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ヘルスケア 2022-03-29

活法をベースとした技術の構築で耳鼻科症状にアプローチ【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.54 はりきゅうルーム岳 竹内岳登さん #3】

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。

前回に続き、日本で唯一の“耳鼻科専門”鍼灸院「はりきゅうルーム岳」の総院長・竹内岳登さんにインタビュー。前編では竹内さんが耳鼻科専門鍼灸院を開いた理由、中編ではお仕事の魅力やアドバイスをお聞きしました。

後編となる今回は、昨年から取り組んでいるYouTubeのこと、そして企業秘密という技術面のお話をチラリと教えていただきます。

お話を伺ったのは…
耳鼻科専門鍼灸院「はりきゅうルーム岳」総院長 竹内岳登さん

はり師・きゅう師、JSメソッド認定鍼灸師、Re Voiceメソッド認定鍼灸師。鍼灸専門学校卒業後、デイサービスでの機能訓練指導、鍼灸整体院や鍼灸院での施術などで経験を積み、2017年「はりきゅうルーム岳」をオープン。現在、大塚院と代々木上原院の2店舗を経営しながら、企業研修や経営コンサルタント業も行う。「耳鼻科専門鍼灸師GAKU先生」としてYouTubeチャンネルも運営中。

竹内さんのYouTubeチャンネル:耳鼻科専門鍼灸師GAKU先生

患者さんがすぐにリーチできる場所に正しい情報を届けたい

竹内さんは昨年2月から積極的にYouTubeでの動画配信をスタート

――竹内さんはYouTubeにも取り組まれています。始めたきっかけは?

僕が扱っている耳鼻科症状の要因として大きいのが、顔面神経麻痺と突発性難聴の2つです。この2つの病気による症状は、発症してから治療開始までのスピードで明暗がわかれます。うちに来る患者さんのなかでも、自分で情報収集を積極的にして積極的に取り組んできた人と、全然情報が見つけられず治療が遅れてしまった人で、結果がはっきりと分かれてしまうほどなんです。

だけど正しい情報って、ネットの中にはほとんどなかったりします。だから、なるべく早くちゃんと対処できるように、正しい情報、現場の生の情報を届けたいなと思ったのが、YouTubeを始めたきっかけでした。

――どのように取り組まれていますか?

2017年に登録はしっかり取り組み始めたのは、2021年2月ごろ。会社内にチームを入れて、週2回の投稿を目標にスタートしました。僕の稼働としては、月2回の収録だけ。1回の収録で4~5本まとめ撮りするので、他の仕事の負担になることもありません。

YouTubeのチャンネル登録者数は、2022年2月現在6万人以上

――動画投稿にあたって大切にしていることは何ですか?

一番大切にしているのは、見ている人に安心を提供することです。実際に苦しんでいる人をたくさん見てきたので、その人たちの気持ちを代弁するというか、悩んでいる人に寄り添って共感できる内容を意識して動画を作る。その動画を見ることで、症状に不安を抱えている人が、ちょっとでも「自分だけじゃないんだ」と安心できるものになったらいいなと思っています。

――反響はいかがですか?

YouTubeを見て来院される方は、かなり多いです。もともと集客面は困っていなかったので、集客ツールとしては考えていませんでした。でも今は悩んでいる症状をYouTubeで検索される方が多く、そこから辿り着いてくださる方がすごく多いんです。

YouTubeを見て来院された顔面神経麻痺の方のなかには、「岳先生の動画が一番、病気のことをわかってると思った」と言ってくださる方がたくさんいます。そこが伝わって来院いただけるのは、すごく嬉しいですよね。

――YouTubeを始めてよかったことは?

