ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
特集・コラム 2021-10-26

理学療法士は開業できるの? 起業するならどんな仕事がある?

専門学校の数が増えたことにより、理学療法士の数は現在も増加傾向にあります。病院や介護施設に勤務する理学療法士のなかには、転職や独立・起業を考えている人も多いのではないでしょうか。これまで学んだ経験や知識は活かしつつ、今までの職場ではむずかしかった昇給も見込めるとあれば、非常に魅力的でしょう。

今回は日本における理学療法士の独立開業について実情を理解し、起業するならどのような仕事があるのか、その方法などをご紹介します。

理学療法士は独立開業できるの?

そもそも、理学療法士の独立や開業は可能なのでしょうか。将来的な展望とともに、今一度確認しておきましょう。

理学療法で独立開業はできない|開業権ナシ

開業をするためには、開業する資格(開業権)が必要です。リハビリ先進国では、理学療法士にも開業権が認められている国もあります。

しかし、日本では理学療法士は法律上、「医師の指示の下に理学療法をおこなうことを業とする者」と定義されているため、理学療法士が独立開業して単身で理学療法をおこなうことは認められていません。

将来的に開業権は認められる?

2019年、四病院団体病院協議会は「理学療法士(PT)などリハビリ専門職が、医療保険によるリハビリテーションを提供するため、独立して開業するのは望ましくないとの認識で一致した」と発表しています。

理学療法士の数自体は増加傾向にありますが、同協会によると「地域偏在があり、回復期病棟などを担う病院で充足感はない」との意見が出たということです。

一方で、厚生労働省によると「理学療法士の供給数は2040年には需要数の約1.5倍になる」と推測されています。理学療法士数が増えても必要とされる施設には限りがあるため、今後需要が減る可能性があると指摘。

近年は、転倒防止の指導などの介護予防分野で開業する場合には、理学療法士を名乗ることが認められるなど、時代とともに変化するようになりました。そのため、今後も理学療法士の開業権を求める声は強まることが予想されています。

理学療法士が起業するならどんな仕事があるの?

理学療法士には開業権がないことを説明しましたが、実際に理学療法士が開業しているケースを知っているという人もいるでしょう。開業している人は、理学療法ではない別の事業として起業し、経営しているのがほとんどです。

ここでは、理学療法士が別の事業として起業するならどのような仕事があるのかをご紹介していきます。

1. 事業所を開設する|デイサービス・訪問看護ステーションなど

少子高齢化にともなって、デイサービスや訪問看護ステーションへのニーズも高まってきました。そのなかには、「自分の力でなるべく動けるように」と願い、リハビリを重視する利用者や家族も増えてきています。

身体機能の回復を目指してリハビリや訓練をおこないながら支援する理学療法士の役割は、現代のニーズに非常にマッチするものです。理学療法士が開業する場合、知識や経験をもっとも活かせるのがデイサービス・訪問介護ステーションなどの開業でしょう。

訪問看護ステーションを開設するには?

訪問看護ステーションは、赤ちゃんからお年寄りまで、病気や障がいがあり、訪問看護が必要な人が利用できるものです。利用者の自宅で支援をおこなうため、大掛かりな設備や広いスペースは必要ありません。建設費や施工費がかからないため 、初期投資が少なくて済むことも魅力のひとつでしょう。

訪問看護ステーションを開設するための手順は、以下のとおりです。

・法人を設立する(すでに法人がある場合は、その文言を追加して登記変更をおこなう)
・市町村・都道府県への開設の事前協議
・事務所の設立
・人員の確保と備品を準備
・指定申請書類の準備・提出
・指定を受けてから事業を開始

申請してから申請が下りるまでの目安時間は、半月~1カ月です。

2. 整体院やサロンを開業する|リハビリはNG

理学療法士と同様に徒手療法をおこなう国家資格のなかには、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師など開業権を持つ資格も多くあります。こうした資格を新たに取得し、その専門家として開業しつつ作業療法士としての経験や知識を活かすのもひとつの手です。

ただし、あくまでも開業権のある資格での開業のため、理学療法を提供できるわけではない点には注意が必要となります。

柔道整復師

柔道整復師は、スポーツや日常生活のなかで生じた各種損傷に対して、外科的治療や薬品の投与といったアプローチをすることはありません。手を用いた応急的もしくは医療補助的方法によって、回復を図るものです。柔道整復師養成施設で3年以上学んだうえで、国家試験に合格する必要があります。

