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特集・コラム 2023-01-06

ICF(国際生活機能分類)とは?特徴や構成要素、具体的な評価方法について解説

サービスの利用者に寄り添った満足度の高い介護福祉サービスを提供するためには、ICF(国際生活機能分類)を理解して、サービスの充実に活かしていくのがおすすめです。

しかし、ICFについてよくわからないという方も多いのではないでしょうか?

本記事では、ICFの基本的な考え方や具体的な分類、実際の介護福祉の現場でICFをどのように活用していけばいいのかを解説します。

介護福祉サービスを充実させたいと考えている方は、ICFについて具体的に知って、参考にしてみてください。

ICF(国際生活機能分類)とはどういうもの?


そもそもICF(国際生活機能分類)とは、人間の健康状態を定義する際の重要な基準のひとつです。ここでは、国際基準として世界中で用いられているICFがどのようなものなのか解説していきます。

2001年にWHOが採択|人間の生活機能と障害の分類法

ICF(国際生活機能分類)は「International Classification of Functioning, Disability and Health」の略語で、2001年にWHOが採択したことで、世界中で用いられるようになりました。この概念は、人間の生活機能と障害を分類することをおもな目的としています。
ICFでは約1,500種類に人の生活・障害を分類することができ、介護などの現場では要介護者が必要としているサービスを明確にすることなどが可能となっているのです。

なぜ? ICFが策定された理由とは|幅広く活用される分類を目指す

ICF(国際生活機能分類)がWHOによって採択されたのは2001年ですが、同様の概念の重要性はそれ以前から提唱されており、かつては国際障害分類(ICIDH)が活用されていました。

しかし、この分類基準はあくまでも試行的かつ研究的なもので、なおかつ対象者は「何ができないのか」を判断基準にしている点が特徴でした。

【国際障害分類(ICIDH)の3つの基準】
・機能・形態障害
・能力障害
・社会的不利

対して、ICF(国際生活機能分類)は、以下のように分類されています。

・健康状態
・生活機能:心身機能・身体構造、活動、参加
・背景因子:環境因子、個人因子

それぞれがお互いに影響し合って成り立っている分類となっているのが特徴です。
対象者のできることや内面について焦点をあてた分類基準になっている点が、ICIDHとの明確な違いだといえるでしょう。ICIDHにおける反省から分類基準にまつわる改訂が進められ、そのフィードバックを経るかたちでICFは考案されたのです。

ICFの目的とは?|健康状態などを記述するための統一的で標準的な指針の提供

ICFが考案された目的は、介護福祉や教育、医療などの幅広い分野で、対象者の健康状態を観測する標準的な国際基準の枠組み作りにありました。実際の現場では、以下のような目的でICFが導入されています。

・健康状況の結果や決定因子などを理解し研究するための科学的基盤の提供
・各国や各種専門保健分野などのデータの比較
・共通言語の確立による利用者間のコミュニケーションの改善
・コード化用分類リストの提供|健康情報システム
ICFの導入目的を端的に表すと「対象者の生きることの全体像」を明らかにすることです。介護・福祉サービスに関する共通の判断基準を作ることを目指しています。

ICFの特性とは? 構成要素について解説!


ICF(国際生活機能分類)の特性のなかでも、利便性・汎用性の高さについて理解するには、その分類方法を知ることが重要です。

複数の要素によって構成されているICF(国際生活機能分類)では、各々の要素で該当するものを明確にすることで、総合的な分類が可能となります。ここでは、この構成要素を細分化し、それぞれの特徴について見ていきましょう。

健康関連領域

ICF(国際生活機能分類)の構成要素を理解するためには、その領域に当てはまる人の範囲について知ることも大切です。
ICFが対象とする範囲は障害や病気を抱える人だけに限定されておらず、妊娠・加齢・様々な理由を背景としたストレス状態にある人など、すべての人が対象となりうる分類となっています。このように、ICFは広い意味においての、人々の健康状態全般に当てはめて考えられる分類となっている点が特徴です。

生活機能と障害における3つの構成要素|「心身機能・身体構造」「活動」「参加」

ICF(国際生活機能分類)の生活機能と障害の構成要素は「心身機能と身体構造・活動・参加」に分類されています。
これらの要素には異なる分類基準が設けられており、それらをもとに個々人の生活機能を定義づけられるようになっているのが特徴です。ここでは、これらの構成要素の詳細について解説していきます。

