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特集・コラム 2023-01-06

精神保健福祉士の仕事内容と資格についてご紹介!実務経験は受験資格の対象になる?

精神保健福祉士の試験を受けるためには、受験資格を満たしていなければいけません。精神保健福祉士試験の受験資格は、実務経験者でも対象になります。しかし、卒業した大学の学科、または大学へ進学していないなど、場合によって実務経験を必要とする年数が異なります。

今回の記事では、精神保健福祉士の仕事や資格の概要についてご紹介します。

精神保健福祉士とは


精神保健福祉士とは、精神保健福祉分野で活動する専門職で精神保健福祉法に基づいた国家資格です。この資格は名称独占資格で、資格を有している人だけがその名称を用いることができます。

精神保健福祉士の仕事内容、社会福祉士・臨床心理士との違いをご紹介します。

精神保健福祉士の仕事内容

精神保健福祉士の主な仕事は、精神障がいを持つ方や心の病を抱えている方が、社会復帰できるように相談やサポートをすることです。また、患者さんの家族から相談を受けたり、公的支援制度の斡旋も行ったりします。

精神保健福祉士は、精神保健福祉分野のプロとして医療機関や障害者施設などの福祉機関などに勤めます。

社会福祉士との違い

精神保健福祉士と社会福祉士で大きく異なる点は、相談者です。社会福祉士は、子どもから高齢者、障がい者など日常生活で困っている方を対象に、福祉に関する相談を受けます。

一方で精神保健福祉は、精神障がい者を対象にしています。対応する年齢は、両者共に幅広いですが、精神保健福祉士は、基本的に精神障がいを抱えている人を対象にしていません。

臨床心理士との違い

精神保健福祉士が国家資格であるのに対して、臨床心理士は民間資格です。また、仕事内容も異なります。

精神保健福祉士は、精神障がい者の相談やサポート、必要に応じた訓練を行います。臨床心理士は訓練を行うことがありません。基本的な仕事は臨床心理学にも基づいたカウンセリングで問題を解決することです。

精神保健福祉士の資格について


精神保健福祉士は年に1回試験が開催されます。これから試験に挑まれる方へ向けて、精神保健福祉士の試験内容や合格率・難易度・受験資格をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

試験内容

精神保健福祉士の試験は、精神保健福祉に関する専門科目と、社会福祉士との共通科目の2つが試験科目で、全17項目に分類されています。

出題数は、163問で配点が1問1点です。専門科目80点満点、共通科目83点満点で多肢選択形式としてマークシートを用います。

合格率と難易度

精神保健福祉士試験の直近5回の合格率と難易度をご紹介します。

受験者数 合格者数 合格率
第20回(2018年) 6992人 4399人 62.9%
第21回(2019年) 6779人 4251人 62.7%
第22回(2020年) 6633人 4119人 62.1%
第23回(2021年) 6165人 3955人 64.2%
第24回(2022年) 6502人 4267人 65.6%

上記のデータを見ると、毎年60%の合格率です。直近の試験、第24回の合格基準が厚生労働省から公表されているため、引用します。

(1) ア 総得点163点に対し、得点101点以上の者(総得点の60%程度を基準
とし、問題の難易度で補正した。配点は1問1点である。)。

イ 試験科目の一部免除を受けた受験者
(精神保健福祉士法施行規則第6条)
総得点80点に対し、得点47点以上の者(総得点の60%程度を基準と
し、問題の難易度で補正した。配点は1問1点である。)。

(2) (1)のア又はイを満たした者のうち、(1)のアに該当する者にあっては
①から⑯の16科目群、イに該当する者にあっては①から⑤の5科目群すべて
において得点があった者。

引用元:厚生労働省|第24回精神保健福祉士国家試験の合格基準及び正答について

精神保健福祉士は、合格率が60%を超えており簡単そうに見えますが、各科目で得点を得なければいけません。そのため、偏った勉強ではなく満遍なく学習することが必要不可欠です。

受験資格

精神保健福祉士の国家試験を受けるための受験資格を取得するには、大きくわけて5つのルートがあります。

1.保健福祉系の大学で指定科目履修する(短大の場合は実務経験と合わせて4年)

