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介護・看護・リハビリ 2021-06-27

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.37】介護職ができる医療行為以外の応急処置/覚えておきたい3つの体位

介護職は、高齢者と常に接するお仕事です。終末期の段階にはない利用者・入所者の担当だったとしても、予期せぬ「急変」にいつ遭遇するとも限りません。介護現場での困りごとの対処法を紹介する当企画の今回は、「急変」時に状態の悪化を防ぐ適切な体位を取り上げます。

応援・救急車は呼んだ。到着までの間にできることは?

「急変」とは、終末期の段階にはない状況にも関わらず、心停止や呼吸停止、ショック状態や意識障害、そしてこれらに準ずる重篤な状態に陥ることをさします。医療機関であれば医療職による専門的な救命処置ができますが、介護職の現場はそうでないことがほとんどです。利用者の自宅や介護施設で「急変」が起こった場合を考えると、介護職としては医療職でなくてもできる救命処置や応急処置を身につけておきたいところですね。

今回は、一通りの救命・応急処置をすませた後、医療職や救急車の到着を待つ間にしておくとよい体位についてご紹介します。

ポイント1: 頭部後屈あご先挙上法(とうぶこうくつあごさききょじょうほう)

まず、急変者を平らな場所に仰向けに寝かせます。その後、片手をひたいに当てて、もう一方の手の人差し指と中指であごを上げ、空気が通りやすいように気道をまっすぐにする方法です。

呼吸停止やあえぎ呼吸、いつも通りの呼吸をしているが意識がないという場合は、基本的にはこの「頭部後屈あご先挙上法」で気道を確保します。

ポイント2:回復体位

左右のどちらかを下にして寝かせ、上になった腕を曲げ、手の甲を顔の下に入れ頭を安定させます。上側の脚は、膝を90℃程度曲げ、うつ伏せ気味になるようにして、体全体を安定させます。片麻痺がある人は麻痺側を上にしましょう。次に、頭を少し反らせて気道を確保。嘔吐しても窒息しないように口は床に向けます。

嘔吐の危険がある場合は、「頭部後屈あご先挙上法」ではなく「回復体位」にしましょう。やむを得ず急変した利用者のそばを離れるときも、この体勢にしましょう。

ポイント3:ショック体位

まず、急変者を平らな場所に仰向けに寝かせます。頭に枕は入れず、足側が15cm~30cm程度上がるよう、枕や座布団などを入れます。これは、顔面蒼白でショック状態が疑われる場合に行います。足側を高くすることで静脈の血液が心臓に戻りやすくなるため、血圧の上昇効果が期待できます。あまり長時間この体位を続けると頭に血が上りすぎてしまう恐れもあるため、注意が必要です。

ポイント4:セミファウラー位

仰向けで上体を15~30度起こした状態に保てるよう、背中の下に布団やクッションなどを入れます。背もたれ付きのイスをひっくり返して置き、背もたれの傾斜を利用する方法もあります。これは、呼吸が苦しそうな場合にとるとよい体位です。この姿勢にすることで横隔膜が下がり、肺が広がりやすくなったり、肺の血管にたまった血液が流れやすくなったりします。

救急隊の到着までに気を付けるべき2つのこと

1.急変者の状態に応じて体位を選ぶ
2.状態の変化に合わせて都度体位を変える

今回ご紹介した体位は、窒息を防いだり、苦痛を和らげたりするためのものです。急変者の状態をよく観察して、状態に合った体位をとってあげましょう。そうすることで、医療職や救急隊の到着を待つ間の悪化を予防する意味も持っています。滅多に遭遇することのない状況だとは思いますが、慌てずに冷静さを保つことが大切です。

急変に遭遇した時にやることは、下記もご参照ください。(各ページへのリンクをお願いします。)

【vol.27】利用者が急変! まずは何をすればいい?
【vol.29】利用者の急変に備える/気道の確保と胸骨圧迫のやり方
【vol.35】医療行為以外で介護職ができる救命処置/AEDの適切な使い

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

おやつのお声かけをしにお部屋に行くと、入居者さんが頭から血を流して倒れていた! という経験が私にもあります。この時に私が取った行動は、1. 看護師を呼び出す、2. 応援を呼んで、他の介護職に相談員等への情報共有をお願いし、3. 看護師の指示のもと医療品などを準備、4. 救急車を要請、という感じです。

とはいえ、発見した瞬間は、「まず何をどうしたらいいのか」ということで頭がいっぱいになりパニック寸前で、とっさには冷静にどうするべきかを考えられなかった記憶があります。私のように居住型施設で急変や事故があったときは、まずはナースに連絡して判断を仰ぐと覚えておくといいのではないでしょうか。訪問介護の場合は、所属事業所の上長に。

緊急事態はスピード感が命です。応急処置の知識に乏しく「どうしたらいいですか?」とゼロから確認するのと、自分なりの知識をもって「〇〇で対応していいですか?」と確認をするのでは、処置のスピード感が全く違います。お互いに協力してよりスピード感を持って対応できるよう、救命・応急処置の知識は持っておきたいものですね。

文:細川光恵
参考:「介護現場で使える 急変時対応便利帖」株式会社翔泳社

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

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