理学療法士のなかには、病院や介護施設で働きながら夜間の柔道整復師学校で学び、開業権の獲得のためにダブル資格の取得を目指す人も増えているようです。柔道整復師は、自ら整骨院を開き経営者となることができますが、整骨院の数は年々増加して生存競争が過熱しています。それにともない、柔道整復師が開業する際の条件も厳しくなってきました。

そのため、柔道整復師の資格を取ったあとには、独立開業するほかにも接骨院や病院、介護・福祉施設での勤務、スポーツ分野でトレーナーとして働くケースもみられます。専門の養成施設での勉強や国家試験の合格が必須条件ですので、自分の時間や金銭的な余裕と照らし合わせながら検討する必要があるでしょう。

3. フリーランスで働く|パーソナルトレーナーなど

自身の店舗を持たず、フリーランスとして働く起業方法もあります。複数のフィットネスクラブやスポーツジムなどと契約し、活動をおこなうものです。

フリーランスで働きながら、ほかの資格を取得してパーソナルトレーナーになるのもよいでしょう。最近では、オンラインでパーソナルトレーニングをおこなうケースも増えており、グローバルな展開も期待できる働き方だといえます。

NSCAジャパン|NSCA-CPT

パーソナルトレーナーは無資格者、未経験者でもできる仕事ですが、信頼を得て多くのクライアントから指名を集めるためには、資格を取得しておくことをおすすめします。パーソナルトレーナーに関連する資格のなかで、信頼性が高い資格のひとつがNSCA認定の「NSCA-CPT」です。

NSCA-CPTは、アメリカの「NSCA(National Strength and Conditioning Association)」の日本支部である「NSCAジャパン(日本ストレングス&コンディショニング協会)」が認定するパーソナルトレーナーの資格のひとつ。

NSCAは一般の人々の健康増進と維持、アスリートの疾病予防や競技力向上を目指し、研究にもとづいたトレーニングとコンディショニングの知識を普及するための活動をおこなう団体です。日本でも、フリーランスと業務委託契約を結ぶ条件としてNSCA-CPTを取得していることを掲げているフィットネスクラブもあるため、取得しておくと活動範囲が広がるでしょう。

NSCA-CPT認定試験は、パーソナルトレーナーとしての知識、技術、能力が、NSCAジャパンが定めた適正レベルに達しているかを判断するためのものです。18歳以上のNSCAジャパンの会員であり、なおかつ高等学校卒業者であること、または高等学校卒業程度認定試験(旧:大学入学検定試験)合格者であれば受験できます。

受験料は4万6,000円(税込)、試験地と試験日は試験申込みをおこなった日から120日の間であれば、受験者が任意で選択可能です。NSCAジャパンによると、2019年度の合格率は78.9%と比較的取得しやすい資格でもあります。

4. セミナーや研修の主催者になる

セミナーや研修をおこなう会社を立ち上げて、主催者になるという方法もあります。日々臨床現場でさまざまなスキルを求められる理学療法士は勉強熱心な人が多い傾向にあり、各地でおこなわれているセミナーや勉強会も盛況です。自身も理学療法士として参加した経験のある人も、多いのではないでしょうか。

「自分が新人だったときどんな情報が欲しかったか」「今、現場が必要としている知識や技術はなにか」など、自身の経験を活かしたセミナーは需要が高いと考えられます。

理学療法では開業できない! 知識と経験を活かせる仕事を選ぼう

現在の日本では、理学療法士は医師の指示がないと保険診療下で理学療法を提供することはできません。しかし、ほかの資格を取得するなどの工夫によって、他事業としての独立や開業は可能です。

少子高齢化がすすむ現代社会においては、理学療法士として培った知識や経験を活かせる場や求める人々は多くなっています。こられを活かせる仕事を選んで、独立開業をしてみるとよいでしょう。

引用元:
厚生労働省 通所介護及び療養通所介護(参考資料)
厚生労働省 柔道整復師国家試験の施行
厚生労働省 職業情報提供サイト 柔道整復師
全国訪問看護事業協会 訪問看護を利用する方
全国訪問看護事業協会 訪問看護ステーションを開設したい方
東京都福祉保健局  3 訪問看護・介護予防訪問看護(新規に指定を受けたい方へ)
NSCA資格認定試験 NSCA認定資格とは
NSCA資格認定試験 資格認定条件

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの理学療法士求人をリジョブケアで探す

株式会社リジョブでは、介護・看護・リハビリ業界に特化した「リジョブケア」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