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介護外国人
特集・コラム 2019-07-26

介護職員として外国人を受け入れる4つの制度とは? 外国人介護職員はどれくらい働いているの?

テレビや雑誌などで、日本で活躍する外国人介護職員が取り上げられている特集を観たことがあるという人は多いでしょう。現在、日本では4つの制度で外国人介護職員の雇用を促進しており、職員不足で悩む介護業界を強力にサポートしています。

雇用者側からすると外国人の職員を雇用することで、今までのシステムの見直しはもちろん、職員が一体になれるなどといったメリットがあるのが特徴です。今回は、この外国人介護職員の雇用システムや、どれくらいの外国人が介護職員として働いているかなどについて詳しくお話します。

外国人介護職員を雇用できる4つの制度とは?

外国人の介護職員を雇用するためには、これから説明する4つのシステムのうちどれかひとつに則っています。それぞれのシステムには異なる特徴があり、雇用者側はきちんとその特徴を踏まえて雇わなければならない決まりとなっています。そんな4つの制度について、見ていきましょう。

①EPAにもとづく外国人介護福祉士候補者の雇用

EPA(経済連携協定)とは、シンガポールやマレーシア・フィリピンなど諸外国と日本の間で、貿易の自由化だけでなく投資や人材の移動など、さまざまな分野で互いに協力し合うことで経済関係の強化を目的としている協定です。

介護業界ではインドネシア・ベトナム・フィリピンの3ヵ国から人材を受け入れて雇用しています。EPAにもとづく外国人介護福祉士について、解説しましょう。

介護福祉士の資格は?

EPAで受け入れた外国人は介護福祉士の資格を持っておらず、資格を取得することを目的にしています。

永続的な就労は?

EPAで来日した介護福祉士候補生は、4年以内に介護福祉士資格を取得することができなかった場合、帰国しなければなりません。ただし、試験に不合格だった場合は1年間の延長滞在が認められ、引き続き就労が可能になります。

また、試験の合格・不合格を問わず在留期限の更新は必要になりますので、手続きをし忘れないように気を付けましょう。

介護福祉士資格を取得後は、在留期間の制限なく永続的に介護福祉士として就労することができます。

母国での資格や学習経験は?

EPAで受け入れ可能な人材は、国により異なりますが以下の2つの条件のうち、どちらかひとつをクリアしていなければなりません。

・母国で看護学校や看護過程の卒業または修了
・大学や高等教育を卒業し、母国政府に介護士認定を受ける

日本語能力はどれくらい必要?

日本語能力に関しては日本語能力試験JLPTが基準となりますが、国によってレベルが異なります。

・ベトナム:N3程度(日常的な場面で使用する日本語を、ある程度理解できる)
・フィリピン、インドネシア:N5程度(基本的な日本語が理解できる)

2018年度の段階ではフィリピン・インドネシアの方の約9割近くが、就労を開始する時点でN3レベルになっています。

採用・雇用時に受入調整の支援はある?

EPAでは JICWELSという専門機関だけが採用・雇用受け入れ調整を行なっていますが、受け入れには人数制限があるため、希望するすべての事業所に対しマッチングが行なわれるわけではありません。

就労可能なサービス種別の制限はある?

EPAで就労可能となっているサービス種別には、制限がかけられています。

・資格取得前:認知症グループホーム・通所介護・介護保険3施設・特定施設・通所リハ・認知症ディ・ショートステイ
・資格取得後:資格取得後は上記施設プラス一定条件を満たしている事業所の訪問系サービスでの勤務も可能

②在留資格「介護」をもつ外国人の雇用

在留資格「介護」を持つ外国人とは、日本国内にある介護福祉士の資格養成校を卒業し、介護福祉士の資格を取得した方を指します。

介護職員として取り掛かれる業務や、送り出す国に制限がないのが特徴であり、介護業界の幅広い分野で働くことが可能です。この場合、資格取得前で学校に在籍中は「留学生」という扱いになります。

「留学生」在留カードの例
※入国管理局ホームページより引用
介護在留カード

介護在留カード

在留資格「介護」を持つ外国人は、新たな介護職の人材として大きな期待を寄せられています。
ここでは在留資格「介護」について解説していきましょう。

介護福祉士の資格は?

