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特集・コラム 2019-11-16

私の手にしかできない仕事 Work.2 Harriet Ginza総院長・関口賢(後編)

「鍼灸治療は自分の天職」と語る、Harriet Ginza(ハリエット ギンザ)の関口賢先生。インタビューの後編では、大切な仲間集めで大事にしている採用方法、集客や広報、そして人生で大切にされていることを伺いました。

『アベンジャーズ』のような仲間たちと全ての患者さんが豊かになる「三方良し」の世界をつくる

——奥さまが仕事のサポートをされることはありますか?

直接的なサポートというよりか、「一つのファミリー」としてHarriet Ginzaを大切にしてくれています。それが僕もうれしくて。僕が大切にしているものを一緒に大事にしてくれるのはとてもありがたいですね。例えば、誕生日のスタッフがいるとこっそり誕生日プレゼントを用意してくれるんです。僕ができないことや気付かないことを手配してくれます。

妻とは、2年前に結婚しました。妻のお父さんは、都内に3店舗くらい展開していたパティシエなんです。自営業の家庭で育ったので、自営業への理解はすごくありますね。長女だったので、妹の世話もしていたようです。

——一日のタイムスケジュールを教えてください。

朝7~8時くらいに起き、そこから30分~1時間くらい、のんびり本を読んで過ごします。仕事に関することや経済、他業種のことなど、興味がある本を1カ月で10冊くらい読みますね。その後9時に家を出て、10時に出社ですが、(インタビュー当日の)今日は午前中、六本木の治療院にいました。朝10~13時まで出勤してそのまま六本木のスタッフとランチミーティングをしたら、最近本当に多くなった取材の対応を15時頃にし、その後は銀座に来てくれる患者さんの施術です。施術が全て終わった後は全店舗の院長と共有ミーティングをします。帰宅は22~23時ですね。

僕が施術するのは1日に4~5人です。一時期は10人以上やっていましたから、半減しました。働くスタッフが増えてくると、組織のマネジメントに関わる仕事が増えます。社員が良い環境で働けているかなど、そういった目に見えづらいところにエネルギーを使うようになってきたので、その量になってきたのかなとも思います。

あと、正直嫉妬しちゃうんですけど、自分よりも他の先生たちの人気があるんですよ(笑)。

——人気のある先生の採用は関口さんが行っているんですか?

採用は僕も関与していますが、うちの社員が一緒に働きたいと思うか、どれだけ理念に共感しているかを大事にしています。僕が一緒に働いているよりも、他のスタッフが一緒に働いている時間の方が長いですから。僕のところに来る前に採用が決まっているケースが多くて、後は「ハンコください」っていう(笑)。

自分のなかでは映画『アベンジャーズ』みたいな組織にしたいなと思っていて、アイアンマンみたいなカリスマな人もいるけど、強いハルクやナターシャのような女性も活躍する。それぞれ自分にはないアイデンティティを持っている組織にしたいなと思っていました。そうすると、自分よりも魅力的な先生、自分よりも人気がある先生が増えてエンパワーメントされてきました。

例えば、うちには元美容師の鍼灸師がいるんです。ずっと「美容院で美容針を受けられたらいいな」と思いながら美容師をしていたらしいんですよ。その子はまだ社会人1年目なんですが、その思いを形にしたくて、伝手(つて)を頼り、銀座1丁目にある美容室で美容針ができるように自分で約束を取りつけてきたんです。1年目ですよ? めちゃめちゃすごいですよね。自分で実現したいことがかなえられる。自分にない発想を持っている。そういう人たちが集まる組織にしたいなと思っています。

——患者さんに対して大切にしていることは何でしょうか?

一番は、やっぱりその患者さんが「何を求めて来たのか」をキャッチすることです。今つらい状態をどうにか治したい、つらい状態にならない体をつくりたいなど、目的はそれぞれ違いますし悩みも改善したい症状も異なります。

僕は「治療と予防と養生」とよく言っているんですが、現状をきちんとヒアリングして、患者さんが何を求めているか見極めることを大事にしています。それを踏まえて、その人の求めているものをキャッチし、それをどう改善していけるかをしっかりと提案していく。それに同意してくれたら「一緒に頑張りましょう」という診療を心がけています。

Harriet Ginzaにはいろんなクレドがあるんですが、基本方針は「二人三脚」です。ドクターマインドだと対面の立ち位置になってしまいがちなんですが、うちでは横並びでその人にコミットすることを大事にしています。

