介護に明るい未来を! 生きるための三大要素のひとつ「歩く」ことに 重きを置いたデイサービスに注目 介護リレーインタビューVol.15 【理学療法士 舟越智之さん】#1
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方のあり方をご紹介する本連載。今回お話しを伺ったのは、東京都墨田区を中心に歩行訓練に特化したデイサービスを展開する「株式会社エバーウォーク」で理学療法士として働く舟越智之さん。
前編では、舟越さんが介護職を目指したきっかけや、歩行訓練に特化したデイサービスの魅力について。後編では、舟越さんならではの仕事の流儀、利用者さまとのコミュニケーション術を伺います。
《プロフィール》
株式会社エバーウォーク 理学療法士 舟越智之さん…大学で理学療法士の資格を取得。東京都内の総合病院で勤めたのち、「株式会社エバーウォーク」に入社。墨田区・両国店の管理者を担い、利用者様が掲げる目標に寄り添い、個々の運動能力にフィットした運動プログラムを提供している。
学生時代の成功体験が「やればできる」の気づきに!
―まず、介護職を目指したきっかけを教えてください。
高校時代、野球部のトレーナーに憧れたのがきっかけです。もともと、人のために何かできる仕事がしたいと思っていたので、理学療法士の資格が取れる大学へ進みました。
―就活中に全国各地の施設を見学されたということですが、すごいバイタリティですね。どうしてそうしようと思ったのですか?
働きだしたら47都道府県の人たちがお客様になる可能性があるため、地元の話題でコミュニケーションがとれたら、いろんな方に対応できるようになれるかなと思ったんです。
当時、Facebookなどで日本各地の理学療法士を目指す学生と繋がっていたこともあり、その友人たちを頼りに北海道から沖縄まで、全国50ヶ所ほどの施設を見学しました。
―学生の頃から広い視野をお持ちですね。全国を回って、心境の変化や気づきはありましたか?
全国をまわりながら仲間に会いに行ったことで「やればできる」という成功体験につながりました。それまでは「貯金がゼロになったら死んじゃう」って思っていたんですが、30人いる友人宅にそれぞれ泊めてもらったら1ヶ月過ごせる。それをまた、3ループしたら3ヶ月過ごせる。大事なのはお金よりも人との関わりだという、気づきがありました。
また、働くところはどこでもいいと思うように。飛行機があれば数時間でどこにでも移動できる、日本は狭いなぁと。それで実家近くのかかりつけだった総合病院に入職を決めました。
あのときの経験が今になって役立っています。例えば、「北海道に行きたい」と思っている利用者さまに、僕が北海道に行ったときのエピソードを話すことで会話も弾みますし、脳内で反応するんですよね。認知活動の促しにもなり、リハビリテーションのひとつになります。
「歩く」ことは、生きるための三大要素のひとつ
― 「株式会社エバーウォーク」に転職したきっかけは?
総合病院のリハビリテーション科で勤めるなか、担当した患者様が退院後、幸せに暮らせているか確かめてみたいと思ったのがきっかけです。医療の現場では、退院後、リハビリをしなくなったことで機能が低下してしまい、また病院に戻ってくる、という悪循環がよくあります。それを何とかしたいという思いもあり、学生時代に研修でお世話になったことがある、リハビリのデイサービスを行う「エバーウォーク」に転職しました。
―エバーウォークは、歩行訓練に特化したデイサービスを行なっていますが、とても珍しいのではないですか?
そうですね。一般的なデイサービスは、高齢者の方をお預かりして、食事やレクリエーション、お風呂、入浴などのサービスを提供しているのに対し、エバーウォークは、午前3時間、午後3時間のどちらかを選んで通ってもらい、歩行訓練に特化したサービスを行なっているのが特徴です。
エバーウォークという名前からも、「ずっと歩く、歩き続ける」という思いが込められていて、「100歳まで、歩く。」がコンセプト。最後の10年間は不健康寿命と言って、寝たきりで過ごしたり、介護を必要として生きるのが現状です。それを最後まで自分で自由に送ることができたら本人も我々介護従事者も幸せだし、国も社会保障費が減るから幸せなんですよね。そういった理想を求めてサービス提供をしています。
―歩くことに重点を置いているのは、やはり健康の基本になるからですか?
生きる三大要素っていうのは、「食べる・移動する・排泄する」なんです。この3つが揃うと命が保たれる。歩くのはその中の一つなんです。怪我とか障害とか高齢によって歩けなくなった時に、初めて歩くことが大事なんだと気づくんです。
また座りっぱなしが続くと「廃用症候群」といって、動かないことによって身体機能が低下してしまいます。一日、動かなかったら筋肉は1%くらい落ちると言われています。もし100日ソファに座ってばかりいたら筋力は0%になるんです。座りすぎは、関節も硬くなりますし、血液の流れも悪くなります。そういう人を良くするには、立って歩いてもらうしかないんです。だからエバーウォークでは、座っている時間は休憩のときだけ。転ばないようにリスク管理を徹底しながら機能訓練をしています。その中で、正しい歩き方だったり、体の動かし方、正しいトレーニング方法などをアドバイスするのが我々、理学療法士の仕事です。
介護の未来を明るくするために、介護の多様性を知ってもらいたい!
―室内にはトレーニングマシーンが並んでいて、介護施設というよりはジムのような印象です。利用者さまも生き生きしていらっしゃいますね。
介護業界を目指している方に「こういう介護サービスもあるんだよ、楽しいから、来ない?」と伝えたいです。産業的にもこれから一番、介護が伸びると思っています。高齢者は増えるけれど、若い人が減るため、高齢者を少ない人数で効率的に支えないといけない。ひとりで100人みることができれば、ふたりで200人みることができます。それができる人材を今後は育てていきたいと考えています。
―求める人材はどんな方ですか?
理学療法士や作業療法士、看護師など、専門職の免許を持っている方。資格は、ちゃんとサービスを提供できるっていう証明でもあります。あとは、運転の免許を持っている方。デイサービスは、車で利用者さまを送迎するため、運転できることが基本です。とりあえず、会ってもらえればその方を幸せにする自信があるので、たくさん面接にきて欲しいです(笑)。
―舟越さんはじめ、スタッフの皆さん、本当に明るいですね。
明るいところに人が集まる、そういう業界にしたいです。医療・介護業界はまだまだ仕事内容が知られていないので、モアリジョブさんの取材を通して、もっとたくさんの方にエバーウォークの理念を知ってもらい、介護の未来を明るくしたいです。
― 店舗管理者も担っている舟越さんの一日の業務内容を教えてください。
いちスタッフとして、送迎ドライバーから機能訓練、リハビリ指導や営業活動まで、デイサービスに関わることは何でも遂行しています。他のスタッフのフォローまで回れるように、日々の業務の中で余裕を持って動けるよう、常に準備しておくことが管理者である僕の仕事です。
施設内は、高齢者の方が通うトレーニングジムという印象。エネルギッシュな舟越さんはじめ、スタッフの皆さん、挨拶ひとつとっても気持ちよく明朗快活で、介護という枠を超えたデイサービスの形をみせていただきました。「来てもらえたら幸せにできる」とおっしゃっていた舟越さんの言葉にも説得力がありました。後編は、その自信の源となる舟越さんの仕事の流儀や利用者さまとのコミュニケーション術をお伺いします。
▽後編はこちら▽
「自分の常識は、相手の非常識」と心に留めておくのが、利用者さまの心を開くコミュニケーションのコツ! 介護リレーインタビューVol.15【理学療法士 舟越智之さん】#2>>
取材・文/ながいまき
撮影/石原麻里絵(fort)