在留資格「介護」は介護福祉士養成校に通うことが必須ですが、入学要件が定められています。入学後、介護の専門知識と技術を学び、卒業したあとに介護福祉士の資格を取得するというシステムです。この資格を取得することで、「介護」という在留資格を与えられ、日本での就労が可能となります。

永続的な就労は?

在留資格「介護」を所持している外国人は永続的な就労が可能で、通っている介護福祉士養成学校の規則によっては、通学中からアルバイトとして勤務することが可能です。

母国での資格や学習経験は?

在留資格「介護」の場合は通学して専門知識や技能を習得するので、介護福祉士学校入学時に専門知識や経験の有無はとくに設定されていません。そのため、入学する生徒の能力には個人差があります。

日本語能力はどれくらい必要?

在留資格「介護」の場合、日本語能力に関してはガイドラインで以下のような条件が設定されていますが、入学者を受け入れる養成学校によって基準は異なっています。

・日本語能力試験のN2(日常会話可能レベル)以上に合格
・日本語留学試験科目の日本語で、200点以上取得
・日本語教育機関で6ヵ月以上学び、N2以上と日本語試験で認められる
・BJTビジネス日本語能力テストで400点以上取得

採用・雇用時に受入調整の支援はある?

在留資格「介護」は雇用・受け入れ調整のための専門機関がないため、事業者側が自ら介護福祉士養成学校と連携したり、養成学校側や資格所有者が自主的に雇用先を探したりする努力が必要になります。

就労可能なサービス種別の制限はある?

在留資格「介護」は、勤務できるサービスの種類に関しては制限が設けられていません。

③技能実習生の雇用

技能実習生は日本が一定期間外国人を現場に受け入れ、OJTを通じ必要な知識や技能などを習得、母国の発展に役立ててもらうというシステムになっています。ここからは技能実習生について解説していきましょう。

介護福祉士の資格は?

技能実習生は知識や技能を身に着けるという目的で来日しているため、介護福祉士の資格は所有していませんが、実務要件など一定基準を満たすことで、介護福祉士試験を受験することができます。

永続的な就労は?

技能実習生は帰国することが条件となっているため、ずっと雇用し続けることはできません。基本は最長で5年ですが、在留中に介護福祉士の資格を取り、在留資格を「介護」に変更することで、長く就労してもらうことができます。

実習を3年目まで終了すると「特定技能1号」に必要とされる試験が免除されて、在留資格を「特定技能1号」に変更することも可能です。技能実習と特定技能1号の在日期間を合わせて、最長10年まで在留期間の延長ができます。

母国での資格や学習経験は?

外国人技能実習生の場合、母国での資格などの条件に関しては、事業協同組合・商工会などの管理団体ごとに選考基準が異なります。

日本語能力はどれくらい必要?

選考時の日本語能力に関しては、日本語能力試験JLPTのレベルでN4(基本的な日本語が理解できる)レベルは必須で、1年後にN3(日常的な日本語をある程度理解できる)を習得することが条件です。1年後に基準に満たない場合、雇用している事業所で技能習得に必要となる日本語を学ぶなどといったことを条件にして、続けて3年目まで在留可能にすることができます。

採用・雇用時に受入調整の支援はある?

外国人技能実習生の受け入れについては、管理団体が講習を行なってから実習先となる事業所とのマッチングや調整を行なっていきます。

就労可能なサービス種別の制限はある?

外国人技能実習生には制限があり、訪問系の介護サービスは不可となっています。

④在留資格「特定技能1号」をもつ外国人の雇用

「特定技能1号」という在留資格は、2019年4月から始まった新しい在留資格です。ここからは「特定技能1号」という在留資格について、解説していきます。

介護福祉士の資格は?