コミュニケーションは、実は「傾聴力」だと僕は思っているんです。だから僕のカウンセリングは患者さんの本質的なところを引き出す目的もあって、結構、沈黙が長いんですよね。患者さんにも当事者意識を持ってもらわないと、治療は成り立たないんです。うちはダイエット治療がメインですが、「こんな風に体を変えていきたい」という気持ちを患者さんが持たないと「やらされてる感」を抱くようになってしまって、結果的に全く治療が成り立ちません。僕も、子どもの頃に無理矢理やらされていた習い事はサボりましたから。当院はその考えが影響しているのか、予約のキャンセル率がすごく低いです。ほぼないといっても過言ではありません。

——施術をした患者さんで印象的なエピソードがあったら、教えてください。

この仕事が好きな理由に、人の変化が見られることが挙げられます。今いるスタッフも、1年前の写真と比べると顔つきが全然違う。人は経験と自信を積み重ねると、「顔立ち」は変わりませんが「顔つき」は変わりますよね。

「鍼灸」という武器を使ったら、うちの治療院が一番人の変化をつくる自信はあります。実際に患者さんから言われたケースとしては、「旦那が帰ってくるのが遅かったけど、自分がきれいになったら本当に早く帰って来るようになった」、「ずっと彼氏ができなかったけど、彼氏ができて結婚することになったんです」という声があります。治療を通して自分の体を変えていくと、人生が180度変わる。「治療を通して良くなった」、「楽になった」というレベルは当たり前で、いかにそれを通り越して「あなたのおかげで人生が変わりました」と言われるかというところに、付加価値を感じています。生きていて、なかなか言われることじゃないですからね。そこが一番うれしいです。

—— 先生は、集客の手法として、意図して広告を使っていないのでしょうか?

うちは半分くらいがダイエット治療です。そこから生まれたのが、僕の書籍『月曜断食 「究極の健康法」でみるみる痩せる!』なんですが、そもそも出版の経緯が、患者さんとして出版社の社員さんが来院されてすごくきれいにやせたことが社内で話題になったことなんですよ。それがきっかけで、本の企画を持ってきてくれました。でも、その方とのご縁がつながるまでに、クチコミでうちが紹介されていって、13人もの人を介してたどり着いているんです。13人の変化や結果を出して来なかったら絶対につながらなかったご縁だと感じています。

うちは6~7割がクチコミによる来院です。やはり体に針を刺すので、誰かがおすすめする所、誰かが通ってる所じゃないと、どれだけネットでいいことが書いてあっても怖いですよね。鍼灸で人生が変わる人を一人でも増やしていって、そうした人たちが「鍼灸って体にいいものだ」と発信し広めてもらえることが、自分が考える集客手法とマッチしているなと思います。

——最後になりますが、人生で大切にされていることを教えてください。

うちに来てくれる患者さん全員が豊かになること。それは絶対に大切なのですが、患者さんだけではなく、僕も含めた働くスタッフも豊かになることも、大切です。つまり、「三方良し」の関係ですね。

誰かが我慢する、誰かが犠牲になる。それはビジネス上、成り立たせたくありません。自分もやりがいをもっているし、大切な仲間もいる。社員にも来院される患者さんにも「Harriet Ginzaに来てよかった」、「Harriet Ginzaで体が変わった」、「Harriet Ginzaで人生が変わった」と言ってもらえたら、全てがいいことづくしです。「理想論だ」と言われますが、僕はこれからも常に三方良しを求め続けていきます。

「Life is Challenge」の精神で鍼灸の世界にダイエットという新たな道筋をつくり、女性を中心として多くの人の人生に影響を与えている、関口さん。そこには自分の幸せだけでなく、関わる人全てにとって優しい世界が広がっていました。これからも多くの人の人生を豊かにしていく関口さんの活躍に、目が離せません。

私の手にしかできない仕事 Work.2 Harriet Ginza総院長・関口賢(前編)>>

Harriet Ginza[ハリエット ギンザ](旧:関口鍼灸治療院)

2010年開業。「自己治癒力を高めて、元の姿に戻す鍼灸治療」を診療方針に掲げ、業界初となる鍼灸とファスティングを併せた治療を実現。2018年、文藝春秋から出版した関口院長の著書『月曜断食 「究極の健康法」でみるみる痩せる!』が話題に。
URL:https://harriet-ginza.com/

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