「心身機能・身体構造」とは?|生理的機能と解剖的な部分

ICF(国際生活機能分類)において心身機能と身体構造とは「生理機能と解剖的な部分」と定義されています。
・心身機能:手足の動き、精神の働き、視覚・聴覚など
・身体構造:手足や内臓の一部など。身体の一部分のこと
心身機能は手足や精神の動きなどの身体的・内面的な機能のこと、身体構造は体を解剖学的点から細分化した、各々の部位の働きのことを分類しているのが特徴です。

「活動・参加」とは?|家庭生活や対人関係・社会生活など

ICF(国際生活機能分類)で定義づけられている「活動」とは、日常生活でおこなう具体的な目的を持った活動全般を指します。
・日常的な生活行為(歩行・睡眠・入浴など)
・家事行為(炊事・洗濯・掃除など)
・余暇活動(スポーツや趣味など)
このように見てみると、日常的におこなっているあらゆる活用が「活動」の分類に該当すると考えるとわかりやすいでしょう。
一方、「参加」とは家庭や職場、社会の中での活動参加に関わることを指します。
・社会での役割(地域活動や町内会、学級委員としての役割)
・家庭内の役割(父や母、子どもとしての役割)
・職場での役割(課長や部長、社長としての役割)
社会における各種の役割と参加にまつわる行動が広く含まれている分類です。

ICFの背景因子とは?|環境因子と個人因子


ICF(国際生活機能分類)における分類は上述した三つの基準にもとづくものだけでなく、背景因子を基準とするものも含まれます。
この背景因子とは「環境因子」と「個人因子」によって構成されているもので、個人の人生と生活に関する背景全体が対象です。
「環境因子」は、個人的・社会的な定義から規定され、「個人因子」は個人の生まれ持った性質や固有のライフスタイルなどをもとに規定されます。
つづいては、これらの因子の詳細について見ていきましょう。

環境因子|物的・意識的・制度的な要因がある

環境因子は、物理的・制度的・社会意識としての環境が含まれます。具体的には、以下のような要因が環境因子にあてはまります。

・物理的な環境因子:交通機関・自然環境・建物・道路など
・制度的な環境因子:医療・介護・福祉サービス・制度・政策
・社会意識としての環境因子:生活機能が低下した人を取り巻く周りに認識

環境因子と聞いてイメージしやすいのが、物理的な環境因子でしょう。周囲のインフラや設備などの、外部的な要因がそれにあたります。そのほかには、サービス制度や政策などの制度的な環境因子、社会的な認識としての環境因子が該当することも覚えておきましょう。

ちなみに、環境因子が生活機能にプラスの影響を与えている場合は「促進因子」、マイナスの影響を与えている場合は「阻害因子」と区別して呼ぶこともあります。

個人因子|個人の人生や生活の特別な背景

個人因子とは、性別・人種・年齢・価値観・ライフスタイル・習慣・生活歴(学歴や職歴家族歴などのことです。一言で表現すると、人それぞれの個性ということになります。

個人因子は、個人の人生や生活の特別な背景を明確にするのに役立ち、それらが本人の健康状態におよぼしている影響を把握するのに役立ちます。

構成要素はどんな風に関わり合っているの?

重要なのは、上述した各々の構成要素を明確にし、分類することだけではありません。それぞれの要素の関係性を把握することに関しても同様です。
多くの場合、これらの構成要素はお互いに影響しあっていることから、ICFは「相互作用モデル」と呼ばれています。
ただし、それぞれの要素が独立性をもっているので、他の要素に完全に依存して要素が決まることはありません(相対的独立性)。構成要素を細分化し、それぞれを具体的に定義することで、要素ごとの影響を正確に観測しながらICFを有効活用できます。

ICFの評価点とは?


CFの基準をよく理解するためには、具体的な評価点についても知っておくべきです。この章では、ICFの評価点の詳細について見ていきましょう。

評価点とは|生活機能や障害の程度などを明らかにする

CFの評価点とは、上述した生活基準を適切に評価するためのポイントです。以下の生活基準は、肯定的、もしくは否定的な評価点によって判断されます。
・心身機能と身体構造
・活動の参加
・環境因子

それぞれの生活基準に関する評価点を知って、どのようにICFの基準が決定するのかを知りましょう。

心身機能と身体構造

「心身機能」と「身体構造」の生活基準を判断する評価点には、「第一評価点」と「第二評価点」の二段階あります。具体的には、以下のような評価点が存在します。
心身機能と身体構造
これらの評価点によって、「心身機能」と「身体構造」の生活基準が判断されるのが特徴です。

活動と参加

「活動」と「参加」にまつわる生活基準は、以下のような第一評価点、第二評価点の基準によって判断されます。
これらの評価点によって、「活動」と「参加」の生活基準が判断されるのが特徴です。
活動と参加

環境因子

「環境因子」にまつわる生活基準は、以下のような第一評価点のみで判断されます。
環境因子
この評価点によって、「環境因子」の生活基準が判断されるのが特徴です。

介護福祉の分野にICFを活かすには?