特定技能1号は介護福祉士の資格を持っているわけではありませんが、実務要件など受験資格をクリアしていれば受験できます。

永続的な就労は?

特定技能1号の在留期間は最長で5年となっており、ずっと日本で働き続けることはできません。しかし、介護福祉士の資格を取得することで、所持資格を在留資格「介護」に変更することができ、5年以上の就労が可能になります。

技能実習生の場合、研修を3年目まで終了、もしくは介護福祉士養成施設を終了し日本語能力があれば、特定技能1号取得に必要な試験などが免除されます。そして特定技能1号の在留可能年数をプラスすることで、最長10年まで期間延長が可能です。

母国での資格や学習経験は?

特定技能1号は母国での資格や学習経験は決められていないため知識や技術には個人差がありますが、選考時に技能水準などを確認されます。

日本語能力はどれくらい必要?

日本語能力に関しては、入国前にある程度日常会話ができるか、介護の現場でスムーズに意思疎通ができる程度の語学力があるかを確認されるのです。

採用・雇用時に受入調整の支援はある?

特定技能1号の場合は、登録支援機関が就労に関するサポートを行なっています。

就労可能なサービス種別の制限はある?

特定技能1号は就労できるサービス種類に制限があり、訪問系サービスでは就業できません。

外国人介護職員はどれくらい働いているの?

介護福祉士候補者受け入れ人数推移
外国人の受け入れ制度について見てきましたが、今現在の外国人介護職員の雇用状況はどのようになっているのか、また今後の雇用について、これから解説していきましょう。

2018年度の実績と累計は?

厚生労働省が行なったアンケートなどの統計資料から、2018年度の外国人介護職員の採用実績と累計について見ていきます。

EPAによる受け入れは?

2008年度から介護福祉士候補者の受け入れが始まり、2018年度は受け入れ者数が過去最高の773人、累計で4,302人を受け入れられています。EPA介護職員は、これまでに808カ所におよぶ事業所などで雇用されているというデータが出ているほどです。

介護福祉士養成校への留学生は?

外国人が日本の介護事業所で働くために介護福祉士養成校に留学するケースも増えており、2016年度は257人、2017年度は591人だったのに対し、2018年度では1,142人と倍近く増加し、過去最高となっています。

介護職種の技能実習計画の申請件数は?

技能実習生に関しては申請だけで2018年12月末に1516人、そのうち946人が認定され、入国しています。日本の在留期限があるとはいえ、これだけの人数が応募するということは、海外から日本の介護業界が注目されているという証でしょう。

外国人介護職員をこれからも受け入れる?

厚生労働省が2018年度に行なった外国人介護人材受け入れのアンケート結果によると、すでに外国人を受け入れている施設が全体の78.9%、受け入れていない施設の中でも20.2%が今後受け入れ予定と答えています。この結果から、業界全体で外国人介護職員に対し前向きな考え方を行なっているといえるでしょう。

外国人介護職員は介護業界の貴重な労働力!

介護職員
外国人介護職員を雇用する場合、宗教や文化の違いを理解し、生活面など幅広い支援を行なうといったポイントもしっかりとおさえておかないと、トラブルが発生することもあります。そのためにはデメリットもしっかりと把握しておくことが必要です。

介護業界では年々外国人介護職員が増加しており、今後も増え続けることが予想できます。これまで深刻な人手不足に悩んでいた介護業界で、外国人介護職員はとても貴重な戦力になってくれることでしょう。

出典元
・外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf
・インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/
・外国人技能実習制度への介護職種の追加について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147660.html
・EPAの基づく介護福祉士候補者受入れの手引き(公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS))
https://jicwels.or.jp/files/EPA_2020_C.pdf
・経済連携協定に基づく外国人看護師候補者・介護福祉士候補者の受入れ
https://www.mhlw.go.jp/content/000450797.pdf
・出入国在留管理庁
http://www.immi-moj.go.jp/

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