いた暖簾がかかっているのも、なかなかに粋で、もしやコレ、江戸の町からそのままワープしてきた?なんて思えたりしてちょっと楽しいものです。

羽子板市

そして暖簾の下には、見得を切る歌舞伎役者の顔が並び……。

一段高い座敷店が、そのまま歌舞伎の舞台の見立てになっているかのようです。江戸時代には、贔屓の歌舞伎役者の舞台姿を描いた羽子板が人気で、その売れ行きがそのまま役者人気のバロメーターになったとか。

しかし「羽子板」は、もともと「邪気を跳ね返す板」として女児の健やかな成長を願う縁起物で、かつて女の子が生まれた家にお歳暮として贈る風習があったそうです。

美しさに加えて、ご利益もあって…と、かつては女児であった私もひとつと、ついつい食指が動きます。しかし、豪華絢爛な押絵細工は、狭い我が家に飾るにはやはり派手すぎ。お値段も豪華すぎ。じっくりと眺め、江戸東京に伝わるセンスを盗むことに徹しようと思うのです。

買い求めるなら、羽子板で突かれる「突羽根(つくばね)」がおススメ

1個、2個では、ちょっとキレイなおもちゃといった感じですが、羽子板市で「突羽根」が売られている様子は、一見の価値ありです。

突羽根

羽子板とは違った意味での美しさが圧巻!

「羽子板」の縁起担ぎは、“邪気を跳ね返す”「板」にあります。対して、「突羽根」の縁起物としての意味合いは、実は、華やかな羽根ではなくて「先端にある黒く丸いもの」にあるのだそうです。

今は、いろいろな素材で作られるようですが、この部分は「ムクロジ」という植物の種で作るのが正式。

・ムクロジには、「無患子」の漢字をあてて、「子が患わない」。
・ムクロジの部分を豆に見立てて、「豆=魔滅(まめ)」で魔除けになる。あるいは、「マメに暮らせる」。
・羽子板に突かれた羽根が、害虫を食べる「トンボ」に似ているので、「悪い虫がつかない」。

江戸人たちは、駄洒落、こじつけなんでもありで、この小さな「突羽根」に、女児の魔よけになるように、たくさんの縁起を担いだみたいですね。

突羽根の種類はふたつありますので、ぜひとも対でそろえたい

突いた時の飛び方が違うのでしょうか?

突羽根

突羽根のデザインは、細長く尖ったものと、羽根が大きく開いたものの2種類あるみたいです。

これらが、竹の棒に数個挟んで売られていたり、巾着風の袋入りだったり売り方も一工夫。

突羽根

それでだいたい1000円ぐらいと、これなら縁起物としても気軽です。多めに買って、お仕事仲間の方やお友だちに、来年の健康の御守りとしてプレゼントするにも、ちょっと気が利いているように思えますがいかがでしょうか?

浅草寺の羽子板市は、唯一残る、江戸東京の「歳の市」の記憶です

最後に、羽子板市の成り立ちなどを少し。師走も中旬をすぎた今頃は、かつて、正月用品や縁起物を売る市が江戸東京の各地に立ち、それらは「歳の市」と呼ばれていました。その主たる場所をちょっと書きだしてみましょうか?

いちばん乗りは、12月14・15日の深川八幡様の門前の「歳の市」。続いて、17・18・19日が、浅草寺の観音様にてで、20・21日が、神田明神、23・24日、芝愛宕神社と、いう段取りだった。

同じ面子で商っていたのかしら? と思うほど、日にちをつなぐように続いていたのが興味深いですね。当時は、交通手段も徒歩が主ですから、遠くまで買い物に出向くのはむりがあり、売り手の方が調整して、街々を順繰りに回っていたのかもしれません。

ちなみに「羽子板」は、最初「歳の市」の売り物のひとつでしかありませんでした。しかし、この華やかさですから当時から目立つ存在であったのは想像に難くない。時代が進むにつれて商いのカタチも変化して、正月用品は、近所のお店で普通に購入できるようになったのちも、華やかな「羽子板」は縁起物として残り「羽子板市」として大きく発展した。……というのが、今にも残る「羽子板市」の背景のようです。

ちなみに「歳の市」がすたれてゆくのと同じく、深川八幡、神田明神、芝愛宕神社あたりの市も消えてゆき、浅草寺の「羽子板市」のみが残ったようです。

歳の市

だからかどうか、浅草の羽子板市の掲示は「歳の市」の名称を使い、その記憶を今につないでいるみたいです。
※写真は、昨年以前のものです。曜日や時刻が違いますのでご注意ください。

文・写真

タオミチル

旧暦ライフスタイル研究ライター、ブックレビュアー。ブログ「ミチル日々」http://michiruhibi.com/にて、年中行事、縁起物などを含む、旧暦ライフスタイルを発信中。

羽子板市は、浅草寺のご縁日「納めの観音」の門前市って知ってました? 【縁起物・後編】 >>

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