ICF(国際生活機能分類)の本来の目的のひとつは、個人が抱えている健康上の問題をその要因から定義づけ、有効な治療や介助について検討することです。
介護福祉の分野では、ほかの職種との連携が不可欠となることから、他業種との情報共有を円滑におこなうという点でもおおいに活用することができます。
これにより、介護サービスそのものの質を向上させることもできるため、介護福祉業界においては欠かすことのできない概念であるといえるでしょう。
この章では、以下の内容について解説します。
・ICFが役立つ場面
・ICFに記載する内容

ICFを実際の介護福祉の現場で活用できる場面や記載する内容を考えてみましょう。

ICFが役立つ場面とは?

ICFは教育や医療の場面だけでなく、介護福祉の場面でも活用されます。ここでは、ICFが実際に役立つ具体的な場面について見ていきましょう。

1. アセスメント・ケアプラン作成に必要な情報がわかりやすくなる

ICFを活用すると、介護福祉のサービス内容を検討するための「アセスメント」を集め、より利用者が求めているような「ケアプラン」の作成に活用できます。
介護福祉の現場における、アセスメントやケアプランの詳しい内容については、以下の記事を参考にしてみてください。
ケアマネジャーが行うアセスメントの流れを再確認! アセスメントへの理解を深める本を紹介

2. 利用者さんのご家族や他サービスとの連携

介護福祉サービスをICFに基づいて決めることで、利用者のご家族や部署・部門間での共通認識をつくれます。その結果、利用者のご家族や関係機関との円滑な協力体制を作ることに役立つでしょう。

ICFには何を書けばいいの?

いざICFに生活基準に関して記載しようと思っても、具体的にどのような内容を書けばいいのかわからないという方もいるのではないでしょうか?ここでは、それぞれの生活基準の項目において、具体的に何を書けばいいのかについて見ていきましょう。

1. 健康状態|変調・病気

ICFの「健康状態」について記載する場合は、病気や傷害、体調の変化などを書いていくことになります。過去の病歴はもちろん、持病がある場合は、過去と現在における状態について記載することで、対象者の健康状態を正確に把握するのが目的です。

2. 心身機能・身体構造

ICFが意味する「心身機能」と「身体構造」は、人間が生命を維持するために必要不可欠な機能を指します。「心身機能」は肉体の動き・精神面の状態、「身体構造」は関節や皮膚、筋肉などの身体の部位に関する情報を記載するのが特徴です。

3. 活動|課題などの遂行状況

ICFの「活動」が指すのは、対象者が日常生活を営む上で必要な能力です。食事や入浴、排泄などの基本的な能力から、仕事や課題がこなせるのかなどの複合的な能力に関しても記載します。
どの程度、日常生活を営むための活動ができるのかを記載する生活基準の項目です。

4. 参加|生活や活動への関わり

ICFの「参加」が指すのは、対象者が積極的に施設の知人・友人とのコミュニケーションをとりあったり、介護施設の行事に積極的に参加したりする能力です。
自発的なコミュニケーションや行事への参加など、積極的な社会活動への参加状況について、記載していく項目だといえます。

5. 環境因子|社会的環境

ICFの「環境因子」を決める要因は、「物的環境」・「人的環境」・「社会制度的環境」の3つの要素によって構成されます。
「物的環境」は自宅や介護福祉施設など、対象者が時間を過ごす環境における物理的な環境です。段差や手すり、階段、自宅から福祉施設を往復する際の道路などの物理的な環境がそれにあたります。
また、「人的環境」は家族や友人、身の回りの人間を指し、「社会制度的要因」は、憲法や法律、保険制度などの社会的システムの枠組みを指すことを覚えておきましょう。

6. 個人因子|年齢や性別など

ICFの「個人因子」は個人が持つ性質によって決まります。国籍や性別、人種のような先天的なものから、身長や体重、学歴、職歴などの後天的なものまでが対象になります。

ICFの理解は介護の質をより高める!


この記事では、ICF(国際生活機能分類)の概要や分類、介護現場での活用方法について解説しました。ICFを正しく理解して介護福祉サービスの内容に適用することで、満足度が高く、効果的な介護福祉サービスを提供できる可能性が高まるはずです。

ICFをきちんと理解して、介護福祉サービスの質向上に努めていきましょう。

引用元
厚生労働省:ICF(国際生活機能分類) 「生きることの全体像」についての「共通言語」
厚生労働省:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について

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