2.福祉系の大学で基礎科目を履修後(短大の場合は実務経験と合わせて4年)、6カ月の短期養成施設に通う

3. 社会福祉士の資格を取得後、6カ月の短期養成施設に通う

4. 一般の大学を卒業後(短大の場合は実務経験と合わせて4年)、1年以上の一般養成施設に通う

5. 4年間の実務経験のあとに、1年以上の一般養成施設に通う

これらのいずれかのルートを満たしていれば、受験資格を満たすことができます。

短期養成施設とは、主に福祉系大学や短期大学ですでに社会福祉の知識を有している方が入学する施設のことをいいます。一般養成施設は、主に福祉系以外の4年生大学を卒業、あるいは福祉施設等で精神障がい者の相談業務を4年以上経験した方が入学します。

社会人でも実務経験があると受験が可能


精神保健福祉士国家試験の受験資格ルートのひとつ、4年間の実務経験を積んで1年以上の一般養成施設に通う方法について解説します。

実務経験の詳細については、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページに記載されていますので、合わせてご覧ください。

4年間の相談援助実務+一般養成施設ルート

精神保健福祉士は、精神障害者の社会復帰への支援をおこなう専門職です。そのため、国家試験の受験資格になる実務経験では、実務経験として定められている期間の業務の半分以上が精神障がい者の相談援助に関する業務でなければいけません。

相談援助と認められる業務とは?

精神保健福祉士の国家試験の受験資格になる実務経験として認められる相談援助とは、具体的にはどのような内容の業務なのでしょうか。

実務経験と認められない業務もあるので注意しよう

精神障がい者の精神疾患の状態に配慮しながら退院後の生活について話し合うことや、退院後の生活に適応するための訓練などがあります。また、ひとり暮らしをはじめる場合などは、洗顔や入浴などを毎日おこなうように促したり、掃除や洗濯、調理などの家事の練習をしたりすることも相談援助に含まれているのが特徴です。

家族や近所の人との交流の仕方などのかかわり方を支援することもありますし、地域で暮らす際に生じる手続きを一緒におこなったり、代行したりすることもあります。これらの支援はさまざまな職種が分担しておこなうので、そのための打ち合わせや計画づくりもしなければなりません。

ただし、精神科病棟でのルーティンとなる食事の介助や入浴の介助などの業務は、実務経験として認められないので注意が必要です。

児童が利用者の施設の場合|保護者対応が実務経験の対象になることも

児童の保護者が精神障がい者の場合には、保護者への相談業務が実務経験の対象となります。なお、乳児の場合は保護者のみが対象です。

どんな職場での実務が認められるの?

実務経験として認められるのは、どのような法律にもとづく施設で、どの職種で働いた場合なのでしょうか。対象となる法律は多岐にわたりますが、ここでは代表的な5つの法律から解説します。

精神保健および精神障害者福祉に関する法律

精神保健福祉法では、精神科病院と精神保健福祉センターが対象です。これらの施設で、相談業務をおこなうソーシャルワーカーや社会福祉士、精神保健福祉相談員などが相談援助にかかわっていれば対象になります。

児童福祉法

児童相談所や乳児院、障がい児の相談支援をおこなう施設、入所施設、母子生活支援施設、児童家庭支援センターなどが対象です。これらの施設で児童指導員や保育士、家庭支援専門相談員として業務にかかわっていると実務経験の対象となります。

地域保健法

保健所と市町村の保健センターが対象です。精神保健福祉相談員や社会福祉士、精神科ソーシャルワーカー、心理判定員などの職種で、実務経験にかかわっていることが条件となります。

医療法

精神科や心療内科のある病院や診療所が対象です。精神科ソーシャルワーカーや医療ソーシャルワーカーなどの職種で、実務経験にかかわっている必要があります。

生活保護法

救護施設や厚生施設などの入所施設や就労支援をおこなう事業所が対象です。これらの施設では、生活指導員や就労支援員が対象となります。

4年間はどう計算するの?

常勤または、労働時間が対象となる施設での常勤者のおおむね4分の3以上の時間を従事した期間を通算して計算します。

実務経験証明書を事業所に記入してもらおう

実務経験証明書の記入例には「施設または事業所の方へ」として、証明書作成時の注意事項が掲載されていますので。記入例も添えて、勤務した事業所に記入を依頼しましょう。

精神保健福祉士はどこで働く?


