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ヘルスケア 2021-07-29

【福祉現場のコロナ対策、どうしてますか?vol.5】感染以上に気をつけたい心身の機能低下を防ぐこと #1

未曾有のコロナ禍。感染対策に頭を悩ませている介護・福祉施設は少なくありません。そこで、実際に働く方々に対策事例をインタビュー。コロナ対策のヒントを探っていきます。

今回は、訪問看護ステーション「LE 在宅・施設 訪問看護リハビリステーション学芸大学支店」でチーフを務める看護師の古宮聡子さんにインタビュー。前編では感染防止策に加え、外出制限による心身の機能低下にどう対処しているかうかがいます。

お話をうかがったのは…

古宮聡子さん
(LE 在宅・施設 訪問看護リハビリステーション学芸大学支店チーフ)

看護師。大学の看護学部を卒業後、病院勤務を経てLE.O.VE(リオーブ)株式会社に入社。新宿EAST支店で訪問看護師としてのキャリアを積む。2021年6月に学芸大学支店へ異動し、チーフとしてスタッフをまとめる。

看護師のお守り「N95」が手に入らないプレッシャー

──医療に携わるみなさんにとってもコロナ対策は未知の経験。どのように進めてきましたか?

コロナ前から手洗い、うがい、手指消毒は常に行っていたので、基本的にはその延長という認識で対策を行ってきました。コロナ禍で新たに加えたのがマスクの常時着用。吸引や口腔ケアなど飛沫がともなう作業の時は、フェイスシールドやエプロンの着用も取り入れました。

──昨春は物品不足も深刻でした。影響も大きかったのでは?

はい。通常のマスクももちろんですが、なかでも医療用マスクの「N95」が手に入らなくて困りました。「N95」は熱源がウイルスか誤嚥性肺炎か分からない時こそ着用したいもので、看護師にとっては「お守り」なんです。本来は使い捨てなのですが、不足している間は洗って繰り返し使っていました。排泄ケアに欠かせない手袋も品薄になり、いつ底をつくかヒヤヒヤしました。

医療現場へ優先的に物品が流れるようになっていたこともあり、在宅医療は対象外のため私たちにはなかなか回ってくるまでに時間がかかりました。こうした現場の実情を受け、各事業所で行っていた備品の発注を本社で一括管理するようにして、充分な数が確保できるようになりました。

看護師にとって感染対策上の「お守り」でもある
医療用マスク「N95」

──ほかにコロナ禍で新たに始めた対策はありますか?

出勤時の体温計測ですね。感染拡大初期のころは体温を共有チャットに送り、管理者がすぐ確認できるようにしていました。もし体調が悪くお休みするスタッフがいても、チャット内でフォロー体制が組めるので便利でした。

今振り返ると、1回目の緊急事態宣言の時はウイルスの実態も対処方法も確かな情報が少なく、非常に不安でしたね。「もし自分たちスタッフやご活用者様(利用者様)に感染した人がいたら」という、精神的なプレッシャーが大きかったように思います。

感染リスク以上に心配なのは心身の機能低下

──ご活用者の方々は感染対策に対してどんな反応をされていますか?

マスクの着用と訪問日の検温をお願いしています。初期のころは「訪問頻度を減らしたい」「リハビリを休みたい」など、接触を避けるために利用を控える方もいましたが、ほとんどの方はコロナ前と変わらず利用を継続してくださっています。

ただ、感染リスク以上に気になるのが外出制限によるダメージです。コロナ禍が長引いて出かける機会が減ったため、ご活用者様の中には活動性が低下したり、社会との関わりが減って認知機能が低下したりする方もいて、とても心配です。

──そうした課題はどのように解決しているのでしょうか?

1回の訪問看護にかける滞在時間は30分~1時間。その中でできるだけ話を聞いて、有効な改善策をその場で考え、提案できるようにしています。そして、主治医の先生やケアマネージャーに連絡を取って相談させていただいています。

私たち訪問看護師は、ご活用者様の健康状態の悪化予防に努めること、不必要な入院をさせないことを目標にしています。それをクリアするために、一人一人の状態をよく見て、その時々に合ったサービスを提供できるよう心がけています。

文具セット。
服薬内容を間違えやすいご活用者様の場合、
朝昼晩に飲む薬をそれぞれ小袋に入れ、
服薬日時をペンで書き込みます

ご活用者様のちょっとした変化も見逃さない

──コロナ禍になってすでに1年以上。感染対策がついおろそかになることはありませんでしたか?

ちょっと自慢なのですが、弊社のスタッフはみんな「地域専門職」として訪問看護師の仕事に強い責任感と誇りを持っているんです。仕事はもちろんプライベートでも、必要な感染対策をしっかり続けてくれていて、とても心強いですね。

──「地域専門職」、素敵な呼称ですね。

弊社独自の表現で、「地域の皆さまの守護神」というイメージです。ご活用者様の体調が良くなったり、デイサービスに行けるようになったり、うれしい出来事を目の当たりにできると、心からこの仕事をしてよかったなと感じますし、ご活用者様の人生に大きく関わらせていただける、とても魅力的な仕事だなと思います。

前職は病院勤務だったので、激務のため一つ一つの作業を分刻みでこなす毎日。1人の患者さんと時間をかけて向き合うことがなかなかできませんでした。当時に比べると、訪問看護師は30分や1時間、しっかりご活用者様のことを考える時間が持てるので、とてもやりがいがあります。

………………………………………………………………………………………………………………

ウイルスへの感染対策はもちろん、外出の機会が減ったことによる身体機能や認知機能の低下にも配慮。その場で改善策を提案し、利用者様の健康状態が下降しないように努めるなど、一人一人の利用者様としっかり向き合う様子が印象的でした。

後編では、何かと制限の多いコロナ禍において、取引先と円滑にコミュニケーションを取る工夫や、スタッフが安心して働ける環境づくりについてお聞きします。

▽後編はこちら▽
【福祉現場のコロナ対策、どうしてますか?vol.5】相手も自分も不安にならないためのコミュニケーション力 #2>>

取材・文/池田 泉
撮影/高橋 進

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