動画を見てから来院いただく方々は、初めて来院する前からある程度信用ができていて、不安が消えていることが多いんです。僕たちは仕事をするうえで、患者さんの不安を解消していくことを大切にしています。そこが来院前から和らいでいると、治療効果も良い方向に直結しやすいんですよね。その点では、とても役立っていると思います。

考えこまれた技術構築で魔法のような施術に

顔まわりの症状でも、鍼を打つのは手や足という不思議

――施術についてお伺いします。施術の特徴を教えてください。

「魔法使いになりたい」という気持ちからスタートしているので、施術の組み立ても魔法みたいな感じなんです。実際どんな考えで構築しているかは企業秘密なんですが…(笑)。簡単にお話しすると、例えば、声が思うように出ないといった悩みに対して、鍼を打つのは手や足。1回の施術で、3~7カ所しか鍼を打ちません。それだけで、すぐに声が出るようになる。魔法みたいですよね。

――鍼灸と言うと、もっとたくさん鍼を打つイメージでした。

僕の場合、鍼は脳や体へのメッセージと考えています。例えば何かアドバイスをもらうとき、一度にいろいろ言われると結局どうしたらいいかわからないけど、1個だけ言われると取り組みやすいし、その結果しっかり変われるじゃないですか。鍼も同じで、体へのメッセージが多すぎると、処理しきれなくなってしまうんです。

だから、あえて少ない鍼で、本当に必要なツボを厳選して打っていく。すると体も変化しやすいんですよ。

――#1で鍼灸と活法を取り入れて技術を構築されたと伺いました。活法は施術にどう活かされていますか?

「活法」というのは戦国時代から続く整体術で、戦で負傷した人たちをすぐに治して送り返すためのものでした。そんな活法は技術だけでなく、「考え方」をいう面もすごく大きいんです。活法という考えをベースにしたとき、鍼ではどうしていったらいいか…というかたちで技術面には応用しています。

また患者さんとのコミュニケーションにおいても、活法の考え方は役立っています。なかでも一番大切にしているのが「迷わせない」ということ。

僕は、患者さんが院に入ってきたときから治療は始まっていると考えています。初めて来院したとき、スリッパが見当たらないとか、受付がどこかわかりにくいと、一瞬迷いが生まれる。そこで迷いを作ってしまうと、どんどん不安になっていくんです。

患者さんは不安の解消をしに来ているのに、迷いによって不安が追加されてしまう。その不安は治療効果にも直結します。だから来院してからの不安の追加がないように、迷うことを一切なくす動線作りやコミュニケーションというのも施術のうち。そういった考えも活法を応用したものです。

「心の安心は、そのまま体の安定」という竹内さん。
問診でも患者さんの不安をなくすことを重視

――コミュニケーションも施術のうちなんですね。

施術効果全体で見たとき、治療技術が1割、残りの9割はコミュニケーションで決まります。これは心理学として、多くの業界で言われていること。そのコミュニケーションというのは、他者との関わりだけでなく、自分とのコミュニケーションも含みます。それはつまり「人間性」ですよね。

僕自身、鍼灸師として働き出す前は「腕1本で」みたいな意識がありました。技術力があれば患者さんもついてくるし経営もうまくいくと。だけど実際、いくら腕がよくても、全然コミュニケーションが取れない人のところになんて行きたくないじゃないですか。

技術だけじゃなく人間性も大切だし、言ってしまえば技術より人間性のほうが何倍も重要だと気づきました。人間性が高く患者さんとコミュニケーションが円滑にとれたら、治療効果もアップしますから。何をするかよりも、誰がするか。そこが一番大切だと思っています。
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施術の効果を最大限発揮するためには、患者さんの心の不安をなくすことが大切だと教えてくれた竹内さん。長年悩み続けることの多い症状を扱う耳鼻科専門だからこそ、患者さんに寄り添う姿勢や安心感を与える人間性が大切なのだろうと感じました。これは一般的な鍼灸院でも重要なこと。ぜひ参考にしてください。

取材・文/山本二季
撮影/高嶋佳代

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Information

はりきゅうルーム岳 大塚院
住所:東京都豊島区北大塚1-17-3 第20 SYビル8F
TEL:03-5567-0688

はりきゅうルーム岳 代々木上原院
住所:東京都渋谷区西原3-24-10 PDビル2F
TEL:03-6804-7450

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