精神保健福祉士は、精神的な悩みを持つ方々をサポートするため様々な場で活躍することができます。公益財団法人社会福祉振興・試験センターが公表した「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査結果」を基に就職先が多かった分野を4つご紹介します。

医療関係

医療関係では、精神科病院や診療所、その他病院で働きます。病院での精神保健士の仕事は、精神障がい者の生活支援や相談、退院後のサポートの他に、病院に勤務している医療スタッフへ精神福祉のアドバイスなどを行います。

福祉関係

福祉関係の施設は、さまざまな分野に分かれています。高齢者福祉・障害者福祉・児童母子福祉・地域福祉があり、就職する施設や事業所によって仕事内容は異なります。福祉関係に就く場合は、その事業または施設がどのようなサービスを提供しているのか、細かく確認するようにしましょう。

生活支援を提供している場合は、利用者やその家族の相談に乗ったり、日常生活を送るための訓練を行います。就労支援を提供している場合は、就職のアドバイスや利用者に合った就労先を紹介します。

教育関係

精神保健福祉士は、教育機関でも活躍することができます。学校生活で悩む子どもや家族を、精神保健福祉の観点からケアします。教育機関では、子どもや家族だけが対象ではありません。教育機関で働いている教員などもサポートの対象になります。

行政関係

精神保健福祉センターや自治体、保健所などの福祉行政機関では、精神保健福祉相談員として障がい者や家族の相談、公的支援手続きの案内等を行います。福祉行政機関では、地域住人への普及活動をしていることもあり、活動の企画や運営管理もします。

精神保健福祉士の就労状況データ

公益財団法人社会福祉振興・試験センターが公表した「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査結果」では、回答者の約75%が福祉・介護・医療分野で仕事をしています。
これらの分野の内、最も就労者数が多いのは障害者福祉関係で、それに次いで医療関係・高齢者福祉関係が多いです。公益財団法人社会福祉振興・試験センターでは、これらのデータの他に精神保健福祉以外の資格の保有状況や、職場探しの方法などのアンケート結果も公開されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

精神保健福祉士のやりがい


精神保健福祉士の主な仕事は、精神障がい者の相談やサポートです。利用者一人ひとりで悩みは違うため、その方に合ったアドバイスやサポートを行います。

日々サポートをすることで一歩ずつ社会生活へ向けて前進する姿を見ることや、自分が担当した患者さんが社会復帰を達成した時はやりがいを感じることでしょう。

精神障がい者の側に立ちサポートをしたい方には、精神保健福祉士はおすすめです。

精神保健福祉士の年収


精神保健福祉士の仕事に就くにあたり、年収が気になる方もいることでしょう。公益財団法人社会福祉振興・試験センター「社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査結果」によると、精神保健福祉士の平均年収は、404万円です。平均年収は男女共に50代が最も高いです。

精神保健福祉士の需要と将来性

内閣府が公表した「障害者の状況」では、精神障がい者の数は419万3000人とされています。さらに今後、高齢化に伴い障がい者の数は増加すると予測されています。そのため、精神保健福祉士の需要は拡大していくことでしょう。

精神保健福祉士は実務経験者でも受験資格を得られる


精神保健福祉士の仕事内容や、受験資格をメインにご紹介してきました。精神保健福祉士試験の受験で認められている実務経験の範囲は広く、それらに該当する方で、福祉系の大学を卒業されていない場合は、4年以上の実務経験と一年以上の一般養成施設へ通うことで受験資格を得ることができます。

これから資格の取得を目指す社会人にとって、一般大学や短期大学に入学する必要がないことは利点かもしれません。精神保健福祉士試験を受験される方は、最も近い受験資格を得るようにしましょう。

引用元
社会福祉法人全国社会福祉協議会:福祉の資格
厚生労働省:第24回精神保健福祉士国家試験の合格発表を実施します
厚生労働省:第23回精神保健福祉士国家試験の合格発表
厚生労働省:第22回精神保健福祉士国家試験の合格発表
厚生労働省:第21回精神保健福祉士国家試験の合格発表
厚生労働省:第20回精神保健福祉士国家試験の合格発表
厚生労働省:第24回精神保健福祉士国家試験の合格基準及び正答について
公益財団法人社会福祉振興・試験センター:精神保健福祉士国家試験
公益財団法人社会福祉振興・試験センター:令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査結果
内閣府:障害者の状況

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