上司や同僚も思わず納得する!?書類でも介護の質を上げるための文章作成術
介護士は、日々、介護記録などの報告書を作成します。介護士から見た利用者の様子を記録する報告書は、上司や同僚が見て内容をしっかりと共有できる書き方がベストです。
また、介護現場はチームワークが求められる職場ですから、いざ「良いケアのためのレクリエーション」を思いついたとしても、それを上司や同僚に趣旨を理解してもらわないと、実行に移すことが難しくなります。「良いケア」に向けた提案書を書いて、上司を説得したいと考える人もいることでしょう。
そこで今回は、自分の考えを明確に伝え、相手を説得・納得させるためにスムーズに内容を共有できるような、現場に役立つ文章作成術をご紹介します。
自分の意見を発表するときに使える「型」を覚えよう
介護現場で目にしたことや自分の意見を、わかりやすく伝えることは難しいものです。ましてや、それを相手に納得してもらうともなれば、書き方に工夫がいります。そこで、毎回の文章づくりに困らないために、考えが伝わりやすくなる「基本の型」を覚えてしまいましょう。
今回ご紹介するのは、「5パラグラフエッセイ(5段落エッセイ)」と呼ばれる文章の型です。日本ではあまり馴染みのない言葉ですが、アメリカの教育では、基本スキルとして教えられます。アメリカの子どもたちは、この文章の型に沿った書き方を、小学生の頃から訓練しているのです。
5パラグラフエッセイ(5段落エッセイ)
5パラグラフエッセイは、以下のとおり、5段階で構成されています。
【段落1】導入(イントロダクション・パラグラフ)
【段落2】メインA(ボディー・パラグラフ)
【段落3】メインB(ボディー・パラグラフ)
【段落4】メインC(ボディー・パラグラフ)
【段落5】結論(コンクルーディング・パラグラフ)
各段落には何を書くべき?
次に、それぞれの段落に書くべき内容を確認していきましょう。
【段落1】導入
この段落に書くべきは、「みんなが知っている話」や「本記事で伝えたい」ことです。みんなが知っている話とは、「読者(つまり同僚や上司、同業者)の興味を引きそうな文章」とも言い換えることができるでしょう。
例えば、特別養護老人ホームで、新しいレクリエーションを提案したいとします。利用者の認知症予防を目的とするのであれば、この導入部分に「認知症予防には、指回し運動よりも○○の方が効果を期待できます」とか、「認知症予防のために、○○のレクリエーションを取り入れたいと思います」と本記事のテーマを書きます。また、「◯◯のレクリエーションを取り入れた施設は、意外にも、実施前後で◯◯の発見がありました」などと、興味を引く文章で始めても良いでしょう。
【段落2】〜【段落4】メイン
この段落には、「この段落で述べたいことを補強する話」や「具体的な根拠」を書きます。5パラグラフエッセイでは、基本な形として、メインは3段落による構成となっていますが、メインで話をしたいものを2〜4段落として据えても構いません。
導入で述べたことの説得力を持たせるために、データやグラフなどを使いながら、なぜその主張をしたか、したいかの理由を述べます。例えば、「認知症予防のために○○のレクリエーションを考えたのは、△△大学が発表した●●というデータを見たからです」などと記載します。
【段落5】結論
そして最後に、結論を述べていきます。これまで述べてきたことの「まとめ」を行いましょう。導入〜メインで述べたことを織り交ぜながら、わかりやすくおさらいしていきます。
例えば、「●●というデータが示すとおり、認知症予防のためには○○のレクリエーションが必要です」などです。
このように、まずは各段落で何を述べるか決めてから、全体の流れを整え、中身の文章を書いていきます。そうすれば、論理的な説得力のある文章が生まれるのです。
書き方に困ったときは「基本」を思い出す
読む人によって「文章のわかりやすさ」は差がありますから、5パラグラフエッセイとともに、わかりやすく書くための基本を覚えておきましょう。
誰が読んでもわかりやすい文章では、「5W1H」がよく使われています。「5W1H」とは、文章中で「WHEN(いつ)、WHERE(どこで)、WHO(誰が)、WHAT(何を)、WHY(なぜ)、HOW(どうした)」を記載していく方法です。
また、「事実」と「自分の主張」は、分けて書く必要があります。例えば、「▲▲さんは具合が悪そうだ」ではなく、「▲▲さんは□□の行動をしていた。だから、具合が悪いかと思った」と客観的な事実に対して、自分の主張を述べていきます。
まとめ
たとえ同じ内容だとしても、書類の書き方によって、読む人に与える印象は変わります。「わかりづらい」と言われる文章は、書き直しのために自分の時間を使うだけではなく、読む人の時間をも奪います。
より多くの人に納得してもらえる文章を書いて、時間を節約するとともに、「良いケアをしたい」という自分の気持ちを伝えていきましょう。
ライター:流石香織