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ヘルスケア 2022-03-27

耳・鼻・喉の奥深い悩みを抱える人を救いたい!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.54 はりきゅうルーム岳 竹内岳登さん #1】

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。

今回は、日本で唯一“耳鼻科専門”を掲げる鍼灸院「はりきゅうルーム岳」総院長の竹内岳登さんにインタビュー。前・中・後編の全3回でお送りします。

鍼灸師として経験をつむ中で耳、鼻、のどの症状に注目し、専門の鍼灸院を開くことにした竹内さん。現在は2店舗を展開し、他業種に向けたコンサルティングなども行っています。

前編となる今回は、竹内さんのこれまでの道のりと、耳鼻科を専門にした理由、現在の働き方についてお聞きします。

お話を伺ったのは…
耳鼻科専門鍼灸院「はりきゅうルーム岳」総院長 竹内岳登さん

はり師・きゅう師、JSメソッド認定鍼灸師、Re Voiceメソッド認定鍼灸師。鍼灸専門学校卒業後、デイサービスでの機能訓練指導、鍼灸整体院や鍼灸院での施術などで経験を積み、2017年「はりきゅうルーム岳」をオープン。現在、大塚院と代々木上原院の2店舗を経営しながら、企業研修や経営コンサルタント業も行う。「耳鼻科専門鍼灸師GAKU先生」としてYouTubeチャンネルも運営中。

竹内さんのYouTubeチャンネル:耳鼻科専門鍼灸師GAKU先生

アーティストが持つ喉の悩みに着目し、耳鼻科専門鍼灸院を構想

29歳で耳鼻科専門鍼灸院を開業した竹内さん

――まずは鍼灸師を目指したきっかけを教えてください。

僕は学生時代、ずっと少林寺拳法をしていました。部活の他に道場にも通うほどだったんですが、その道場がけっこう大きくて幅広い世代の人が通ってきていたんです。同じ門下生のなかに、60代くらいの鍼灸師の方がいました。

大会前になると、その人が怪我をした子どもたちをどんどん改善していくんです。その姿を見て、「こんな魔法使いみたいな仕事があるんだ」と思ったのが、鍼灸との出会いでした。

「僕も魔法使いになりたい」と思い、高校卒業後、鍼灸の専門学校に進学したんです。

――卒業後の経歴を教えてください。

21歳で卒業して、最初は整体院で半年ほど勤めました。そこを退職して1年ほど働けなくなった時期があって。自分は社会不適合者なのかなと現実を突きつけられた期間でしたね。

そこからリハビリ的な感じで、デイサービスで機能訓練指導員として働きました。認知症の方や脳卒中による麻痺のある方に施術をして、QOLを上げていくという仕事でした。退職後、鍼灸整骨院で1年ほど、鍼灸院で3年半ほど働きました。鍼灸整骨院時代には、「活法」という整体術に出会い、今でもずっと学び続けています。

その後、独立して29歳で耳鼻科専門鍼灸院「はりきゅうルーム岳」を開業しました。

――耳鼻科専門で独立しようと思ったきっかけは?

鍼灸院に勤めているころ、歌手をしている方と出会いました。最初は鼻炎の悩みで来院されたんですが、お話をしていくうちに「声が思うように出せない」という悩みがあるとわかり、みてもらえないかと頼まれたんです。

そんなこと僕はしたことがないし、調べても例がない。手探りでやってみるしかないなと、お互い協力し合いながら改善する方法を探りました。そのなかで、歌手などのアーティストの方たちは、病院に行っても悩みをなかなか解決できないという現状を知ったんです。

そういった方たちに、何とか良くなってもらいたい。そして、僕の施術でアーティストの方たちが高いパフォーマンスを発揮できれば、もっと多くの人を感動さえられる。そこにすごく魅力を感じて、耳鼻科専門鍼灸院ができないかと考え始めました。

耳鼻科症状の悩みの深さを知り、多くの人を助けたいと思うように

竹内さんご自身もアレルギー性鼻炎に悩まれていたそう

――耳鼻科専門の鍼灸院は、なかなかめずらしいですよね。

そうですね。これまで誰もしてこなかったことなので、既存の技術では通用しません。だから耳鼻科専門にすると決めてから、耳や鼻、のどについて深く勉強しました。そのなかで気付いたのは、顔面神経痛や突発性難聴、上咽頭炎といった、病院での治療でも治りにくい症状が多い分野だということ。それはつまり、困っている人がたくさんいるということです。そう気づいたことで「多くの人の助けになりたい」と耳鼻科専門への気持ちがより強まり、これまで培ってきた鍼灸や活法に、専門的な知識を取り入れながら、新しい技術を構築していきました。

――開業されて5年弱で2店舗を開かれています。それだけ患者さんが多いということでしょうか。

耳鼻科やのどに悩みがある方は、かなり多いですね。うちは本当に耳鼻科専門で、腰痛や肩こりなどの症状はお受けしていません。

開業当初は、駒込でベッド2床のスペースでスタートしました。2年ほどでベッドが足りなくなり、代々木上原店を出すことになり、2年後には駒込院を大塚院に拡大移転しました。それでも集客に困らないほど、悩みを抱えている方は多い。やはり耳鼻科症状に専門的に取り組んでよかったなと思います。

現在は「人間性」を重視した人材育成に尽力中

竹内さんは現在、新規の予約をストップして後進の育成に邁進中

――現在の働き方を教えてください。

今は僕の新規の患者さんは取っておらず、施術は週3回に限定して、後進の育成などに力を入れています。

施術は1人当たり30分ほどで、1日12~14名をみています。
施術に入る日以外は、経営面の仕事の他、コンサルタントや企業研修といった外部での仕事をしています。コンサルや研修では、「人として」の在り方を伝えることが多いです。

そういった「人として」という面は、自分の鍼灸院の運営でもとても大切にしている部分。入社したスタッフの研修では、まず「人として大切なことは何か」とか「話を聞くとはどういうことなのか」という面から伝えていきます。技術を教えるのは、研修の終盤になってからですね。

――人間性の大切さに気づいたきっかけは?

以前勤めていた鍼灸院が、技術力を重視したところだったんです。僕もそこに憧れて入ったんですが、実際のところ経営面や患者さんの幸福度、患者さんと施術者の関係性を見てみると、疑問に感じる部分がありました。全然楽しそうに仕事をしていないというか。

だから患者さんを幸せにするのは技術じゃないんだなと気づきましたし、技術に固執しすぎるとすごく仕事がつまらなくなりそうだなと思ったんです。

技術はもちろん大切だけど、患者さんから感謝されたり、人の人生を満たすには、技術だけでは埋まらない。その気づきがあったから、自分の院のスタッフはもちろん、技術に固執して苦しんでいる同業者さんに、「そうじゃないんだよ」と伝えているんです。
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耳鼻科系のお悩みの根深さを知り、助けになればと耳鼻科専門鍼灸院を開いた竹内さん。開業後、その噂を聞きつけた悩める患者さんが続々来院されました。その技術力と経営のノウハウを知りたいという同業者からの声も多いそう。

次回は、竹内さんがお仕事に感じる魅力や大変さ、鍼灸師を目指す人へのアドバイスをお聞きします。

取材・文/山本二季
撮影/高嶋佳代

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Information

はりきゅうルーム岳 大塚院
住所:東京都豊島区北大塚1-17-3 第20 SYビル8F
TEL:03-5567-0688

はりきゅうルーム岳 代々木上原院
住所:東京都渋谷区西原3-24-10 PDビル2F
TEL:03-6804-7450

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