ひとりひとりの理想を叶えられるように努めています Vol.22【介護士・小林恵巳さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。今回は、千葉県内4つの市でグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、デイサービスを12事業所運営している株式会社マウントバードのサービス付き高齢者向け住宅みのりの郷ホーム長 小林恵巳さんへインタビュー。
前編では、介護士の資格を取得した経緯や、株式会社マウントバードの強み、ホーム長としての業務などについて伺いました。後編では、仕事をしてみてのギャップや利用者さまへの気持ち、今後の目標などについてお聞きします。
介護士として嬉しい出来事と悩み
介護職歴10年目ですが、大変だと思ったことはありません
──介護の資格取得後、働く前と実際に働かれてみた時に、ギャップはありましたか?
そうですね、ありました。今まで学校では『認知症=感情がない・わからない』というイメージで知識として認識していました。しかし、実際に働いて認知症の方とふれあってみると、「嬉しい」とか「悲しい」という当たり前の感情を持ち、全てが分からなくなっているわけではないということが分かり、認知症である以前に、「同じ人間なんだな」と感じたことが一番のギャップでした。
──認知症の方は記憶が曖昧なイメージでしたが、そうではないんですね。
そうなんです。教科書で学ぶことは、あくまで知っておいて当然の基礎知識。さらに、ひとりひとり生きてきた環境が違う『人間』を相手にしているので、フォーマットのようなものに完全に当てはめることができない、教科書で習った通りにはいかないということを痛感しましたね。
──仕事をしていて、大変だと思うことや難しいと思うことなどはありますか?
『職員をまとめること』ですね。良いケアを提供するためには、チームケアが大切なんです。ひとりではなく、みんなと力を合わせることが重要になるので、同じ方向性を向くこと一番大変ですね。ひとりでも寄り道をしてしまいそうな人がいる場合は、とにかく相手の話をよく聞き、説得する。一方的に説得するのではなく、どうしたら一緒に解決できるのか、寄り添って考えていますね。
──いろんなサービスが受けられるみのりの郷さまですが、他職種の方と多く連携をとられていて、衝突することはありますか?
衝突はないです。逆に他職種の方だと、自分たちと違う視点からのアドバイスがプラスになることもありますね。基本的には、相手の意見を受け入れて活かせているので、ありがたいことにそういった問題はなく、良好に連携ができています。
──それは素晴らしいですね。一方で、利用者さまに対して大変だと感じることはありますか?
時々悩むことはあります。でも、利用者さまの生活の中の困りごとを支えることが介護職の役割だと思っているので、時々悩むことはありますが、大変だとは思わないです。
──さすがです。では、逆に介護職に就いていて嬉しいことはありますか?
あります。やはり利用者さまが笑顔で楽しそうにしている様子をみることができたり、「ありがとう」の言葉をいただけたり。名前を覚えて呼んでくれることも嬉しいです。
あとは、うちのホーム理念が『和気相愛(わきあいあい)』なのですが、その通りに職員が笑顔で働いている時が、楽しくも嬉しくも感じています。
今後の目標とアドバイス
ひとりで抱え込まず、仲間と共有することを忘れずに
──働きやすい環境であることは、仕事をするうえでとても大事ですよね。ホーム理念のお話もそうですが、理想とやりがいに直結しているんですね。施設として、小林さん個人としての目標がありましたら、教えてください。
一言で言うと、たくさんある施設の中から利用者さまに一番目に選んでもらえ、空いたらすぐに埋まっちゃうような人気の施設にしたいです!
──なるほど。たくさん施設がある中で、真っ先に選んでもらえるというのは施設からするととても喜ばしいことですよね。その実現のために、なにか日頃から取り組んでいることはありますか?
お客様の満足度を上げなければいけないと思っています。上げるためには、それぞれの利用者さまの理想としている生活に近づけていくことが利用者さまひとりひとりの満足度向上につながるんですね。
施設のペースに合わせるのではなくて、利用者さまの理想を一番に叶えたいと思っています。そのために、ひとりでも多くの利用者さまがいきいきとした生活が送れるように、難しいようなお願いでもなるべく叶えてあげる意識でいます。
──職員の皆さまがそのように意識することで、利用者さまは安心して生活できるようになりますね。
小林さんの経験を踏まえたうえで、今後、介護業界に携わる方へアドバイスいただけますでしょうか。
まず、介護職は、世間的に大変なイメージが多く広がっているように思います。でも、私が介護職をやってきて感じたことは、そんな大変な環境の中で行う仕事だからこそ、仲間と分かち合える喜びが大きいということを伝えたいです。
また、利用者さまの人生の一部に私たちが関わることで、良くも悪くもその先を左右してしまいます。なので、親身に寄り添い、利用者さまのことを考えられる介護士を目指すように心がけてもらいたいです。少しでも意識することで、利用者さまが安心して預けられると思うんですね。そうやって利用者さまを第一に考えていけるようになると、「大変」という感情より、「喜び」が勝っていくはずです。
あと特に重要なのが、ひとりで抱え込まずに、上司や同僚などに相談することが大事です。一緒に悩んでくれたり考えてくれる仲間がいるだけで、離職にもつながらずに頑張っていけると思います。
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それぞれの生きてきた環境を理解し、配慮しながら丁寧に仕事をこなしている小林さんから多様性の大切さについて学び、ひとりで抱えずに周囲に相談することで、日常的に意識しすれば救われる人がかなりいることに気づかせてくれました。貴重なお話をありがとうございました。
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
Data
株式会社マウントバード
住所:新宿区早稲田鶴巻町557
電話:03-6205-5895